一 共同不法行為の加害者の各使用者が使用者責任を負う場合において、一方の加害者の使用者は、当該加害者の過失割合に従って定められる自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、他方の加害者の使用者に対し、当該加害者の過失割合に従って定められる負担部分の限度で、求償することができる。 二 加害者の複数の使用者が使用者責任を負う場合において、各使用者の負担部分は、加害者の加害行為の態様及びこれと各使用者の事業の執行との関連性の程度各使用者の指揮監督の強弱などを考慮して定められる責任の割合に従って定めるべきである。 三 加害者の複数の使用者が使用者責任を負う場合において、使用者の一方は、自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、使用者の他方に対し、その負担部分の限度で、求償することができる。
一 共同不法行為の加害者の各使用者間における求償権の成立する範囲 二 加害者の複数の使用者間における各使用者の負担部分 三 加害者の複数の使用者間における求償権の成立する範囲
民法442条,民法715条,民法719条
判旨
複数の加害者の使用者が混在する共同不法行為において、使用者間の求償は、まず被用者間の過失割合により各加害者側の負担額を定め、次いで一方の加害者に複数の使用者がいる場合は、指揮監督の強弱等に基づきその負担額を分担させるべきである。
問題の所在(論点)
複数の加害者が存在し、かつ一方の加害者に複数の使用者・運行供用者が存在する場合における、共同不法行為者間の内部的な責任分担および求償額の算定手法が問題となる。
規範
1. 異なる加害者の使用者間の求償:各使用者の責任割合は、それぞれが指揮監督する各加害者の過失割合に従って定める。一方が自己の負担部分を超えて賠償したときは、他方の使用者の負担部分の限度で求償できる。 2. 同一の加害者の複数の使用者間の求償:加害行為の態様、事業執行との関連性、指揮監督の強弱等を考慮して責任割合を定める。自賠法上の運行供用者間でも同様に、運行支配・運行利益の程度を考慮する。
重要事実
クレーン車(本件車両)による事故が発生し、運転手Gと玉掛け作業員Hの過失が認められた。被上告人はGの雇主(派遣元)であり、上告人はGを指揮監督する立場(派遣先)かつHの使用者でもあった。被上告人が被害者に全額賠償したため、上告人に対し求償を請求。原審はG、H、上告人、被上告人等の全員につき個別の負担割合を定めて求償額を算出した。
あてはめ
本件ではまず、直接の加害者であるGとHの過失割合を確定し、H側の負担分(上告人が負う分)を特定すべきである。その上で、G側の負担分について、派遣元(被上告人)と派遣先(上告人)の間で、Gの行為と各事業の関連性、指揮監督の強弱、車両の運行支配・運行利益の程度を比較衡量して分担割合を定めるべきである。原審のように全員を同列に並べて個別割合を定める手法は、使用者と被用者の一体性を看過しており失当である。
結論
原判決を破棄し、GとHの過失割合、およびGに対する上告人と被上告人の指揮監督の強弱等を更に審理させるため、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
派遣労働者や下請作業員が関与する事故など、複雑な指揮監督関係がある事案での求償計算に用いる。答案では「まず被用者間の過失割合で枠を決め、次に同一被用者を巡る使用者間で按分する」という二段階の処理手順を明示することが重要である。
事件番号: 昭和45(オ)389 / 裁判年月日: 昭和45年10月13日 / 結論: 棄却
使用者が被用者に求償権を行使するに当つて、使用者の事情の性格、規模、被用者の業務の内容、加害行為の態様その他諸般の事情を考慮し、求償権の行使が被用者に対して公平の観念に反すると認められる場合は、民法七一五条三項に基づく求償権の行使は許されない。