建物賃貸借契約継続中に賃借人が賃貸人に対し敷金返還請求権の存在確認を求める訴えは、その内容が右賃貸借契約終了後建物の明渡しがされた時においてそれまでに生じた敷金の被担保債権を控除しなお残額があることを条件とする権利の確認を求めるものであり、賃貸人が賃借人の敷金交付の事実を争って敷金返還義務を負わないと主張しているときは、確認の利益がある。
建物賃貸借契約継続中に賃借人が賃貸人に対し敷金返還請求権の存在確認を求める訴えにつき確認の利益があるとされた事例
民訴法134条,民法619条2項
判旨
建物賃貸借契約の継続中であっても、敷金返還請求権は停止条件付きの権利として現在の法律関係に当たり、賃貸人が交付の事実を争う場合には確認の利益が認められる。
問題の所在(論点)
建物賃貸借契約が継続しており、敷金返還請求権が未だ発生(現実化)していない段階において、当該請求権の存在確認を求める訴えに確認の利益(特に対象適格と即時確定の利益)が認められるか。
規範
確認の訴えが適法であるためには、①対象が「現在の権利又は法律関係」であること、および②原告の権利または法的地位に現存する不安・危険を除去するために当該確認判決を得ることが有効かつ適切であること(即時確定の利益)を要する。敷金返還請求権は、賃貸借終了・建物明渡しを停止条件とする条件付きの権利として、賃貸借の継続中であっても現在の権利として対象適格性を有し、かつ、賃貸人が交付の事実そのものを争っている場合には、その存否を確定させることで法的地位の不安を除去できるため、即時確定の利益が認められる。
重要事実
賃借人(被上告人)は、前賃貸人との間で締結した建物賃貸借契約の継続中に、前賃貸人から賃貸人の地位を承継した新賃貸人(上告人)に対し、保証金名目で交付した敷金の返還請求権の存在確認を求めて提訴した。これに対し、上告人は前賃貸人に対する敷金交付の事実を否認し、敷金返還義務を負わないと主張して争った。
事件番号: 平成7(オ)1705 / 裁判年月日: 平成11年3月25日 / 結論: 棄却
自己の所有建物を他に賃貸して引き渡した者が右建物の所有権を第三者に移転した場合に、新旧所有者間において賃貸人の地位を旧所有者に留保する旨を合意したとしても、これをもって直ちに賃貸人の地位の新所有者への移転を妨げるべき特段の事情があるものということはできない。 (反対意見がある。)
あてはめ
敷金返還請求権は、建物明渡し時に被担保債権を控除した残額につき発生するものであるが、賃貸借継続中も「条件付きの権利」として存在するといえる。したがって、これは過去または将来の法律関係ではなく「現在の権利又は法律関係」に該当し、対象適格を備える。また、上告人は敷金の交付事実そのものを否認して返還義務を争っている。この場合、賃借人にとっては将来の返還が不確実な状況にあり、現段階で条件付き権利の存否を確定させることは、賃借人の法的地位に生じている不安を除去するために有効かつ適切である。よって、即時確定の利益も認められる。
結論
本件確認の訴えには確認の利益が認められ、適法である。
実務上の射程
本判決は、停止条件付権利であっても、その基礎となる法的関係が存在し、相手方がその根拠事実を争っている場合には、現在の権利として確認の訴えの対象になり得ることを示した。実務上は、敷金の承継を争う新オーナーに対する対抗手段として、契約継続中でも確認の訴えが可能であることを論証する際の根拠となる。
事件番号: 昭和44(オ)500 / 裁判年月日: 昭和44年9月11日 / 結論: 棄却
一、控訴審判決の主文において物件を表示するにつき第一審判決に掲げる物件の表示を引用することは許される。 二、賃借権存在確認の訴において、原告が確定を求めていない賃料額、存続期間または契約の成立年月日を主文に掲記することは必要でない。
事件番号: 昭和43(オ)1147 / 裁判年月日: 昭和44年6月17日 / 結論: 棄却
甲所有の従前地につき換地処分がされたときは、換地は右換地処分の公告の日の翌日から従前地とみなされ、甲は換地につき所有権を取得し、右換地につき乙が所有権を有していたとしても、これに対しなんらの換地処分等がされないときにおいては、右公告の日の翌日以後は、右換地につき乙の所有権を認めることはできない。
事件番号: 昭和47(オ)110 / 裁判年月日: 昭和48年2月27日 / 結論: 棄却
甲と乙銀行との間において、乙が甲に金員を貸し付け、これと同時に、甲は乙に対し右金員と同額の定期預金をする旨約され、右金員の各占有の移転が占有改定と簡易の引渡によつてなされ、しかも、右各契約がなされたと同じ日に、乙から甲に対し定期預金証書が交付されたという事実関係のもとにおいては、右消費貸借契約の要物性は充足されたものと…