滞納に係る国税の本税の金額が法定納期限後における一部納付等により減少した場合において、税務署長が、不動産競売の執行裁判所に対し、交付要求書の本税の欄に交付要求時に存在する本税の金額を記載し、延滞税の欄には具体的金額を記載せず法律による金額の交付を求める旨のみを記載して交付要求をしたときは、その効力は、交付要求時以前に消滅した本税部分の金額に対応して計算される延滞税の金額には及ばない。
不動産競売手続において交付要求書の延滞税の欄に法律による金額の交付を求める旨のみを記載してした交付要求の効力の及ぶ範囲
民事執行法49条2項,民事執行法51条1項,民事執行法87条1項,国税徴収法82条,国税徴収法施行令36条1項,国税徴収法施行規則3条1項,国税通則法60条
判旨
不動産競売における交付要求の効力は、交付要求書に記載された本税額およびこれに対応する延滞税額にのみ及び、交付要求時までに消滅した本税部分に対応する延滞税には及ばない。交付要求は民事執行法上の配当要求と同性質のものであり、配当を求める債権の範囲を明確にする必要があるからである。
問題の所在(論点)
国税の交付要求において、交付要求書に「交付要求時に存在する本税額」のみを記載した場合、その効力は交付要求前に消滅した本税部分に係る延滞税にも及ぶか。交付要求の法的性質と、配当要求の終期による債権額拡張制限の可否が問題となる。
規範
交付要求は、強制換価手続における換価代金からの配当を求める申立てであり、民事執行法上の配当要求と同性質を有する。したがって、税務署長は配当を求める債権(附帯債権を含む)の内容・金額を明らかにすべきであり、確定金額の記載が困難な延滞税等については、配当期日に計算が可能となるよう基礎事実を記載しなければならない。この書面に示された債権額は配当を受け得る限度を示し、配当要求の終期後はこれを拡張することはできない。
重要事実
滞納に係る国税の本税が、法定納期限後の一部納付等により逐次減少していた。税務署長は不動産競売の執行裁判所に対し交付要求を行う際、交付要求書の本税欄に「交付要求時に現存する本税額」を記載し、延滞税欄には具体的金額を記載せず「法律による金額の交付を求める」旨のみを記載した。その後、交付要求時より前に既に消滅していた本税部分に対応して計算される延滞税についても、交付要求の効力が及ぶか否かが争われた。
あてはめ
民事執行法が配当要求時に債権額の記載を求める趣旨は、執行裁判所に配当額を把握させ、剰余の有無や手続の適正を判断させる点にある。本件において、税務署長は交付要求書に「交付要求時に存在する本税額」を記載したに過ぎない。この場合、交付要求の効力が及ぶのは、記載された本税額およびその本税に対応して法定の割合で計算される延滞税に限られると解すべきである。交付要求前に既に消滅している本税部分は、交付要求書に記載された債権の範囲に含まれておらず、配当要求の終期後にこれを拡張することは許されない。
結論
交付要求の効力は、交付要求書に記載された本税額およびこれに対する延滞税にのみ及ぶ。交付要求時以前に消滅した本税部分に対応する延滞税には及ばない。
実務上の射程
公租公債の優先弁済権を主張する交付要求であっても、民事執行手続の安定性と予見可能性の観点から、民事執行法上の配当要求と同様の規律(金額の明示と拡張禁止)が及ぶことを示した。答案上は、執行手続における債権額確定の重要性を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和63(オ)35 / 裁判年月日: 平成2年6月28日 / 結論: 棄却
不動産競売手続において、国税徴収法二二条五項に基づく交付要求により配当を受けるためには、配当要求の終期までにこれをしなければならない。