実用新案登録の共同出願人の一人が登録出願拒絶査定に対する抗告審決の取消請求訴訟を提起した後において、他の者の登録を受ける権利の持分全部を譲り受けて単独の権利人となつた場合においても、出訴期間内にその旨の名義変更の届出をしなければ、右訴は、不適法であつて却下を免かれない。
実用新案登録出願人の名義変更届出と出訴期間の遵守。
行政事件訴訟特例法5条,旧実用新案法(大正10年法律97号)26条,旧特許法(大正10年法律96号)12条3項
判旨
共同出願人による拒絶査定不服審判の棄却審決に対する取消訴訟は、登録を受ける権利を共同して有する者全員が共同して提起すべき固有必要的共同訴訟である。共同出願人の一部が単独で提起した訴えは、当事者適格を欠き、出訴期間経過後にその欠缺を補正することもできないため、不適法として却下される。
問題の所在(論点)
共同出願人に対する拒絶審決の取消訴訟は、共同出願人の一部のみによって提起できるか。また、出訴期間経過後の当事者適格の欠缺の補正は可能か(実用新案法、特許法132条3項類推等)。
規範
特許法等における拒絶審決の取消訴訟について、登録を受ける権利を共同して有する者全員に対し合一にのみ確定すべき場合には、当該権利者全員が共同して訴えを提起することを要する。これは実体法上の権利が共同帰属することに由来する固有必要的共同訴訟であり、一部の者による出訴は当事者適格を欠くものと解すべきである。
重要事実
上告人は単独で実用新案登録出願をしたが、その後権利の一部をDに譲渡し、共同出願人として名義変更を届け出た。特許庁は上告人およびDに対し拒絶審決を行った。上告人は、Dが審決謄本の送達を受け出訴期間が経過するまでの間に単独で本件審決取消訴訟を提起した。上告人は、出訴期間の最終日にDから持分譲渡を受け名義変更届を提出したと主張したが、特許庁への到達は期間経過後であった。
あてはめ
本件審決は上告人とDの両名に対してなされたものである。登録を受ける権利が共同帰属する場合、審決を取り消すか否かは全員に対し合一に確定すべきである。上告人が主張するDからの持分譲渡は、出訴期間内に特許庁へ届け出が到達しておらず、対外的に主張できない。したがって、出訴期間内においてDは依然として共同出願人の一人であった。Dが期間内に共同出訴しなかった以上、上告人単独の訴えは当事者適格を欠く。さらに、出訴期間が徒過した後は、もはやこの当事者適格の欠缺を補正する途はないといえる。
結論
共同出願人の一部のみによる訴えは不適法であり、出訴期間経過後は補正も不可能であるため、却下を免れない。
実務上の射程
本判決は共同出願による拒絶査定不服審判の取消訴訟を固有必要的共同訴訟とした。現在の特許法132条3項は「共同して審判を請求した者がその審判の審決に対し訴えを提起するときは、共有者の全員が共同して提起しなければならない」と規定しており、本判例の法理が明文化されている。答案上は、この条文の根拠として「権利の帰属が不可分であり合一確定の要請が強いこと」を説明する際に本判例の趣旨を引用する。
事件番号: 昭和52(行ツ)28 / 裁判年月日: 昭和55年1月18日 / 結論: 棄却
実用新案登録を受ける権利の共有者の、一員が訴を提起してその共有にかかる権利に関する審決の取消を求めることは、右共有にかかる権利についての民法二五二条但書にいう保存行為に該当しない。
事件番号: 昭和32(オ)984 / 裁判年月日: 昭和36年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】分割出願の拒絶査定の適法性は、原出願の拒絶査定の適否とは別個に判断される。引用発明と根本的な技術思想が同一であれば、単なる材質の変更による耐久性の向上などは新規性を基礎付けず、引用例の一部が実施可能であれば、装置全体としての実施可能性を審理せずとも新規性を否定できる。 第1 事案の概要:上告人は原…
事件番号: 昭和34(オ)450 / 裁判年月日: 昭和34年10月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実用新案登録の要件として、考案が新規のものであることが必要であり、法定実施権の存在や製品の市場価値の高さは登録の可否に直接影響しない。 第1 事案の概要:上告人は、自らの出願した考案について実用新案登録を求めたが、原審において当該考案の新規性が否定された。これに対し上告人は、当該考案について法定実…
事件番号: 昭和32(オ)988 / 裁判年月日: 昭和36年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】分割出願は元の出願(原願)とは別個の事件であり、原願の拒絶査定に違法があるとしても分割願の拒絶査定を直ちに違法とするものではなく、また、同一の審判官が双方に関与しても法に抵触しない。 第1 事案の概要:上告人は原願の発明を6個に分割して出願したが、そのうちの一つの発明について拒絶査定を受け、審判で…