組合員が存在しなくなったことなどにより労働組合が自然消滅した場合には、その組合が清算法人として存続していたとしても、使用者に対し右組合への金員の支払を命じていた救済命令の拘束力は失われ、その結果、右命令の取消しを求める訴えの利益は失われる。
労働組合が自然消滅した場合におけるその組合への金員の支払を命じていた救済命令の拘束力の消長と右命令の取消しを求める訴えの利益
労働組合法27条4項,労働組合法27条6項,労働委員会規則45条1項,行政事件訴訟法9条,民法73条
判旨
労働組合への金員支払を命ずる救済命令は、当該組合が自然消滅して組合活動を行う団体として存続しなくなった場合、法人格が清算法人として存続していても、その拘束力を失う。したがって、当該命令の取消しを求める訴えは、訴えの利益を欠き却下されるべきである。
問題の所在(論点)
労働組合が自然消滅し、清算法人としてのみ存続する場合において、当該組合への金員支払を命じた救済命令の拘束力は維持されるか。また、その取消しを求める訴えの利益が認められるか。
規範
救済命令は不当労働行為による侵害状態を是正し正常な状態を回復するための公法上の義務を課すものであり、労働組合に私法上の請求権を取得させるものではない。そのため、組合が活動主体として消滅した後は、支払を履行させても救済の目的を達し得ず、清算法人は支払を受ける適格を欠く。この場合、命令の拘束力は失われ、使用者による取消訴訟の提起は訴えの利益(行政事件訴訟法9条1項)を欠くに至る。
重要事実
労働組合D支部は法人格を取得していたが、組合員全員の脱退および工場の譲渡に伴い、組合活動が不可能な状態となり自然消滅した。労働委員会は、消滅前の不当労働行為に対し、控除した組合費相当額等をD支部に支払うよう会社に命じていた。会社側は救済命令の取消しを求めて提訴したが、原審はD支部が清算目的の範囲内で存続しているとして訴えを適法とし、請求を棄却した。
事件番号: 平成4(行ツ)120 / 裁判年月日: 平成7年2月23日
【結論(判旨の要点)】不当労働行為救済命令で労働組合への金員支払が命じられた際、当該組合が自然消滅して活動実体を失った場合には、命令の拘束力は失われ、その取消しを求める訴えは訴えの利益を欠き却下される。救済命令は公法上の義務を課すものであり、組合に私法上の請求権を与えるものではないため、清算法人として存続していても支払…
あてはめ
D支部は組合員が皆無となり自然消滅しているため、もはや不当労働行為による侵害状態を是正すべき活動主体が存在しない。清算法人として存続していても、救済命令に基づく金員の受領は清算目的の範囲内とはいえず、受領適格を欠く。救済命令は実質的な意味を失い、使用者に対する拘束力も消滅していると解される。拘束力のない命令の取消しを求めることは、現状の回復に資さず、訴えの利益が認められない。
結論
救済命令の拘束力は失われており、その取消しを求める訴えは法律上の利益を欠くため、却下すべきである。
実務上の射程
救済命令の目的が「労使関係の正常化」にあることを強調する。組合が解散・消滅した場合に、給付内容が性質上存続し得るか(金銭等)を問わず、救済制度の公法的性格から、相手方の消滅は命令の効力自体を失わせる事情となる。訴えの利益の消滅事由として答案で活用できる。
事件番号: 平成22(行ヒ)46 / 裁判年月日: 平成24年4月27日 / 結論: 破棄差戻
所有する船舶の一部につき船舶運航代理業者を傭船者とする裸傭船契約と自らを傭船者とする定期傭船契約を締結するとともに労働協約の更新を拒否するなどした使用者の行為が不当労働行為に当たるとの労働組合からの申立てを受けた労働委員会が,当該使用者に対し,(1)上記各契約に係る船舶を自らの運航業務に使用する場合は当該労働組合の組合…
事件番号: 平成4(行ツ)119 / 裁判年月日: 平成7年2月23日 / 結論: 却下
高等裁判所が補助参加の許否に関する裁判を判決の形式で行った場合には、右判決に対する上告についての最高裁判所の審理の対象は、民訴法四一九条ノ二所定の抗告理由の有無の範囲に限られる。
事件番号: 昭和56(行ツ)205 / 裁判年月日: 昭和60年7月19日 / 結論: その他
一 法律上独立した権利義務の帰属主体でない法人組織の構成部分は、労働組合法二七条及び七条所定の使用者に当たらない。 二 法律上独立した権利義務の帰属主体でない法人組織の構成部分を名宛人とする救済命令は、当該法人に対し命令の内容を実現することを義務付けるものとして、効力を有する。 三 法律上独立した権利義務の帰属主体でな…
事件番号: 平成3(行ツ)91 / 裁判年月日: 平成7年2月23日 / 結論: その他
甲労働組合の内部抗争によりそれぞれ甲組合と同一名称を名乗る乙組合と丙組合とが併存するに至った後に、使用者が、甲組合とのいわゆるチェック・オフ協定に基づき、乙組合の組合員から組合費のチェック・オフを行い、これを丙組合に交付したことが不当労働行為に当たる場合であっても、右組合費相当額を、組合員個人に対してではなく、乙組合に…