抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
抵当権者による物上代位権の行使と目的債権の譲渡
民法304条,民法372条,民法467条
判旨
抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使できる。民法304条1項但書の「払渡又ハ引渡」に債権譲渡は含まれない。
問題の所在(論点)
抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前に、当該債権が譲渡され対抗要件が備えられた場合、抵当権者はなお物上代位権を行使できるか。民法304条1項但書の「払渡又ハ引渡」に債権譲渡が含まれるか否か。
規範
1. 民法304条1項但書が「払渡又ハ引渡」前の差押えを要するとした趣旨は、二重弁済を強いられる危険から第三債務者を保護する点にある。2. したがって、右「払渡又ハ引渡」に債権譲渡は含まれない。3. 抵当権の効力は登記により公示されており、債権譲渡後であっても差押え前に債務者が弁済していなければ第三債務者の不測の損害は生じない一方、譲渡優先とすれば抵当権者の利益が不当に害されるためである。
重要事実
抵当権設定者Dは、抵当権者である上告人の抵当権設定登記後、本件不動産を被上告人に賃貸した。その後、Dは債権者Eに対し、被上告人に対する将来の賃料債権を代物弁済として譲渡し、被上告人はこれに確定日付ある証書で承諾した。上告人は、右債権譲渡の後に、物上代位権に基づき本件賃料債権を差し押さえ、被上告人に対し賃料の支払を求めた。
あてはめ
1. 本件賃料債権は債権譲渡され、確定日付ある証書による承諾という対抗要件が備えられているが、これは「払渡又ハ引渡」には当たらない。2. 被上告人(第三債務者)は、差押命令の送達前に譲受人Eに弁済していればその消滅を対抗でき、未弁済であれば供託等により免責され得るため、譲渡後の物上代位を認めても不当な不利益はない。3. むしろ、Dによる譲渡を優先すれば、抵当権者の優先弁済権が容易に潜脱されることになり、公示制度を前提とする抵当権の性質に反する。
結論
債権譲渡は「払渡又ハ引渡」に含まれず、抵当権者は債権譲渡後であっても自ら差し押さえることで物上代位権を優先的に行使できる。
実務上の射程
物上代位と債権譲渡の優劣に関するリーディングケースである。答案上は、まず304条1項但書の趣旨を「第三債務者の二重弁済防止」と定義し、債権譲渡が「払渡」に含まれないことを論証する。また、将来債権の譲渡であっても本判例の射程が及ぶ点に留意する。
事件番号: 平成16(受)1271 / 裁判年月日: 平成17年2月22日 / 結論: 棄却
動産売買の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備えられた後においては,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない。