株式会社の代表者が自己又は第三者の利益を図る意思で訴訟行為をし、かつ、相手方において右代表者の意思を知り又は知り得べきであった場合でも、民訴法四二〇条一項三号の再審事由があるとはいえない。
株式会社の代表者が自己又は第三者の利益を図る意思で訴訟行為をした場合と民訴法四二〇条一項三号の再審事由
民訴法420条1項3号
判旨
株式会社の代表者が自己又は第三者の利益を図る目的で訴訟行為をした場合、相手方がその意図を知り又は知り得たとしても、代表権自体は否定されず、民訴法338条1項3号(旧420条1項3号)の再審事由には当たらない。
問題の所在(論点)
代表者が自己又は第三者の利益を図る目的で(利益相反的・濫用的に)訴訟行為を行い、相手方もその事情を知っていた場合に、民事訴訟法338条1項3号の「法定代理権、代表権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと」という再審事由に該当するか。
規範
株式会社の代表者は、法に特別の規定がある場合を除き、会社の営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする包括的な権限を有する(会社法349条4項参照)。したがって、代表者が自己又は第三者の利益を図る意思で訴訟行為をしたとしても、その代表権限は、代表者の内心の意思や相手方の悪意・過失によって消長を来すものではない。
重要事実
株式会社の代表者であった者が、自己の利益を図るために相手方(上告人)と通謀し、相手方が提起した準消費貸借契約に基づく支払請求訴訟において、真実に反して請求原因事実を自白した。その後、本件確定判決に対し、会社側(被上告人)が「代表権の欠缺」(旧民訴法420条1項3号、現338条1項3号)を理由に再審の訴えを提起した。
あてはめ
原審は、民法上の代理権濫用の法理を類推し、相手方が悪意・有過失であれば代表権の授権が欠けていたのと同視できるとした。しかし、最高裁はこれを否定する。株式会社の代表者の裁判上の権限は法律上規定された包括的なものであり、訴訟手続の明確性・安定性の観点から、内心の意図や相手方の認識という主観的要素によって代表権の有無が左右されるべきではないと判断される。本件において代表者に有効な代表権がある以上、たとえ不当な自白がなされたとしても、代理権の欠缺という手続上の瑕疵には該当しない。
結論
代表者に有効な代表権がある以上、その権限濫用的な行為や相手方の知不知にかかわらず、民訴法338条1項3号の再審事由があるとはいえない。
実務上の射程
訴訟行為における代理権濫用の法理(民法107条類推適用)の否定。実体法上の契約等とは異なり、訴訟行為については手続の安定が重視され、代表権の有無は形式的に判断される。答案上、再審事由や訴訟行為の効力を論じる際、「訴訟手続の明確性・安定性」をキーワードとして本判例を引用し、主観的態様による無効主張を排斥する際に活用する。
事件番号: 平成4(オ)735 / 裁判年月日: 平成7年11月9日 / 結論: 破棄自判
甲が禁治産者乙の後見人に就職する前に乙のために無権限で訴えを提起した上弁護士に対する訴訟委任をし、これに基づいて判決がされた場合には、甲が乙の姉であって後見人に就職する前から事実上後見人の立場で乙の面倒を見てきたものであり、このような甲の態度について家族の他の者が異議を差し挟んでおらず、甲と乙の利害が相反する状況もなか…
事件番号: 平成6(オ)1095 / 裁判年月日: 平成6年10月25日 / 結論: 棄却
民訴法四二〇条一項六号に該当する事由を再審事由とし、かつ、同条二項の適法要件を主張する再審の訴えは、その対象となった原判決の証拠とされた文書の偽造等に係る公訴権の時効消滅等が原判決の確定前に生じた場合であっても、右文書の偽造等につき有罪の確定判決を得ることを可能とする証拠が原判決の確定後に収集されたものであるときは、同…
事件番号: 昭和46(オ)1105 / 裁判年月日: 昭和47年4月28日 / 結論: 棄却
被上告人を被告とする訴訟において、被上告人の妻がその訴状、期日呼出状を毀棄し、判決正本を隠匿したため、被上告人がその訴訟の係属およびその進行についてなんら知るところなく欠席のまま判決を受け、同判決が確定したなど、判示の事情のもとにおいては、民訴法四二〇条一項五号の再審事由があるものというべきである。
事件番号: 昭和33(ヤ)4 / 裁判年月日: 昭和36年1月27日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】訴訟代理人が適法に提出した上告理由書は、その後に代理権が消滅したとしても有効であり、これに基づき判決をすることは民事訴訟法上の代理権欠缺(再審事由)には該当しない。 第1 事案の概要:再審原告の前上告審において、当時の訴訟代理人(弁護士)が上告理由書を提出した。その後、当該代理人は再審原告本人によ…