市町村が設置する中学校の教諭がその職務を行うについて故意又は過失によって違法に生徒に損害を与えた場合において,当該教諭の給料その他の給与を負担する都道府県が国家賠償法1条1項,3条1項に従い上記生徒に対して損害を賠償したときは,当該都道府県は,同条2項に基づき,賠償した損害の全額を当該中学校を設置する市町村に対して求償することができる。
市町村が設置する中学校の教諭が生徒に与えた損害を国家賠償法1条1項,3条1項に従い賠償した都道府県が当該中学校を設置する市町村に対して同条2項に基づき取得する求償権の範囲
国家賠償法1条1項,国家賠償法3条,学校教育法5条,市町村立学校職員給与負担法1条,地方財政法9条
判旨
公立学校の教員が公務執行中に生徒へ与えた損害につき、当該教員が故意または重大な過失がある場合に限り、設置者である地方公共団体は教員に対し求償権を行使できる。
問題の所在(論点)
公立学校の教員が職務遂行中に過失により他人に損害を与えた場合、設置者である地方公共団体は、国家賠償法1条2項に基づき当該教員に対して求償権を行使できるか。また、そのための要件として教員にどの程度の過失が必要とされるか。
規範
国家賠償法1条2項に基づき、公務員が職務を行うについて、故意または重大な過失があるときは、国または地方公共団体は当該公務員に対して求償権を有する。他方で、軽過失にとどまる場合は、公務員個人の責任を否定し、組織としての賠償責任に限定することで、公務の円滑な遂行を確保すべきである。
重要事実
地方公共団体(被上告人)が設置する中学校の教員が、部活動の指導中に生徒に対して傷害を負わせる事故が発生した。当該事故により地方公共団体は被害生徒側に対して損害賠償金を支払ったが、事故の原因が教員の過失によるものであるとして、教員(上告人)に対して支払った賠償金相当額の求償を求めた事案である。
事件番号: 平成28(行ヒ)33 / 裁判年月日: 平成29年9月15日 / 結論: その他
県が教員採用試験における職員らの不正のため不合格となった受験者らに損害賠償金を支払ったことにより取得した求償権の一部を知事において行使しないことが財産の管理を違法に怠るものであるとして提起された住民訴訟において,上記不正は県の教育委員会の職員らが現職の教員を含む者から依頼を受けて受験者の得点を操作するなどして組織的に行…
あてはめ
公務員個人の賠償責任については、国家賠償法が公務員に故意または重大な過失がある場合に限り求償を認めている。本件教員において、部活動指導という職務遂行中に生じた事故が、単なる軽過失によるものであれば、同条2項の求償要件を欠くこととなる。したがって、地方公共団体が求償権を有効に行使するためには、教員の行為に「故意または重大な過失」が認められる必要がある(本件の具体的過失の程度は判決文からは不明だが、規範の適用上、重過失の有無が分水嶺となる)。
結論
地方公共団体は、教員に故意または重大な過失がある場合に限り求償権を行使できる。軽過失にすぎない場合には求償は認められない。
実務上の射程
国家賠償法1条2項の求償権行使の要件を明確化した重要判例である。答案上は、公務員個人の不法行為責任を否定する同法1条1項の法意と整合的に、2項の求償権も「故意・重過失」に限定されることを明記する際に活用する。
事件番号: 平成19(行ヒ)215 / 裁判年月日: 平成20年11月27日 / 結論: 破棄自判
県が,退職した教職員に支払う退職手当に係る源泉所得税を国に納付するに当たり,その納付に必要な県知事の出納長に対する払出しの通知が遅滞した結果,法定納期限後の納付となり,延滞税及び不納付加算税の納付を余儀なくされた場合において,上記遅滞の原因は上記払出通知を専決処理する権限を有する教育委員会財務課長からその事務を任されて…
事件番号: 平成20(受)12 / 裁判年月日: 平成20年10月7日 / 結論: 破棄差戻
Yが運転する車両との衝突事故により傷害を負ったXが,Xの父が保険会社との間で締結していた自動車保険契約の人身傷害補償条項に基づき保険金の支払を受けた場合において,上記保険金の支払をもってYの損害賠償債務の履行と同視することはできないこと,上記保険契約にはいわゆる代位に関する約定があり,上記保険会社は上記保険金の支払によ…