いわゆる請求の予備的併合の場合、第一審裁判所が主たる請求を認容したため予備的請求につき判断をしなかつたときといえども、第二審裁判所は主たる請求を排斥した上予備的請求につき判断をなし得るものと解すべきである。
第一審の判断を経ない予備的請求と第二審の判断。
民訴法360条,民訴法227条
判旨
詐害行為取消請求において、転得者が受益者からの譲渡経緯を認めつつ他の事実を「知らない」と答弁した場合は、転得者の善意主張が含まれると解するのが相当である。また、請求の予備的併合において第一審が予備的請求を判断しなかった場合でも、控訴審は主位的請求を排斥した上で予備的請求を判断できる。
問題の所在(論点)
1.転得者が債権者の主張する詐害の事実を「知らない」と答弁した場合に、転得者の善意(詐害行為取消権の抗弁等)の主張があったと認められるか。2.請求の予備的併合において、第一審が予備的請求を判断しなかった場合に、控訴審が主位的請求を排斥した上で予備的請求を判断することは許されるか。
規範
1.詐害行為取消権における転得者の善意について、相手方が「不知」と答弁した場合には、特段の事情がない限り、転得者が取消原因(債務者の詐害の意思等)を知らなかった旨の主張をしたものと解する。2.請求の予備的併合において、第一審が主位的請求を認容し予備的請求を判断しなかった場合、控訴審が主位的請求を排斥するときは、予備的請求について自ら判断を下すことができる(移審の効力)。
重要事実
債権者である上告人が、債務者Dが唯一の財産である建物をEに贈与し、さらにF、被上告銀行へと順次譲渡された行為について、詐害行為取消権を行使した。第一審において、被上告銀行(転得者)は「建物の所有権移転および登記の事実は認めるが、その他の事実は知らない」と答弁した。また、第一審は主位的請求を認容したが、第二審(原審)は主位的請求を排斥した上で、第一審で判断されなかった予備的請求について判断を示したため、上告人が手続的違法を主張した。
事件番号: 昭和31(オ)1072 / 裁判年月日: 昭和33年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者が債権者の貸金債権の存在を知りながら、これを害する目的で不動産を贈与した場合には、詐害行為取消権の行使が認められる。 第1 事案の概要:債権者(被上告人)は、債務者である上告人A1に対して貸金債権を有していた。債務者A1は、この貸金債権の存在を知りながら、債権者を害する目的で、自己の所有する…
あてはめ
1.事実認定について、被上告銀行が権利移転の事実は認めつつ「その他の事実は知らない」と答弁したことは、転得者として亡DとEとの間の贈与が債権者を害することを知らなかった旨を主張したものと解される。したがって、原審が証言に基づき善意を認定したことは弁論主義に反しない。2.手続面について、予備的併合における第一審の未判断部分は、控訴による移審の効力により控訴審の審判対象となる。主位的請求が否定される以上、控訴審は予備的請求について判断をなし得る。
結論
1.転得者の「不知」との答弁により善意の主張があったと認められる。2.控訴審が第一審で判断されなかった予備的請求について判断することは、適法である。
実務上の射程
1.民訴上の「不知」の答弁が実質的にどの範囲の主張を含むかの解釈指針となる。2.予備的併合における控訴審の審理範囲に関する重要判例であり、第一審で審理が尽くされている限り、差戻しを要さず控訴審で判断可能であることを示したものとして答案で利用できる。
事件番号: 昭和31(オ)891 / 裁判年月日: 昭和32年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金員の現実の支払という主要事実が認められない場合には、受領者に代理権があるか否かといった法的論点を判断することなく、弁済の抗弁を排斥することができる。 第1 事案の概要:上告人は、債権者を代理する権限があると主張するDに対し、特定の日に金員を現実に支払ったとして弁済の抗弁を主張した。しかし、原審は…