いわゆるニューヨーク・プロデュース書式等に基づく定期傭船契約によって傭船されている船舶の積荷につき船長により発行された船荷証券については、船舶所有者が船荷証券に表章された運送契約上の請求権についての債務者となり得るのであって、船荷証券を所持する第三者に対して運送契約上の債務を負担する運送人がだれであるかは、船荷証券の記載に基づいてこれを確定することを要する。
定期傭船されている船舶の積荷につき船長により船荷証券が発行された場合において船荷証券所持人に対して運送契約上の債務を負担する運送人
商法704条1項,商法769条,国際海上物品運送法2条2項,国際海上物品運送法7条1項
判旨
定期傭船契約において船長が発行した船荷証券上の運送人は、証券の記載に基づき確定すべきである。定期傭船契約下でも船舶所有者は船舶の支配占有を保持しており、商法704条1項の適用又は類推適用により常に定期傭船者のみが義務を負うわけではない。
問題の所在(論点)
定期傭船契約に基づき船長が発行した船荷証券に関し、運送契約上の義務を負う運送人は誰か。また、商法704条1項(船舶賃借人の責任)の規定が定期傭船契約に適用ないし類推適用され、船舶所有者は免責されるか。
規範
定期傭船契約に基づき傭船されている船舶により貨物が運送される場合、船長が発行した船荷証券に係る運送契約上の債務者は、船荷証券の記載に基づいて確定すべきである。船舶賃貸借と異なり、定期傭船契約では船舶所有者が船長らの指揮監督権を保持し、船舶を支配・占有し続けているため、商法704条1項を適用または類推適用して、当然に定期傭船者のみが義務を負い船舶所有者が免責されると解することはできない。
重要事実
船舶所有者と定期傭船者との間でニューヨークプロデュース書式等の定期傭船契約が締結され、当該船舶により貨物が運送された。当該貨物につき船長により船荷証券が発行されたが、その証券上の運送契約上の債務(損害賠償義務等)が、船舶所有者と定期傭船者のいずれに帰属するかが争点となった。
あてはめ
船舶賃貸借では賃借人が船長を選任し船舶を全面的に支配するが、定期傭船契約では船舶所有者が船員を雇い入れ、艤装も行うため、船舶の支配占有は依然として所有者にある。したがって、商法704条1項の類推は妥当せず、船荷証券という証券の文言を信頼した第三者の保護の観点から、証券の客観的記載を基準として運送人を判断すべきである。本件では、証券記載等の事実関係に照らし、船舶所有者が運送人としての責任を負わないとした原審の結論は維持される。
結論
定期傭船契約であっても、船荷証券の記載に基づき船舶所有者が運送契約上の債務者となり得る。商法704条1項の類推適用により船舶所有者が当然に免責されることはない。
実務上の射程
国際的な船荷証券に関する運送人特定の基準を示した重要判例である。答案上では、定期傭船者の法的性質が問われる場面において、船舶賃借人との支配占有の差異を論証し、商法704条1項の類推適用を否定する文脈で使用する。最終的な運送人の特定は「証券の記載」によるべきとする点も、証券の文言証券性の観点から不可欠である。
事件番号: 昭和62(オ)1047 / 裁判年月日: 平成2年11月8日 / 結論: 棄却
運航委託契約により船舶の運航を受託した者が、船舶を自己の業務の中に一体的に従属させ、船内事故の被害者で直接の契約関係にない船長に対し指揮監督権を行使する立場にあり、船長かち実質的に労務の供給を受けていたという事実関係の下においては、右受託者は、船長に対し信義則上の安全配慮義務を負う。