期間を遵守することができなかつたことについて、当事者本人にその責に帰することができない事由があつても、同人に代つて当該手続をする権限のある代理人に右の事由がない場合には、特許法第二五条によつて懈怠した手続の追完をすることはできない。
期間を遵守できなかつたことについて当事者本人にその責に帰することのできない事由があり同人に代つて手続をする権限のある代理人に右の事由がない場合における特許法第二五条による追完の許否。
特許法25条,民訴法159条
判旨
特許法25条(現行121条2項等参照)の追完が認められるには、本人だけでなく、代理権を有する代理人についても「責めに帰すべからざる事由」が認められる必要がある。
問題の所在(論点)
特許法25条(旧法)の「其ノ責ニ帰スヘカラサル事由」の有無を判断するにあたり、本人に事由がある場合であっても、代理人に事由がないときに追完が認められるか。また、印刷済みで作成から時間が経過した委任状による代理権の有効性が問題となった。
規範
特許法25条(旧法)に規定される手続の追完が認められるための要件である「其ノ責ニ帰スヘカラサル事由(不変期間の徒過について当事者の責めに帰することができない事由)」の存否は、当事者本人のみならず、その代理人についても判断される。本人に当該事由があったとしても、行為権限を有する代理人が存在し、その代理人に懈怠の事由がない場合には、代理人がその権限に基づき手続を行うことを妨げないため、同条による追完は認められない。
重要事実
上告人は特許出願の拒絶査定を受け、抗告審判(現行の拒絶査定不服審判に相当)を請求しようとしたが、法定期間を徒過した。上告人は、期間内に請求できなかったことについて本人に「責めに帰すべからざる事由」があると主張し、追完を求めた。しかし、上告人には1年前に作成された印刷済みの委任状に基づき、当該審判を請求する権限を与えられた弁理士(代理人)が存在していた。この代理人側には、期間内に手続を行えなかったことについて格別の支障や「責めに帰すべからざる事由」は認められなかった。
事件番号: 昭和30(オ)608 / 裁判年月日: 昭和31年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原判決の違法に直接関係のない事柄の主張や、原判決の認定に副わない事実を前提とする主張にすぎない場合、原判決に影響を及ぼす明らかな法令の違背があるとは認められない。 第1 事案の概要:上告人は原判決の違法を主張して上告したが、その主張内容は多岐にわたるものの、大部分は原判決の違法とは直接関…
あてはめ
まず、委任状が印刷されたものであり作成から1年が経過していたとしても、それにより代理権授与の意思を否定することはできないから、弁理士らは依然として有効な代理権を有していたといえる。次に、本人にやむを得ない事情があったとしても、有効な権限を持つ代理人が存在する以上、その代理人が手続を履践することは客観的に可能である。本件では代理人に「責めに帰すべからざる事由」がないため、代理人が権限を行使して期間内に手続を完了すべきであったといえる。したがって、全体として「其ノ責ニ帰スヘカラサル事由」による懈怠とは評価できない。
結論
本人に「責めに帰すべからざる事由」があっても、代理人に当該事由がない限り、特許法上の手続の追完は認められない。
実務上の射程
手続上の不変期間の徒過と追完(帰責事由)に関する一般原則を示す。民事訴訟法上の訴訟行為の追完(民訴法97条)においても、代理人が選任されている場合には代理人を基準に帰責性を判断するのが実務の通説的見解であり、本判決はその考え方を特許手続において明確にしたものとして、実務上重要な射程を有する。
事件番号: 昭和36(オ)894 / 裁判年月日: 昭和37年8月14日 / 結論: 棄却
一 特許の無効審判事件において、当事者が弁理士に対して交付した委任状に当該審判手続のほか抗告審判に関する特別委任をなす旨の文言が印刷記入されている場合に、かかる文言を全然意味のない例文であるとみるべき経験則はなく、またかような慣習の存在が裁判上顕著な事実であるともいえない。 二 期間を遵守することができなかつたことにつ…
事件番号: 昭和28(オ)1311 / 裁判年月日: 昭和30年5月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特許法上の発明(旧特許法1条の工業的発明)とは、自然法則の利用によって一定の文化目的を達成する技術的考案をいう。 第1 事案の概要:上告人らは、自らが行った考案について、特許能力が認められるべきであると主張して上告した。原審は、当該考案が当時の特許法1条にいう「工業的発明」に該当しないとして特許能…
事件番号: 昭和32(オ)988 / 裁判年月日: 昭和36年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】分割出願は元の出願(原願)とは別個の事件であり、原願の拒絶査定に違法があるとしても分割願の拒絶査定を直ちに違法とするものではなく、また、同一の審判官が双方に関与しても法に抵触しない。 第1 事案の概要:上告人は原願の発明を6個に分割して出願したが、そのうちの一つの発明について拒絶査定を受け、審判で…
事件番号: 昭和35(オ)684 / 裁判年月日: 昭和36年8月31日 / 結論: 棄却
実用新案登録の共同出願人の一人が登録出願拒絶査定に対する抗告審決の取消請求訴訟を提起した後において、他の者の登録を受ける権利の持分全部を譲り受けて単独の権利人となつた場合においても、出訴期間内にその旨の名義変更の届出をしなければ、右訴は、不適法であつて却下を免かれない。