一 法律上独立した権利義務の帰属主体でない法人組織の構成部分は、労働組合法二七条及び七条所定の使用者に当たらない。 二 法律上独立した権利義務の帰属主体でない法人組織の構成部分を名宛人とする救済命令は、当該法人に対し命令の内容を実現することを義務付けるものとして、効力を有する。 三 法律上独立した権利義務の帰属主体でない法人組織の構成部分は、自己を名宛人とする救済命令についてのA1委員会の再審査申立棄却命令の取消訴訟において、当事者能力を有しない。
一 法人組織の構成部分と労働組合法二七条及び七条所定の使用者 二 法人組織の構成部分を名宛人とする救済命令の効力 三 法人組織の構成部分とこれを名宛人とする救済命令についてのA1委員会の再審査申立棄却命令の取消訴訟における当事者能力の有無
労働組合法7条,労働組合法27条,民訴法45条
判旨
労働組合法上の「使用者」は独立した権利義務の帰属主体(法人等)に限られるが、法人格のない支所等を名宛人とする救済命令も実質的には当該法人を名宛人とするものと解される。また、謝罪文掲示命令は、指定された掲示期間を経過しても履行義務は消滅せず、取消しを求める法律上の利益は失われない。
問題の所在(論点)
1. 法人の一部(権利能力のない組織)を名宛人とする救済命令につき、当該法人に取消訴訟の原告適格(法律上の利益)が認められるか。 2. 謝罪文掲示命令において、命令で定められた期間が経過した場合に、当該命令の取消しを求める訴えの利益が消滅するか(行政事件訴訟法9条1項)。
規範
1. 労働組合法27条及び7条にいう「使用者」は、不当労働行為の責任主体として公法上の義務を負担するものであるから、法律上独立した権利義務の帰属主体であることを要し、法人の組織の一部にすぎないものはこれに当たらない。もっとも、不当労働行為救済制度の趣旨から、法人の一部を名宛人とする救済命令は、実質的に当該法人を名宛人として内容の実現を義務付ける趣旨と解する。 2. 救済命令が一定の履行猶予期間と掲示期間を定めて謝罪文掲示を命じた場合、命令書の交付により掲示義務が発生し、その義務は履行完了まで継続する。指定された掲示期間等の経過のみをもって義務が消滅し、または履行不能となるものではない。
事件番号: 昭和63(行ツ)140 / 裁判年月日: 平成3年2月22日 / 結論: 棄却
使用者に対し、陳謝文という題の下に、使用者が労働組合の組合員に対し仕事上の差別取扱いをしたことが労働委員会により不当労働行為であると認定された旨及び使用者が労働組合とその組合員に対し右不当労働行為を行つたことについて深く陳謝すると共に今後このような行為を繰り返さないことを約する旨の文言を墨書した白色木板を掲示するよう命…
重要事実
社会福祉法人B1の内部組織にすぎないB3病院に対し、労働委員会が一時金の支払いや謝罪文の掲示(受領後1週間以内に10日間掲示)を命じる救済命令(初審命令)を発した。B1はこれに対する再審査命令の取消訴訟を提起したが、原審は、(1)B3病院を名宛人とする部分についてB1に取消しの法律上の利益はないとし、(2)謝罪文掲示命令については期間経過により履行不能となり訴えの利益が消滅したとして、訴えを却下した。
あてはめ
1. B3病院はB1の支部の一施設にすぎず権利能力を欠くため、労組法上の「使用者」には当たらない。しかし、B1とB3病院は全体と部分の関係にあり、本件命令は実質的にB1に対し義務を課す趣旨と解される。したがって、B1は表示上の名宛人が病院であっても、自己に対する命令として取消しを求める法律上の利益を有する。 2. 謝罪文掲示命令の「1週間以内」は履行猶予期間、「10日間」は継続期間の指定にすぎない。期間が経過しても掲示義務自体は消滅せず、依然として強制され得る状態にある。したがって、期間経過により履行不能になったとはいえず、B1には依然として回復すべき法律上の利益が存する。
結論
B1は本件再審査命令全体につき取消しを求める法律上の利益を有する。原審の判断を破棄し、東京高裁に差し戻す。
実務上の射程
1. 救済命令の名宛人が誤っている場合でも、実質的な帰属主体である法人等に原告適格を広く認める基準として活用できる。 2. 謝罪文掲示(ポスト・ノーティス)命令の訴えの利益に関するリーディングケースであり、期間経過による「狭義の訴えの利益」の消滅を否定する文脈で引用すべき判例である。
事件番号: 昭和60(行ツ)1 / 裁判年月日: 昭和63年7月19日 / 結論: 棄却
労働組合が、組合活動のため使用者の施設を自由に使用することができるとの見解のもとに、従業員食堂の使用につき使用者と真摯な協議を尽くさず、使用者の許諾を得ないまま実力を行使してこれを使用し続けてきた場合において、使用者が、労働組合からの従業員食堂の使用申入れを許諾しなかつたこと、また、許諾のないまま従業員食堂において開か…
事件番号: 昭和61(行ツ)56 / 裁判年月日: 平成元年1月19日 / 結論: 棄却
使用者がその企業内に併存する甲乙二つの労働組合との間の組合掲示板貸与に関する交渉に当たり、両組合に対して同一の貸与条件を提示し、これを受け入れた甲組合に対しては組合掲示板を貸与し、これを拒否した乙組合に対してはその貸与を拒否した場合において、乙組合に対して組合掲示板の貸与を拒否した使用者の行為は、右貸与条件の内容が、掲…
事件番号: 平成22(行ヒ)46 / 裁判年月日: 平成24年4月27日 / 結論: 破棄差戻
所有する船舶の一部につき船舶運航代理業者を傭船者とする裸傭船契約と自らを傭船者とする定期傭船契約を締結するとともに労働協約の更新を拒否するなどした使用者の行為が不当労働行為に当たるとの労働組合からの申立てを受けた労働委員会が,当該使用者に対し,(1)上記各契約に係る船舶を自らの運航業務に使用する場合は当該労働組合の組合…
事件番号: 昭和55(行ツ)40 / 裁判年月日: 昭和61年1月24日 / 結論: 棄却
相前後して結成された甲乙二つの労働組合が併存する会社において、各組合結成直前の年度の賞与においては後に甲乙各組合員となつた者らの平均人事考課率にほとんど差異がなかつたのに、各組合結成直後の年度の賞与においては甲組合員の人事考課率が乙組合員らのそれと比較して低く査定されその間に全体として顕著な差異が生じており、また、甲組…