建物とその敷地の賃借権とが売買の目的とされた場合において、賃貸人が修繕義務を負担すべき敷地の欠陥は、売買の目的物の隠れた瑕疵ではない。
敷地賃借権付き建物の売買における敷地の欠陥と売買目的物の隠れた瑕疵
民法559条,民法569条,民法570条
判旨
建物及び敷地賃借権の売買において、敷地自体に修繕義務の対象となる物理的欠陥があっても、それは賃借権自体の瑕疵(売買の目的物の瑕疵)には当たらない。
問題の所在(論点)
借地権付建物の売買において、土地の物理的な瑕疵(擁壁の構造的欠陥)が、売買の目的物である「賃借権」の瑕疵(民法570条)に該当するか。
規範
建物と共に売買の目的とされたものは、敷地そのものではなく、賃貸人に対する債権としての賃借権である。したがって、敷地の面積不足や法的規制等の客観的事由により賃借権が制約を受ける場合は格別、賃貸人の修繕義務により補完されるべき敷地の物理的欠陥は、賃借権自体の瑕疵には当たらない。買主は、賃借人の地位に基づき賃貸人へ修繕請求等を行うべきであり、売主に対して瑕疵担保責任(民法570条)を追及することはできない。
重要事実
買主(被上告人)は、売主(上告人)から建物及びその敷地の賃借権を買い受けた。当該敷地には構造的欠陥のある擁壁があり、購入後に大雨で崩壊の危険が生じたため、行政から改修勧告が出された。買主は、建物維持が困難になったとして、賃借権に隠れた瑕疵があることを理由に売買契約の解除を主張した。
あてはめ
本件で売買の目的とされたのは、建物及び土地賃借権であって土地そのものではない。擁壁に水抜き穴がないという物理的欠陥は、賃貸人が修繕義務を負うべき土地の瑕疵であって、対人債権である賃借権の性質自体を損なう客観的事由(面積不足や利用制限等)とはいえない。したがって、土地の欠陥をもって賃借権の瑕疵と解することはできず、売主は瑕疵担保責任を負わない。
結論
売買の目的物に瑕疵があるとはいえず、民法570条、566条1項に基づく契約の解除は認められない。
実務上の射程
借地権付建物売買における「瑕疵」の範囲を限定した重要判例である。土地そのものの瑕疵は賃貸人との関係で解決すべき問題(賃借人としての権利行使)であり、売主の責任ではないとする。答案では、売買の目的物が「土地」か「賃借権」かを峻別し、後者の場合は権利の客観的制約があるか否かで瑕疵を判断する枠組みとして用いる。
事件番号: 昭和42(オ)222 / 裁判年月日: 昭和43年2月23日 / 結論: その他
売買の目的である土地の一部について、売主がその処分権を取得することができなくなつても、残余の部分については経験則上契約の効力に影響を及ぼすものでない等判示のような事情にあるときには、右契約が、目的土地の一部について売主が処分権を取得しないときは、売買契約が解除される旨の解除条件付契約である旨の認定は、経験則に反する。
事件番号: 平成21(受)17 / 裁判年月日: 平成22年6月1日 / 結論: 破棄自判
売買契約の目的物である土地の土壌に,上記売買契約締結後に法令に基づく規制の対象となったふっ素が基準値を超えて含まれていたことは,(1)上記売買契約締結当時の取引観念上,ふっ素が土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されておらず,(2)上記売買契約の当事者間において,上記土地が備えるべ…