児童扶養手当法4条1項5号の委任に基づき児童扶養手当の支給対象児童を定める児童扶養手当法施行令(平成10年政令第224号による改正前のもの)1条の2第3号のうち,「母が婚姻(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)によらないで懐胎した児童」から「父から認知された児童」を除外している括弧書部分は,同法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効である。 (反対意見がある。)
児童扶養手当法施行令(平成10年政令第224号による改正前のもの)1条の2第3号の「(父から認知された児童を除く。)」とする部分の法適合性
児童扶養手当法4条1項,児童扶養手当法施行令(平成10年政令第224号による改正前のもの)1条の2第3号
判旨
児童扶養手当法施行令1条の2第3号が、父から認知された婚姻外懐胎児童を支給対象から除外した部分は、法の委任の趣旨に反し無効である。父による現実の扶養を期待できない状態にある限り、法律上の父の出現(認知)のみをもって受給資格を喪失させることは、法の目的に照らし合理性を欠くためである。
問題の所在(論点)
児童扶養手当法施行令1条の2第3号の「父から認知された児童を除く」という規定が、母子家庭の自立促進という児童扶養手当法の目的及び委任の範囲を逸脱し、無効ではないか。具体的には、認知によって法律上の父が出現したことが、支給を打ち切る合理的理由になるか。
規範
児童扶養手当法4条1項5号の委任の範囲は、法の趣旨・目的(父と生計を異にする児童の福祉増進)や、同項各号が支給対象を類型化した趣旨(実質的な父の扶養が期待できない状態の重視)に照らして解釈すべきである。法律上の父が存在するに至ったとしても、世帯の生計維持者としての父による現実の扶養を期待できない状態が継続している場合に、これを支給対象から除外することは、法の委任の範囲を逸脱し無効となる。
重要事実
事件番号: 平成12(行ツ)250 / 裁判年月日: 平成14年2月22日 / 結論: 破棄自判
児童扶養手当法4条1項5号の委任に基づき児童扶養手当の支給対象児童を定める児童扶養手当法施行令(平成10年政令第224号による改正前のもの)1条の2第3号のうち,「母が婚姻(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)によらないで懐胎した児童」から「父から認知された児童」を除外している括弧書部…
婚姻によらず子を懐胎・出産した上告人は、児童扶養手当の支給を受けていたが、子がその父から認知された。これを受け、処分庁(被上告人)は、当時の施行令1条の2第3号の規定(「父から認知された児童を除く」との括弧書)に基づき、受給資格喪失処分を行ったため、上告人がその取消しを求めて提訴した。
あてはめ
法4条1項各号は、単なる法律上の父の存否ではなく、世帯の生計維持者としての父の扶養が期待できない状態を類型化している。婚姻外懐胎児童は、父から認知されても直ちに母との婚姻関係が生じるわけではなく、通常、父による現実の扶養を期待できるともいえない。したがって、認知された婚姻外懐胎児童も、依然として法4条1項1号ないし4号に準ずる状態にある。これを除外する本件施行令の括弧書は、認知されていない婚姻外懐胎児童や事実上の婚姻関係解消後の児童(認知されても受給資格を失わない)との間で著しい均衡を欠き、法の目的・趣旨に反する。
結論
本件施行令の括弧書部分は法の委任の範囲を逸脱し無効である。よって、これを根拠になされた本件受給資格喪失処分は違法であり、取り消されるべきである。
実務上の射程
委任立法の限界に関する重要判例。社会保障分野において行政に広範な裁量が認められる場合であっても、法の目的や類型的均衡に照らして合理性を欠く除外規定は無効となる。答案では、政令が法の趣旨に反して受給要件を不当に狭めている場合に、本判例の論法を用いて委任逸脱・無効を主張する。
事件番号: 昭和51(行ツ)30 / 裁判年月日: 昭和57年7月7日 / 結論: 棄却
一 児童扶養手当法(昭和四八年法律第九三号による改正前のもの)四条三項三号は、憲法二五条に違反しない。 二 児童扶養手当法(昭和四八年法律第九三号による改正前のもの)四条三項三号は、憲法一四条、一三条に違反しない。
事件番号: 令和6(行ツ)54 / 裁判年月日: 令和7年6月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】児童扶養手当と障害基礎年金の併給調整において、ひとり親世帯とふたり親世帯との間で差異が生じるとしても、社会保障制度の全般的公平を図るための立法府の広い裁量権の範囲内であり、憲法25条及び14条1項に違反しない。 第1 事案の概要:ひとり親世帯である上告人が、児童扶養手当と障害基礎年金を受給していた…
事件番号: 平成29(行ヒ)292 / 裁判年月日: 平成30年12月18日 / 結論: 破棄自判
勤労収入についての適正な届出をせずに不正に保護を受けた者に対する生活保護法(平成25年法律第104号による改正前のもの)78条に基づく費用徴収額決定に係る徴収額の算定に当たり,当該勤労収入に対応する基礎控除の額に相当する額を控除しないことは,違法であるとはいえない。 基礎控除:昭和36年4月1日付け厚生事務次官通知「生…
事件番号: 平成10(行ツ)313 / 裁判年月日: 平成13年4月5日 / 結論: 棄却
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)の締結後,いわゆる在日韓国人の軍人軍属に対して援護の措置を講ずることなく戦傷病者戦没者遺族等援護法附則2項を存置していたことは,憲法14条1項に違反するということはできない。 (補足意見がある。)