離婚請求訴訟において請求を放棄することは許される。
離婚請求訴訟における請求の放棄の許否
民訴法203条,人事訴訟手続法10条
判旨
離婚請求訴訟において、原告が請求を放棄することは許され、これによって当該訴訟は終了する。また、離婚請求の認容を条件とする予備的な財産分与の申立ては、離婚請求の放棄によって当然に失効する。
問題の所在(論点)
離婚請求訴訟において、原告が請求を放棄することが認められるか。また、請求の放棄が認められる場合、離婚請求の認容を条件として予備的に申し立てられた財産分与の申立ての効力はどうなるか。
規範
離婚請求訴訟において請求の放棄は許される。なぜなら、①これを禁止する明文の規定がないことに加え、②婚姻を維持する方向(請求棄却と実質的に同等)での当事者による権利の処分を禁じるべき格別の必要性も認められないからである。この場合、離婚請求の認容を条件とする予備的財産分与の申立ては、前提となる離婚請求が消滅することにより当然に失効する。
重要事実
上告人(夫)が被上告人(妻)に対し離婚を求めて提訴した。被上告人は、離婚請求が認容されることを条件として予備的に財産分与を申し立てた。第一審は離婚請求を認容し財産分与を命じたが、上告人が控訴し、原審の口頭弁論期日において離婚請求を放棄する旨の陳述をした。これに対し原審は、人事訴訟手続法10条(当時)を準用し、婚姻事件において請求の放棄は許されないとして、上告人の控訴を棄却した。
あてはめ
本件では、上告人が原審において離婚請求を放棄する旨の意思表示をしている。離婚請求の放棄は婚姻関係を維持させるものであり、公益に反せず許容される。したがって、この放棄により離婚請求訴訟は当然に終了する。さらに、被上告人の財産分与申立ては離婚請求の認容を停止条件とする予備的なものであるから、離婚請求が放棄によって消滅した以上、当該財産分与申立てはその前提を欠き、当然に失効したものと評価される。
結論
離婚請求の放棄は有効であり、本件訴訟は放棄により終了した。原審が放棄を認めず離婚及び財産分与を維持した判断には法令の解釈適用の誤りがあるため、破棄を免れない。
実務上の射程
人訴法における処分権主義の修正の限界を示す重要判決。現在は人事訴訟法19条1項が「請求の放棄又は認諾」について、公序良俗に反しない限り認める旨を明文化しており、本判決の法理は現行法下でも維持されている。答案上は、人事訴訟であっても「婚姻の維持」という結論を導く処分については当事者の合理的意思を尊重すべきという文脈で使用する。
事件番号: 平成2(オ)695 / 裁判年月日: 平成2年7月20日 / 結論: 棄却
離婚訴訟において、財産分与を命じた判決に対して控訴の申立てがされた場合、財産分与に関する裁判については、いわゆる不利益変更禁止の原則の適用はない。
事件番号: 平成14(受)505 / 裁判年月日: 平成16年6月3日 / 結論: 破棄差戻
1 離婚の訴えの原因である事実によって生じた損害賠償請求の反訴の提起及び離婚の訴えに附帯してする財産分与の申立てについては,控訴審においても,相手方の同意を要しない。 2 原審の口頭弁論の終結に至るまでに離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合において,上訴審が,原審の判断のうち財産分与の申立てに係る部分について…