殺人事件の被害者の両親が加害者とされる少年らの親権者に対して提起した損害賠償請求訴訟において、殺人行為等に関する少年らの捜査機関等に対する自白が極めて詳細かつ具体的であり、その内容が各少年とも大筋において一致し、互いに補強し補完し合うものであっても、右自白には、いわゆる秘密の暴露がなく、一部に捜査官の誤導による可能性の高い明らかな虚偽の部分が含まれ、犯行事実の中核的な部分について変遷が見られる上、自白を裏付ける客観的証拠がほとんど見られず、自白が真実を述べたものであればあってしかるべき証拠が発見されていないなど判示の事情の下においては、自白の信用性について慎重に検討することなく、右自白に依拠して少年らが殺人等の犯人であるとした原審の認定には、経験則違反の違法がある。 (意見がある。)
殺人事件の被害者の両親が加害者とされる少年らの親権者に対して提起した損害賠償請求訴訟において捜査機関等に対する自白に依拠して少年らを殺人等の犯人であるとした認定に経験則違反の違法があるとされた事例
民法709条,民訴法247条,刑訴法317条
判旨
不法行為の行為者性が少年らの自白のみに依拠する場合、その信用性は客観的証拠との整合性や、自白の変遷、捜査官による誘導の有無などを慎重に総合考慮して判断すべきである。客観的証拠に反する部分を含む自白や、中核的部分で変遷のある自白の信用性を漫然と肯定することは経験則に反し許されない。
問題の所在(論点)
不法行為に基づく損害賠償請求において、少年らの犯人性を認める根拠となった自白の信用性が認められるか。特に、客観的証拠との矛盾や自白の変遷がある場合に、自白のみで不法行為を認定できるか。
規範
直接証拠が自白のみである場合、その信用性は以下の要素を総合考慮して慎重に判断すべきである。(1)自白を裏付ける客観的証拠の有無および整合性、(2)自白に至る経過(捜査官による誤導や虚偽混入の可能性)、(3)自白内容自体の合理性・不自然な変遷の有無。いわゆる「秘密の暴露」は、自白に含まれる事項が客観的事実と一致するだけでなく、当該犯行と密接に関連することを要する。
重要事実
少年ら4名が共謀し女子中学生Dを強姦・殺害したとされる事案。第一審は犯人性を否定したが、原審は少年らの自白を信用し損害賠償請求を一部認容した。しかし、被害者の着衣や乳房から検出された精液・唾液・毛髪の血液型(AB型)は、少年ら全員の血液型(O型、B型)と矛盾し、現場や車両からも被害者や少年らの痕跡が全く発見されていなかった。また、自白内容も殺害場所や方法等の核心部分で変遷しており、一部は客観的事実に反していた。
あてはめ
少年らの自白には「秘密の暴露」がない。コンドームの窃取事実は犯行自体の裏付けとはいえず、ビデオ録画の事実も犯行と直接関連しない。また、乳房の付着物(AB型)を、専門家の証言を無視して「理論的可能性」のみで少年らの血液型と矛盾しないとした原審の判断は合理性を欠く。さらに、強姦の態様や殺害場所等の核心部分で少年らの自白が同調して変遷しており、捜査官による誤導の疑いが強い。客観的痕跡が皆無であることも自白の信用性を著しく減殺させる。
結論
自白の信用性を肯定した原審の判断には、経験則に反する違法がある。原判決を破棄し、少年らの犯人性を再審理させるため、本件を原審(東京高裁)に差し戻す。
実務上の射程
民事訴訟においても、犯人性が争点となる場合には刑事訴訟に準ずる厳格な証拠評価が求められる。特に自白の信用性判断において、客観的証拠との不一致を「可能性」のみで排除することや、秘密の暴露の定義を安易に拡張することを禁じた点で、答案上の事実認定の規範として重要である。
事件番号: 昭和27(オ)1223 / 裁判年月日: 昭和29年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法722条2項の過失相殺において、裁判所は被害者本人に過失がないと認められる場合には、同条を適用しないことができる。また、第三者作成の私文書の成立について、裁判所は相手方の認否を待たず、自由な心証によってその成立を認定し得る。 第1 事案の概要:本件は損害賠償請求事件であり、被害者Dその他の者に…