清掃法一五条一項によるし尿浄化槽内汚物取扱業についての不許可処分が、その申請者において申請地域外の汚物をも取り扱つているため、他地域の汚物が申請地域の汚物処理場に持ち込まれるおそれがあり、また、申請地域の汚物の処理にはすでに許可を得ている業者だけで十分であるなど判示のような事情を考慮してされたものであるときは、それにより、従来許可を要しないとの取扱いのもとでし尿浄化槽清掃に従事していた申請者の営業実績が無に帰することになつたとしても、それだけで右不許可処分が裁量権の範囲を逸脱したものということはできない。
清掃法一五条一項によるし尿浄化槽内汚物取扱業の不許可処分が裁量権の範囲を逸脱したものでないとされた事例
清掃法3条,清掃法6条1項,清掃法15条1項
判旨
清掃法15条1項(現在の廃棄物処理法に相当)に基づく汚物取扱業の許可は、市町村の事務を代行させる性質を有し、市町村長の自由裁量に委ねられている。したがって、清掃計画の円滑な遂行や処理能力、既存業者の存在等を考慮した不許可処分は、営業実績を無に帰する場合であっても直ちに裁量権の逸脱・濫用とはならない。
問題の所在(論点)
清掃法15条1項に基づく汚物取扱業の許可が、行政庁の裁量行為に属するか。また、既存の営業実績を失わせるような不許可処分が、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法となるか。
規範
市町村長が許可を与えるか否かは、清掃法の目的と当該市町村の清掃計画に照らし、市町村の責務である汚物処理事務を円滑かつ完全に遂行するのに必要適切かという観点から決すべきであり、その意味において市町村長の自由裁量に委ねられる。
重要事実
平塚市長は、浄化槽汚物取扱業の許可を申請した被上告会社に対し、(1)他地域の汚物が市営処理場に持ち込まれる懸念、(2)自前の処理場を持たない被上告会社への監督の困難性、(3)既存の許可業者で収集能力が十分であり新規許可は無用の摩擦を生むおそれ、(4)他の汚物の無許可取扱の監督の困難性を理由に、不許可処分を行った。被上告会社の前身は、法改正前まで同地域で自由に営業を行っていた実績があった。
事件番号: 平成14(行ヒ)312 / 裁判年月日: 平成16年1月15日 / 結論: 破棄自判
1 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成15年法律第93号による改正前のもの)7条3項1号にいう「当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬」とは,当該市町村が自ら又は委託の方法により行う一般廃棄物の収集又は運搬をいい,一般廃棄物収集運搬業の許可を受けた業者が行う一般廃棄物の収集又は運搬はこれに当たらない。 2 既存の…
あてはめ
本件不許可事由のうち、市営処理場の規模に見合った適切な運用確保や、既存業者による処理能力の充足、新規参入による混乱の防止などは、いずれも市町村の汚物処理事務を円滑・完全に遂行する目的から見て必要かつ適切な考慮要素といえる。これらの事由が真実である限り、たとえ被上告会社やその代表者の過去の営業実績が無に帰することになったとしても、その一事をもって裁量権の逸脱があるとは断じられない。
結論
本件不許可処分は、市町村長の裁量権の正当な行使の範囲内にとどまり、違法ではない。
実務上の射程
許可制が市町村の事務代行の性質を持つ場合、行政庁に広範な裁量(特許に準ずる性質)を認める判断枠組みとして活用できる。特に「適正な需給調整」や「行政運営の円滑化」を理由とする不許可処分の妥当性を検討する際の指標となる。ただし、現代の廃棄物処理法下では許可基準が明確化されているため、現行法との条文構成の差異に留意が必要である。
事件番号: 平成19(行ヒ)388 / 裁判年月日: 平成21年6月5日 / 結論: 破棄差戻
浄化槽の清掃により引き出される汚泥等の収集運搬に必要な一般廃棄物収集運搬業の許可を有しない者からされた浄化槽清掃業の許可申請につき,浄化槽法(平成16年法律第147号による改正前のもの)36条2号ホ所定の欠格事由に該当することを理由として不許可処分がされた場合において,上記許可申請に係る区域内では浄化槽の清掃と上記汚泥…
事件番号: 平成4(行ツ)122 / 裁判年月日: 平成5年9月21日 / 結論: 棄却
浄化槽清掃業の許可申請者が、浄化槽の清掃により生ずる汚泥等の収集、運搬につき、これに必要な一般廃棄物処理業の許可を有せず、また、他の一般廃棄物処理業者に業務委託すること等により適切に処理する方法も有していない場合には、右許可申請者は、浄化槽法(平成三年法律第九五号による改正前のもの)三六条二号ホの浄化槽清掃業の業務に関…