株式会社の債権者が会社に対し、その整理開始前に停止条件付債務を負担した場合でも、整理開始後に条件が成就したときは、整理開始後に債務を負担したものとして、商法四〇三条一項、破産法一〇四条一号により相殺が禁止される。
株式会社に対しその整理開始前に負担した停止条件付債務の条件が整理開始後に成就したときと商法四〇三条一項、破産法一〇四条一号
商法403条1項,破産法104条1号
判旨
会社整理(現:会社更生・民事再生等)において、債権者が整理開始後に債務を負担した場合の相殺禁止の規定は、債務を現実に負担した時期を基準とする。停止条件付債務を内容とする契約が開始前に締結されていても、開始後に条件が成就した場合は「開始後に債務を負担したとき」に該当し、相殺は許されない。
問題の所在(論点)
手続開始前に締結された停止条件付契約に基づき、開始後に条件が成就して発生した債務を、手続開始後の債務負担として相殺禁止の対象(旧破産法104条1号準用)とすべきか。
規範
旧破産法104条1号(現:破産法71条1項1号、民事再生法93条1項1号等)が、整理開始(手続開始)後に債務を負担した債権者による相殺を禁止する趣旨は、債権者間の平等的比例弁済の原則に反する弊害を防止する点にある。この「債務を負担したとき」とは、原因の発生時期にかかわらず、債務を現実に負担するに至った時期を指す。したがって、停止条件付債務の場合、契約締結が開始前であっても、条件成就が開始後であれば「開始後に債務を負担したもの」と解すべきである。
重要事実
上告人は被上告人に対し貸金債権を有し、その担保として被上告人所有物件に譲渡担保権を設定した。契約上、債務不履行時には物件を処分し、剰余金があれば被上告人に返還する旨(停止条件付債務)が約定されていた。被上告人は支払を停止し、昭和40年7月7日に会社整理開始決定を受けた。上告人は開始後の同年8月15日に物件を換価処分し、発生した剰余金返還債務(受働債権)と、自らの手形金債権(自働債権)を相殺すると主張した。
あてはめ
本件の剰余金返還債務は、譲渡担保物件の換価清算による剰余金の発生を停止条件とする契約に基づいている。右契約自体は整理開始決定前に成立していたが、条件成就前には具体的な返還債務は発生していない。現実に債務を負担したのは、開始決定後の換価処分により条件が成就した時点である。これは「整理開始後に債務を負担したとき」に該当し、債権者間の公平を害する相殺として禁止される。破産法が他号で原因時期を考慮する場合があることと比較しても、本号において現実の負担時期を基準とすることは正当である。
結論
上告人の相殺は許されない。剰余金返還債務の負担時期が整理開始後である以上、旧商法403条1項が準用する旧破産法104条1号により相殺は禁止される。
実務上の射程
現行の破産法71条1項1号、民事再生法93条1項1号、会社更生法48条1項1号の解釈において直接的な射程を有する。契約等の原因が開始前に存在しても、条件成就や清算などの事由により現実に債務が成立したのが開始後であれば、相殺禁止の網にかかることを示す実務上重要な判断である。
事件番号: 昭和55(オ)632 / 裁判年月日: 昭和56年10月13日 / 結論: 棄却
保管金規則(明治二三年法律第一号)一条は、保管金に対する権利行使についての除斥期間を定めたものである。