満期及びその他の手形要件を白地として振り出された手形の満期が補充された場合は、右手形のその他の手形要件の白地補充権は、手形上の権利と別個独立に時効によって消滅することなく、手形上の権利が消滅しない限りこれを行使することができる。
白地手形の満期が補充された場合とその他の手形要件の白地補充権の消滅時効
手形法10条,手形法70条1項,手形法77条1項
判旨
満期および他の手形要件が白地の手形において、満期が補充された後は、他の要件の白地補充権は手形上の権利が消滅しない限り行使でき、個別に時効消滅することはない。
問題の所在(論点)
満期が補充された後の手形において、振出日等の他の白地補充権が、手形上の権利の消滅時効とは別に、補充権授与時から5年の経過によって時効消滅するか。
規範
手形が満期およびその他の手形要件を白地として振り出された場合であっても、その後満期が適法に補充されたときは、当該手形は満期の記載された手形となる。したがって、その他の手形要件の白地補充権は、手形上の権利と別個独立に時効によって消滅することなく、手形上の権利が消滅しない限り、これを行使することができる。
重要事実
振出人(被上告人)は、当初満期を昭和59年9月20日とし振出日・受取人を白地として手形を振り出したが、その後受取人(上告人)との合意により満期の記載を抹消して満期白地とした。上告人は、満期白地補充権の消滅時効期間内である平成元年6月、満期を同年9月1日と補充した。その後同年9月5日(振出交付から5年経過後)、振出日を昭和59年7月20日、受取人を上告人と補充した。
あてはめ
本件各手形は、当初満期が白地であったが、時効完成前に満期欄が適法に補充されたことで「満期の記載された手形」となった。この場合、他の要件(振出日・受取人)の白地補充権は、手形上の権利の消滅時効期間内(満期から3年間)であれば行使可能となる。振出日等の補充が振出交付から5年を経過していたとしても、補充された満期である平成元年9月1日から3年以内であれば、補充権は消滅していないといえる。
結論
満期補充により手形上の権利の消滅時効が適用される状態となった以上、他の白地補充権も手形上の権利が存続する限り行使可能であり、振出日等の補充は有効である。
実務上の射程
満期白地手形の補充権の時効(原則5年)と、満期補充後の手形上の権利の時効(満期から3年)の関係を整理する際に用いる。満期が補充されることで、他の要件の補充権の行使期限が手形債権の時効期間に連動して伸長される(実質的な補充権の独立消滅の否定)点を論述する際に有用である。
事件番号: 昭和37(オ)645 / 裁判年月日: 昭和38年7月16日 / 結論: 棄却
約束手形の白地補充権は五年の短期消滅時効にかかるものと解するのを相当とする。