一 構成員に会社を含む共同企業体の各構成員は、共同企業体がその事業のために第三者に対して負担した債務につき連帯債務を負う。 二 連帯債務関係が発生した後に連帯債務者の一人が和議開始の申立てをした場合において、右申立てを知って和議開始決定前の弁済により求償権を取得した他の連帯債務者は、右求償権をもって和議債務者の債権と相殺することができる。 三 連帯債務者の一人について和議認可決定が確定した場合において、和議開始決定後の弁済により求償権を取得した他の連帯債務者は、債権者が全額の弁済を受けたときに限り、右弁済によって取得する債権者の和議債権(和議条件により変更されたもの)の限度で右求償権をもって和議債務者の債権と相殺することができる。
一 構成員に会社を含む共同企業体の債務と各構成員の連帯債務関係 二 和議開始の申立てをした連帯債務者の一人に対し他の連帯債務者が右申立てを知って和議開始決定前の弁済により取得した求償権をもって相殺することの可否 三 和議認可決定を受けた連帯債務者の一人に対し他の連帯債務者が和議開始決定後の弁済により取得した求償権をもってする相殺の要件及び限度
民法442条,民法501条,民法675条,商法511条1項,和議法5条,和議法45条,和議法57条,破産法24条,破産法26条,破産法104条,破産法326条
判旨
共同企業体の構成員が会社である場合、その債務は商法上の連帯債務となり、和議(現・再生)開始後の弁済による求償権であっても、原因が開始前であれば相殺が可能である。
問題の所在(論点)
共同企業体の構成員が会社である場合に各員が負う債務の性質、および和議(再生)手続開始の申立てを知った後の弁済によって取得した求償権が「申立て前の原因」に基づく債権として相殺の自働債権となり得るか。
規範
1. 共同企業体の構成員が会社である場合、その事業のために負担した債務は構成員の附属的商行為によるものといえ、構成員各員は商法511条1項に基づき連帯債務を負う。 2. 和議(再生)手続において、開始の申立てを知った後に取得した債権による相殺は原則禁止されるが、その取得が「申立て前の原因」に基づく場合は許容される(旧和議法5条、旧破産法104条4号等)。連帯債務関係が申立て前に発生していれば、その後の弁済による求償権取得は「申立て前の原因」に基づくものと解される。
重要事実
会社である上告人と被上告人は共同企業体を結成し、病院工事を請け負った(負担割合各1/2)。被上告人の脱退後、被上告人が和議開始を申し立て、上告人はその事実を知った。上告人は、申立て前後の期間にわたり、本件共同企業体が下請業者に対して負っていた債務(被上告人が脱退前に負担したもの)を代わって弁済した。上告人は、被上告人からの請負代金請求に対し、右弁済に基づく求償権を自働債権として相殺を主張した。
あてはめ
1. 上告人と被上告人は建築工事を目的とする会社であり、本件工事費用の負担は商行為に該当するため、下請債務につき連帯債務を負う。したがって、上告人は弁済により当然に求償権を取得する。 2. 本件の求償権は、被上告人の和議申立て時点ですでに存在していた連帯債務関係から派生したものである。そうであれば、実際の弁済が申立てを知った後であっても、求償権発生の基礎となる法的原因は申立て前に具備されていたといえる。このような相殺を認めても債権者間の公平を害さず、禁止規定の趣旨に反しない。
結論
上告人の求償権は「申立て前の原因」に基づくものとして相殺の自働債権となり得るが、和議認可決定による権利変更の効果を受けるため、その限度で相殺が可能となる。原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
倒産手続における相殺禁止の例外(前の原因)を具体化した重要判例である。答案上は、まず商法511条による連帯債務の成立を導き、次いで民事再生法93条2項1号(旧破産法104条4号相当)の「原因」を「発生の基礎となる法的関係」と解釈して、連帯債務成立時を基準とする論理を展開する際に用いる。
事件番号: 平成3(オ)491 / 裁判年月日: 平成7年1月20日 / 結論: 破棄差戻
連帯保証人の一人について和議認可決定が確定した場合に、和議開始決定後の弁済により右連帯保証人に対して求償権を取得した他の連帯保証人は、債権者が債権全部の弁済を受けたときに限り、右弁済による代位によって取得する債権者の和議債権(和議条件により変更されたもの)の限度で右求償権を行使することができる。