前賃借人が建物の種類構造および期間を特に定めることなく土地を賃借して、その地上に建坪延一〇〇余坪の木造建物を所有し、その後他から買い受けた堅固な構造の建坪延一七坪余の土蔵を右地上に移築して前記木造建物に従たる建物として所有しているうち、木造建物のみ焼失し、その後間もなく右賃借権と土蔵とを譲り受けた者が、地主との間に従前と同額の賃料の支払を約したとの事実のほか、特段の合意のあつた事実の認められない場合、右譲受にかかる賃借権は、普通建物の所有を目的としたものと認めるのが相当である
借地法にいわゆる普通建物の所有を目的とする借地権と判定された事例
借地法2条,借地法17条1項
判旨
借地法(旧法)の適用において、賃貸借の目的が堅固な建物か普通建物かの別は、契約締結当時の合意内容によって決定される。借地法施行前に開始された賃貸借については、同法施行により第17条が適用され、特段の事情がない限り契約成立時から20年をもって存続期間とする。
問題の所在(論点)
借地法上の建物区分の判定基準、および借地法施行前に成立した期間の定めのない借地権の存続期間の起算点と計算方法が、借地法17条との関係で問題となる。
規範
借地法上の建物の種類の区分(堅固・普通)は、契約締結当時の当事者の合意(賃貸借の目的)により決せられる。また、同法施行前に期間の定めなく成立した借地権については、同法17条1項に基づき、普通建物所有目的であれば契約成立時から20年、堅固建物所有目的であれば30年(同法施行時にこれより短い期間が経過している場合)と解される。
重要事実
大正年間から継続していた土地賃借権について、昭和5年8月7日に訴外Dが訴外Eから賃借し、上告人がこれを承継した。上告人は、昭和10年に堅固建物所有目的で新たに設定を受けたと主張したが、原審はこれを否定し、一貫して普通建物所有を目的とする賃借権であると認定した。昭和16年の借地法施行時において、本件借地権の存続期間が問題となった。
事件番号: 昭和32(オ)569 / 裁判年月日: 昭和34年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法(現行の借地借家法25条相当)にいう「建物所有を目的とする賃貸借」に該当しないか、あるいは「一時使用のための借地権」と認められる場合には、存続期間に関する法定の制限を受けず、約定期間の満了により賃貸借が終了する。 第1 事案の概要:本件賃貸借契約において、当事者は約定の期間満了による契約終了…
あてはめ
本件賃借権は、昭和5年8月7日の契約締結時において普通建物所有を目的として成立しており、その後の変遷や目的変更の合意も認められない。したがって、借地法17条1項本文を適用するにあたっては、施行時における建物の現況にかかわらず、契約成立時である昭和5年8月7日を起算点とすべきである。同日から20年を経過していない以上、同条2項(施行時に法定期間経過済の場合の特則)の適用余地はなく、存続期間は契約時から20年と解するのが相当である。
結論
本件借地権は普通建物所有を目的とするものであり、その存続期間は昭和5年8月7日から20年である。
実務上の射程
旧借地法下の事案であるが、借地の目的(建物の種類)が「契約当時の合意」に依拠するという枠組みは、借地借家法下の「合意による目的設定」の解釈にも通じる。存続期間の算定において、合意の沿革を重視する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和30(オ)750 / 裁判年月日: 昭和33年10月17日 / 結論: 棄却
木造建物が、その柱、桁、屋根の小屋組などの要部に多少の腐蝕個所がみられても、こちらの部分の構造にもとずく自らの力で屋根を支えて独立に地上に存立し、内部への出入に危険を感じさせることもないなど原審認定の状況(原判決理由参照)にあるときは、右建物は未だ借地法第一七条第一項但書にいう朽廃の程度に達しないものと解すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)58 / 裁判年月日: 昭和39年7月3日 / 結論: 棄却
土地の賃貸借契約が当初甲市内に散在していた露天商を一時整理収容するために市役所等のあっせんにより期間を一年と限って成立し、その後借地人らの申出によって期間を限って契約が再三更新され、かつ、最終の契約においては、期間を一年三箇月とし賃貸人の許可なく組立式以外の建物の築造を禁止し、夜警以外の居住を禁止するなど原判決の認定の…
事件番号: 昭和25(オ)293 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
借地法にいわゆる建物とは、一般通念に従つてその意義を定むべきで、家屋台帳等公の帳簿に記載され課税の対象となつているものだけに限るものと解すべきではない。
事件番号: 昭和29(オ)346 / 裁判年月日: 昭和30年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法9条(現・借地借家法25条)の「一時使用」にあたるかは、賃貸借の目的、期間、地上建物の種類・構造、賃料の多寡等から客観的に判断される。本判決は、原審の認定した事実関係に基づき、本件土地の賃貸借が一時使用のためのものであると認めることが可能であると判示し、上告を棄却した。 第1 事案の概要:本…