選挙事務従事者が有効と判断した投票および白票の大部分について、選挙立会人(開票立会人)に点検せしめることなく、また意見を聴くこともなく選挙長(開票管理者)がその効力を決定した場合、その選挙は無効とすべきである。
選挙立会人(開票立会人)に投票を点検せしめることなくまた意見を聴くこともなく投票の効力を決定した違法と選挙の効力。
公職選挙法66条,公職選挙法67条,公職選挙法205条1項
判旨
選挙立会人が自席から投票内容を点検できない状態で、選挙長が立会人への回示や意見聴取を行わず得票を算入した手続は公職選挙法に違反し、選挙の結果に異動を及ぼす虞があるため選挙全体が無効となる。
問題の所在(論点)
開票手続において、選挙立会人が投票内容を点検できず、かつ選挙長が立会人の意見を聴取しなかったことが、公職選挙法66条・67条違反として選挙無効事由(205条1項)に該当するか。
規範
公職選挙法66条及び67条の規定は、選挙事務執行の公正を確保するための重要な手続である。開票手続においてこれらの規定に違反し、不公正な事実の介入を否定できないような重大な瑕疵がある場合には、特段の事情がない限り「選挙の結果に異動を及ぼす虞がある」(同法205条1項)と認められ、当該選挙は無効となる。
重要事実
本件選挙の開票手続において、選挙長は選挙立会人を所定の席に戻らせたが、その位置からは投票の記載内容を知ることが不可能であった。その後、選挙事務従事者が有効票と判断し各候補者ごとに分類した投票の大部分について、選挙長は立会人に回示せず、意見も聴かないまま得票に算入した。また、白票についても同様の手続を経て無効票に加えた。上告人は、単なる手続違背であり当選無効事由にとどまると主張して争った。
事件番号: 昭和33(オ)1052 / 裁判年月日: 昭和34年4月28日 / 結論: 破棄自判
選挙人名簿対照係席が投票立会人席から見透すことができない投票所の施設は、公職選挙法施行令第三五第一項の趣旨に反するけれども、右対照係が行つた選挙人確認手続に違法の点がないときは、右投票所で行われた選挙を無効とすべきではない。
あてはめ
まず、立会人が記載内容を把握できない位置に置かれ、有効・無効の判断過程から実質的に排除されている事実は、公選法66条・67条の明文に違反する。白票であっても、事務従事者の判断のみで直ちに無効票とすることは許されず、立会人の意見聴取は必須である。このような状況下では、客観的に厳重な監視が行われていたとはいえず、不公正な事実の介入を疑う余地がないと断ずることはできない。したがって、本件の規定違反は選挙事務の公正を著しく害するものであり、選挙の結果に異動を及ぼす虞があるものと評価される。
結論
本件の開票手続には重大な違法があり、選挙の結果に異動を及ぼす虞が認められるため、本件選挙は無効である。
実務上の射程
選挙無効(205条)の判断において、開票手続の形式的違反が「結果に異動を及ぼす虞」という実質的要件をいかに充足するかを示す。立会人の参画というチェック機能が形骸化した場合、具体的な不正の立証がなくとも、公正性が担保されないことを理由に選挙無効が導かれうる点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和35(オ)464 / 裁判年月日: 昭和35年9月1日 / 結論: 棄却
投票管理者が投票立会人の意見を聞かないで代理投票補助者を選任した違法があるというだけでは、右補助者による代理投票は無効とはならない。