一 担保仮登記がされている不動産について、参加差押えが清算金の支払債務の弁済前(清算金がないときは、清算期間の経過前)にされた場合においては、先行してされていた国税の滞納処分による差押えが解除されていないときであつても、担保仮登記の権利者は、その仮登記に基づく本登記の請求をすることができない。 二 担保仮登記の権利者は、仮登記担保契約に関する法律一五条一項の規定によりその仮登記に基づく本登記の請求をすることができない場合においても、同法二条所定の通知をし、その到達の日から二月を経過すれば、債務者に対し所有権に基づき目的不動産の引渡しを請求することができる。
一 担保仮登記がされている不動産に対する参加差押えが清算金支払債務の弁済前にされた場合と担保仮登記の権利者の本登記請求の可否 二 担保仮登記の権利者が仮登記担保契約に関する法律一五条一項の規定により本登記請求をすることができない場合と目的不動産の引渡請求の可否
仮登記担保契約に関する法律15条1項,国税徴収法52条の2,国税徴収法87条1項
判旨
仮登記担保法15条1項による本登記請求の制限は、競売開始決定等が担保仮登記後にされた場合に限定され、仮登記前にされた場合には適用されない。また、本規定により本登記請求が制限される場合であっても、清算期間経過により所有権を取得した権利者は、債務者に対し目的物の明渡請求をすることができる。
問題の所在(論点)
1. 担保仮登記「前」になされた競売開始決定や差押えがある場合、仮登記担保法15条1項(および国税徴収法52条の2による準用)により本登記請求が制限されるか。2. 本登記請求が制限される場合に、所有権に基づく明渡請求が可能か。
規範
1. 仮登記担保法15条1項は、担保仮登記後の競売開始等による後順位利害関係人と担保権者の調整を図る趣旨であるから、担保仮登記「前」に競売登記や滞納処分による差押登記がされている場合には適用されない。2. 同法15条1項が準用(国税徴収法52条の2)される場合であっても、その制限は「本登記請求」のみに及び、権利者の「所有権取得」自体を否定するものではない。したがって、清算期間経過により所有権を取得した以上、債務者に対する明渡請求は妨げられない。
事件番号: 昭和52(オ)589 / 裁判年月日: 昭和54年9月11日 / 結論: その他
停止条件付代物弁済契約に基づき所有権移転の仮登記が経由されたのちに仮登記の目的物件につき権原を取得して占有を開始した第三者は、仮登記権利者が右停止条件付代物弁済契約に基づき目的物件の所有権を取得し本登記を経由しても、仮登記権利者に対し右所有権取得後本登記までの目的物件の占有につき遡つて不法占有による損害賠償責任を負うも…
重要事実
債権者X(上告人)は、債務者Y(被上告人)との準消費貸借契約に基づく債務を担保するため、Y所有の土地建物に代物弁済予約をし、担保仮登記を経由した。しかし、当該仮登記の前後で本件不動産には、(1)抵当権実行による競売開始決定、(2)滞納処分による差押え、(3)担保仮登記「後」の参加差押え、の各登記がなされていた。Xは予約完結権を行使し清算金不要の通知をしたが、Yが占有を続けたため、Xは仮登記に基づく本登記および建物明渡しを求めて提訴した。
あてはめ
1. 本件土地建物には担保仮登記「前」に競売開始決定および差押登記がなされている。この場合、本登記を認めても差押債権者に対抗できず手続を妨げないため、同法15条1項を適用して本登記請求を禁止する必要はない。2. もっとも、担保仮登記「後」に参加差押えがなされている。参加差押えは先行差押え解除により遡及的に効力を生じるため(国税徴収法87条1項2号)、類推適用により本登記請求は制限される。3. しかし、同法15条1項は「本登記」を禁じるのみで「所有権取得」は否定しない。Xは清算期間経過によりYに対し所有権を取得しており、その対抗要件(本登記)を具備できないとしても、直接の債務者Yに対する関係では明渡請求が可能である。
結論
1. Xの本登記請求は、後順位の参加差押えが存在するため認められない。2. Xの明渡請求は、清算期間経過により所有権を取得しているため認められる。
実務上の射程
仮登記担保法15条による競売手続との調整場面に関する重要判例。答案では「本登記請求は否定されるが、明渡請求は肯定される」という結論の分かれ目に注意する。また、同条の適用範囲が「仮登記後の競売」に限られる点も、時系列に沿った事案分析の際に重要となる。
事件番号: 昭和25(オ)263 / 裁判年月日: 昭和26年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産売買において、代金支払が登記手続に先行する特約があり、かつ不払の場合に無催告解除をなし得る旨の合意がある場合、約定期限までに履行場所で代金の提供がなければ、特約に基づく無催告解除は有効である。 第1 事案の概要:買主(上告人)は売主(訴外会社)との間で土地の売買契約を締結したが、手付金を支払…
事件番号: 昭和45(オ)1156 / 裁判年月日: 昭和50年9月9日 / 結論: 破棄差戻
仮登記担保権者は、目的不動産につき後順位権利者があるときは、債務者に対する被担保債権以外の金銭債権をもつて自己の負担する清算金支払債務と相殺することができない。
事件番号: 昭和57(オ)452 / 裁判年月日: 昭和58年7月5日 / 結論: 棄却
不動産の売買の遡及的合意解除がされた場合、買主から右不動産を取得したが対抗要件としての登記を経由していない者は、たとえ仮登記を経由したとしても、民法五四五条一項但書にいう「第三者」として保護されない。
事件番号: 昭和43(オ)356 / 裁判年月日: 昭和43年9月20日 / 結論: 棄却
一、土地の売買契約締結に際して、目的土地の一部を第三者が占有している場合に、売主が、右第三者の占有は権原に基づかないもので少なくとも一年位のうち明渡を受けて買主に目的土地を明け渡す旨言明したため、買主においてこれを信用し、右第三者使用部分の明渡が完了すると同時に残代金を支払うことを約したときには、右残代金の支払時期につ…