欠損金の繰戻しによる前年度の法人税の還付請求を理由がないとする通知処分に対し取消の訴えを提起するためには、右通知処分と同時に同一の理由によりされた当該欠損金額を減額する更正処分に対し不服申立を経由している場合であつても、右通知処分に対する不服申立を経由することが必要である。
欠損金額を減額する更正処分に対して不服申立を経由している場合と当該欠損金の繰戻しによる法人税の還付請求を理由がないとする通知処分に対する不服申立経由の必要
国税通則法115条1項,行政事件訴訟法8条1項,法人税法81条6項
判旨
欠損金の繰戻しによる法人税の還付請求を拒否する「通知処分」は、欠損金額を減額する「更正処分」とは目的・効果を異にする別個の処分である。したがって、両処分の基礎となる事実関係が共通であっても、更正処分への不服申立てをもって通知処分への審査請求の前置に代えることはできず、別途不服申立てを要する。
問題の所在(論点)
欠損事業年度の更正処分と、それに基づく還付請求の通知処分という共通の事実を基礎とする二つの処分について、一方(更正処分)への不服申立てがある場合に、他方(通知処分)についての審査請求(不服申立前置)を省略し、直接訴訟を提起することができるか。
規範
欠損金の繰戻しによる還付請求の通知処分と、欠損事業年度の更正処分は、それぞれ目的および効果を異にする別個の独立した行政処分である。一方が他方の付随処分であるとは解されず、たとえ不服事由や基礎事実が共通であっても、不服申立手置の要件(国税通則法115条1項等)は個別の処分ごとに判断される。一方の処分に対する不服申立ての存在をもって、他方の処分に対する不服申立てを不要とする「正当な理由」には当たらない。
重要事実
納税者(法人)が、欠損事業年度の確定申告と同時に、前年度の法人税還付を求める「欠損金の繰戻しによる還付請求」を行った。これに対し税務署長は、申告された欠損金額の一部を否認して「更正処分」を行うとともに、還付請求の一部を認めない旨の「通知処分」を行った。納税者は、更正処分については適法に不服申立てを行ったが、通知処分については不服申立てを経ずにその取消しを求める訴えを提起(または追加的変更)した。
事件番号: 昭和54(行ツ)87 / 裁判年月日: 昭和57年12月21日 / 結論: 棄却
青色申告書提出承認の取消処分と同時に又はこれに引き続いて更正処分がされた場合に、たまたま右二つの処分の基礎とされた事実関係の全部又は一部が共通であつて、これに対する納税者の不服の事由も同一であるとみられるようなときでも、更正処分に対し適法に不服申立てを経たからといつて、それだけでは当然に、青色申告書提出承認の取消処分に…
あてはめ
還付請求制度は納税者の選択に委ねられ、請求金額も選択可能であり、その効果は前年度の税額還付に限定される。対して、欠損金の更正処分は欠損金額そのものを確定させ、次年度以降の繰越欠損金に影響を与えるものである。このように両者は目的・効果を異にする。本件において、納税者が更正処分を争っても、その効力として当然に還付請求の効果が生じるわけではない。よって、通知処分は更正処分に付随する処分とはいえず、更正処分の不服申立てをもって通知処分への不服申立てに代えることはできない。また、この混同を「正当な理由」と解することも相当でない。
結論
通知処分についての取消訴訟を提起するには、更正処分への不服申立てとは別に、当該通知処分に対する不服申立手続(審査請求等)を経なければならず、これを経ない訴えは不適法である。
実務上の射程
処分の独立性(別個の処分性)が認められる場合、たとえ原因事実が同一であっても、不服申立前置等の訴訟要件は各処分ごとに充足する必要があることを示す。租税訴訟における更正処分と通知処分の関係を整理する際の基本判例として機能する。
事件番号: 昭和55(行ツ)150 / 裁判年月日: 昭和59年10月25日 / 結論: 棄却
建設資材の製造、販売等を営む同族会社が系列会社に対しその製品を販売した取引につき、販売価額が通常の販売価額の五六ないし五七パーセントで製造原価をも下回るものであるなど原審認定の事実関係(原判決理由参照)があるときは、右取引は、経済的取引として不合理不自然であり、法人税法一三二条一項にいう「法人の行為又は計算で、これを容…
事件番号: 昭和45(行ツ)36 / 裁判年月日: 昭和49年4月25日 / 結論: 棄却
一、旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)二五条九項による青色申告書提出承認取消処分の通知書には、右取消が同条入項各号のいずれによるものであるかを附記するのみでは足りず、取消の基因となつた事実をも処分の相手方において具体的に知りうる程度に特定して摘示しなければならない。 二、旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)二五条九項…
事件番号: 昭和43(行ツ)61 / 裁判年月日: 昭和47年12月5日 / 結論: 棄却
一、法人税青色申告についてした更正処分の通知書に、係争事業年度所得の更正の理由として、「営業譲渡補償金計上もれ一一五五万円」、「認定利息(代表者)計上もれ一万九八三九円」、清算所得の更正の理由として、「代表者仮払金三九万六八九〇円」、「営業譲渡補償金九〇五万円」と記載されているにすぎない場合には、いずれも理由附記として…