一 訴状の有効な送達がないため、被告とされた者が訴訟に関与する機会が与えられないまま判決がされて確定した場合には、民訴法四二〇条一項三号の再審事由がある。 二 被告に対して判決正本が有効に送達され、右判決に対する控訴がされなかった場合であっても、被告において、訴状の有効な送達がないために訴訟に関与する機会を与えられなかったという再審事由を現実に了知することができなかったときは、民訴法四二〇条一項ただし書の適用はない。
一 訴状の有効な送達のないままされた判決が確定した場合と民訴法四二〇条一項三号の再審事由 二 判決正本が有効に送達され右判決に対する控訴がされなくても民訴法四二〇条一項ただし書の適用がない場合
民訴法171条1項,民訴法420条1項ただし書,民訴法420条1項3号
判旨
訴状の有効な送達を欠くまま判決がなされた場合、民訴法338条1項3号類推の再審事由となる。また、判決正本の補充送達が有効であっても、当事者が再審事由を現実に了知していなければ、上訴による不服申立てを怠ったとはいえず、再審の訴えは妨げられない。
問題の所在(論点)
1. 7歳の子供への補充送達の有効性。2. 訴状の送達欠如が再審事由となるか。3. 判決正本の補充送達により上訴が可能であった場合、同条項但書により再審が制限されるか。
規範
1. 補充送達の受領資格である「事理を弁識するに足りるべき知能を備える者」とは、送達の趣旨を理解して書類を受送達者に交付することを期待できる程度の能力を有する者をいう。2. 有効な訴状の送達を欠き訴訟関与の機会を奪われたままなされた判決には、民訴法338条1項3号類推の再審事由が認められる。3. 同条項但書の「上訴によりその事由を主張したとき」とは、再審事由を現実に了知した上で上訴しなかった場合を指し、現実の了知を欠く場合には同但書は適用されない。
重要事実
事件番号: 平成18(許)39 / 裁判年月日: 平成19年3月20日 / 結論: 破棄差戻
1 受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた民訴法106条1項所定の同居者等と受送達者との間に,その訴訟に関して事実上の利害関係の対立があるにすぎない場合には,当該同居者等に対して上記書類を交付することによって,受送達者に対する補充送達の効力が生ずる。 2 受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた民訴法106条1項所定…
再審原告(上告人)に対し、7歳9か月の四女が訴状等を受領したが本人に交付しなかった。本人が不知のまま欠席判決が言い渡され、判決正本は同居の妻が受領したが、これも本人に知らされず判決が確定した。後に判決の存在を知った本人が、訴状の送達欠如を理由に再審の訴えを提起した。
あてはめ
1. 7歳9か月の女子は送達書類の交付を期待できる能力を欠くため、訴状の補充送達は無効である。2. 送達不備により関与の機会を欠く判決は、代理権欠缺と同様に当事者権を侵害しており、再審事由となる。3. 判決正本が妻への補充送達により有効に送達されていたとしても、妻が本人に知らせておらず、本人が再審事由を現実に了知していなかった以上、上訴が可能であったことをもって再審を否定することはできない。
結論
訴状の送達欠如は再審事由に該当し、本人がその事実を現実に了知していなかった以上、上訴期間の徒過にかかわらず再審の訴えは適法である。
実務上の射程
送達の瑕疵を理由とする再審請求において、形式的な期間徒過(判決正本の送達)よりも、当事者の現実的な認識(手続保障)を重視した判例である。答案上では、338条1項3号の類推適用および同但書の「現実の了知」の解釈を示す際に活用すべきである。
事件番号: 平成3(オ)1765 / 裁判年月日: 平成5年9月9日 / 結論: 破棄自判
株式会社の代表者が自己又は第三者の利益を図る意思で訴訟行為をし、かつ、相手方において右代表者の意思を知り又は知り得べきであった場合でも、民訴法四二〇条一項三号の再審事由があるとはいえない。
事件番号: 昭和41(オ)833 / 裁判年月日: 昭和41年12月22日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第一項但書後段にいう「之ヲ知リテ主張セサリシトキ」のなかには、当事者が、再審事由のあることを知りながら、上訴を提起しなかつた場合をも含むものと解すべきである。
事件番号: 昭和46(オ)1105 / 裁判年月日: 昭和47年4月28日 / 結論: 棄却
被上告人を被告とする訴訟において、被上告人の妻がその訴状、期日呼出状を毀棄し、判決正本を隠匿したため、被上告人がその訴訟の係属およびその進行についてなんら知るところなく欠席のまま判決を受け、同判決が確定したなど、判示の事情のもとにおいては、民訴法四二〇条一項五号の再審事由があるものというべきである。
事件番号: 昭和37(オ)181 / 裁判年月日: 昭和38年7月11日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第一項但書の「当事者」とは、当事者の訴訟代理人を含むものと解すべきである。