我が国における著名な時計等の製造販売業者の取扱商品ないし商号の略称を表示する文字である「SEIKO」と、眼鏡と密接に関連しかつ一般的、普遍的な文字である「EYE」との結合からなり、時計及び眼鏡等を指定商品とする商標「SEIKO EYE」中の「EYE」の部分のみからは、出所の識別標識としての称呼、観念は生じない。
時計及び眼鏡等を指定商品とする商標「SEIKO EYE」中の称呼・観念の生じる部分
商標法(平成3年法律第65号による改正前のもの)4条1項11号
判旨
複数の構成部分から成る結合商標において、一部が識別標識として強く支配的な印象を与え、他部が一般的・普遍的な文字で識別力が弱い場合には、後者のみから称呼・観念は生じず、商標全体または支配的な部分を基準に類否を判断すべきである。
問題の所在(論点)
結合商標の類否判断において、構成部分の一部を抽出して対比すること、あるいは特定の部分から称呼・観念が生じないものと解することは許容されるか。特に、著名な標章と識別力の弱い一般的文字が結合している場合の判断手法が問題となる。
規範
商標の類否は、外観、称呼、観念を全体的に考察すべきであるが、複数の構成部分が結合した商標であっても、(1)その一部が取引者や需要者に対し商品出所の識別標識として強く支配的な印象を与える場合、または(2)他の一部が一般的・普遍的な文字であり識別標識として特定の印象を与えない等の事情がある場合には、当該一部を抽出して対比し、または当該一部からは称呼・観念が生じないものとして全体的観察を行うべきである。
重要事実
上告人は「eye」の文字を含む本願商標を出願したが、特許庁は「SEIKO EYE」という構成の引用商標(指定商品は時計・眼鏡等)と類似する(商標法4条1項11号)として拒絶審決をした。引用商標のうち「SEIKO」は著名なメーカーの略称として広く認識されており、一方で「EYE」は「目」を意味する一般的・普遍的な言葉であった。原審は「EYE」部分からも「アイ」の称呼等が生じると判断し、本願商標と類似すると結論づけた。
あてはめ
引用商標の構成中、「SEIKO」部分は著名な出所表示として支配的な印象を与える。これに対し、「EYE」部分は眼鏡等の指定商品と密接に関連する一般的・普遍的な文字であり、特定の印象を与える力が弱い。したがって、具体的取引において「EYE」が出所標識として機能している等の特段の事情がない限り、同部分のみから称呼・観念は生じない。本件では、引用商標からは「SEIKO EYE」または「SEIKO」の称呼・観念のみが生じると解すべきであり、本願商標とは外観も称呼等も類似しない。
結論
引用商標の「EYE」部分のみからは称呼・観念は生じないため、本願商標は引用商標と類似せず、商標法4条1項11号に該当しない。拒絶審決を取り消した。
実務上の射程
結合商標の分離観察(要部観察)の許容性と限界を示した重要判例。答案では、商標の構成要素に識別力の強弱(著名性 vs 一般的名称)がある場合、本判例を根拠に「要部」を特定し、非類似の結論を導くための論理として用いる。
事件番号: 昭和37(オ)953 / 裁判年月日: 昭和38年12月5日 / 結論: 棄却
一 一個の商標から二つ以上の称呼、観念が生ずる場合、一つの称呼、観念が他人の商標の称呼、観念と同一または類似であるとはいえないとしても、他の称呼、観念が他人の商法のそれと類似するときは、両商標はなお類似するものと解するのが相当である。 二 石鹸を指定商品とし、リラと呼ばれる抱琴の図形と「宝塚」の文字との結合からなる商標…