一 昭和二一年勅令第二九四号「連合国財産の返還等に関する件」第二条に基く大蔵大臣の命令によつて生じた財産権の喪失につき、直接憲法第二九条第三項の規定を根拠として国に対し補償を求めることはできない。 二 昭和二一年勅令第二九四号「連合国財産の返還等の件」第二条に基づく大蔵大臣の命令によつて生じた財産権の喪失に付き、国に対し補償を求めうるという条理はない。
一 いわゆる連合国財産返還命令による財産権の喪失につき直接憲法第二九条第三項の規定を根拠として国に対し補償を求めることの当否 二 いわゆる連合国財産返還命令による財産権の喪失につき条理による請求が認められなかつた事例。
連合国財産の返還等に関するの件(昭和二一年勅令第二九四号)2條,憲法29條3項
判旨
連合国最高司令官の覚書に基づき行われた日本政府の措置は憲法の適用外であり、これに伴う損害についても憲法29条3項に基づく補償請求は認められない。
問題の所在(論点)
連合国最高司令官の覚書(指令)に基づきなされた日本政府の財産剥奪措置について、日本国憲法の適用があるか。また、当該措置によって生じた損害に対し、憲法29条3項に基づき直接補償を請求できるか。
規範
連合国最高司令官の覚書に基づき、その趣旨を実施するために日本政府が講じた措置は、日本国憲法の枠外にある。したがって、かかる措置に対しては日本国憲法の適用が排除される。また、当該措置に起因して生じた損害の填補についても、憲法29条3項の規定はそのまま適用されない。
重要事実
上告人は、敵産管理法に基づき敵産とされた不動産を戦時中に所有していた。終戦後、連合国最高司令官の覚書(ポツダム指令)に基づき、大蔵大臣は「連合国財産の返還等の件(昭和21年勅令294号)」に従って、上告人に対し当該不動産をD石油株式会社へ譲渡するよう命じた。上告人はこれにより不動産の所有権を喪失したため、国に対し憲法29条3項に基づく「正当な補償」または条理に基づく補償を求めて提訴した。
あてはめ
本件不動産の譲渡命令は、昭和24年10月31日付の連合国最高司令官の覚書に従って発せられたものである。このようなポツダム勅令に基づく措置は、憲法の枠外の行為として憲法の適用が排除される。上告人に生じた損害は、この憲法適用外の譲渡行為に基因して発生したものである。したがって、原因行為自体が憲法の適用外である以上、その結果として生じた損害の填補についても、憲法29条3項を直接の根拠として補償を求めることはできない。なお、条理に基づく請求についても、別途「連合国財産の返還等に伴う損失の処理等に関する法律」が制定されており、同法に準拠すべきであって直ちに認められるものではない。
結論
本件不動産譲渡には憲法の適用がなく、憲法29条3項を直接の根拠とする補償請求も認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
占領下におけるポツダム命令等の特殊な法的性格を論じる際に用いる。憲法29条3項の直接適用の可否が争点となる事案において、国家の存立に関わる超憲法的な措置については同条の適用が排除される余地があることを示す基準となるが、現代の実務上は極めて限定的な場面でのみ参照される。
事件番号: 昭和36(オ)523 / 裁判年月日: 昭和40年9月8日 / 結論: 棄却
一 「ポツダム宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件」(昭和二〇年勅令第五四二号)およびこれに基づく「団体等規正令」(昭和二四政令第六四号)、「解散団体の財産の管理及び処分等に関する政令」(昭和二三年政令第二三八号)ならびに右政令に基づく団体指定、解散、財産接収の処分は、その内容が日本国憲法に違反すると否とを問わず、効力…