代物弁済予約形式の債権担保契約を締結した債権者が、その担保目的を実現するにあたって、後順位債権者に優先して弁済を受けうる利息・損害金については、民法三七四条の規定は準用されないと解すべきである。
代物弁済予約形式の債権担保契約と民法三七四条の準用の有無
民法482条,民法374条
判旨
債権担保を目的とする代物弁済予約に基づく清算において、先順位者は民法374条の準用を受けず、最後の2年分を超える利息・遅延損害金についても後順位仮登記権利者に優先して弁済を受けることができる。また、後順位者が請求できる清算金は、元本および口頭弁論終結時までの利息・損害金に限られる。
問題の所在(論点)
債権担保目的の代物弁済予約に基づき所有権を取得する場合の清算において、先順位者が優先弁済を受けられる利息・遅延損害金の範囲について、民法374条(抵当権の利息等の制限)が準用されるか。
規範
1. 債権担保を目的とする代物弁済予約においては、抵当権の利息等に関する制限を定めた民法374条は準用されない。したがって、予約完結権を行使した者は、元本のみならず、口頭弁論終結時までの全期間の利息・遅延損害金について後順位権利者に優先して弁済(清算)を受けることができる。 2. 後順位権利者が清算金として請求できる遅延損害金の範囲は、口頭弁論終結時までに発生したものに限定される。
重要事実
債務者Dは、上告人(第1順位)から20万円を借り入れ、本件建物に抵当権設定および代物弁済予約の仮登記を了した。その後、Dは被上告人(第2順位)とも代物弁済予約をなし、仮登記がなされた。さらに上告人は、追加融資を含む計150万円の債権に基づきDと代物弁済契約を締結し、本登記を了した。被上告人は、上告人が優先弁済を受けられるのは民法374条により直近2年分の損害金に限られると主張し、自己の債権額を含む清算金の支払との引換給付を求めた。
事件番号: 昭和63(オ)357 / 裁判年月日: 平成2年6月5日 / 結論: 破棄自判
売買予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記の経由された不動産につき抵当権の設定を受け、その登記を経由した者は、予約完結権の消滅時効を援用することができる。
あてはめ
代物弁済予約は金銭債権の担保を目的とするものであるが、抵当権とは異なり、民法374条を準用して優先弁済の範囲を制限すべき根拠はない。本件において、上告人は第1順位の仮登記権利者として、元金20万円および口頭弁論終結時までの全期間の損害金について、第2順位の仮登記権利者である被上告人に優先して弁済を受けることができる。したがって、本件建物の価額から、上告人の全額の債権を控除した残額が、被上告人への清算金の対象となる。
結論
上告人の優先弁済範囲に制限はなく、口頭弁論終結時までの損害金を含めて清算額を算定すべきである。原審が民法374条を準用して上告人の優先額を制限した判断には、法律の解釈・適用の誤りがある。
実務上の射程
仮登記担保法制定前の判例であるが、清算金の算定における優先弁済の範囲を画定した実務上重要な意義を持つ。答案上は、仮登記担保法が適用されない事案(不動産以外の担保や同法1条の要件を欠く場合)において、民法374条の類推適用の是非を論じる際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和46(オ)503 / 裁判年月日: 昭和49年10月23日 / 結論: 破棄差戻
一、債権者が、金銭債権の満足を確保するために、債務者との間にその所有の不動産につき、代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約又は売買予約により、債務の不履行があつたときは債権者において右不動産の所有権を取得して自己の債権の満足をはかることができる旨を約し、かつ、停止条件付所有権移転又は所有権移転請求権保全の仮登記をしたと…
事件番号: 昭和35(オ)94 / 裁判年月日: 昭和37年3月13日 / 結論: 棄却
金銭消費貸借に基づく債権担保の目的のために、債務者所有の建物につき、売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記がなされた後に金銭が授受されたとしても右仮登記は有効である。
事件番号: 昭和39(オ)277 / 裁判年月日: 昭和40年4月16日 / 結論: 棄却
抵当権設定契約と併存的に債務不履行を停止条件とする代物弁済の本契約を締結する趣旨が当事者の意思表示条明確である場合には、これを代物弁済の予約と解しなければならないことはない。