工場抵当法三条に規定する物件につき抵当権の効力を第三者に対抗するには、右物件が同条の目録に記載されていることを要する。
工場抵当法三条の抵当物件目録の記載と対抗要件
工場抵当法3条,工場抵当法35条,民法177条
判旨
工場抵当権の効力が工場に備え付けた機械器具等の供用物件(工場抵当法2条)に及ぶ場合、当該物件が抵当不動産の従物に当たるか否かを問わず、その効力を第三者に対抗するには同法3条所定の目録への記載を要する。
問題の所在(論点)
工場抵当権の効力が及ぶ「供用物件」(工場抵当法2条)について、その効力を第三者に対抗するためには、当該物件が抵当不動産の従物に該当する場合であっても、同法3条1項の目録への記載が必要か。
規範
工場抵当法3条1項が供用物件の目録(三条目録)の提出を規定し、同条2項が当該目録を登記の一部とみなしている趣旨は、当該物件が従物に当たるか否かという困難な判断を回避し、抵当権の実行手続を簡明にすることにある。したがって、工場抵当権者が供用物件につき第三者に対して抵当権の効力を対抗するには、当該物件が従物に当たるか否かを問わず、一律に三条目録に記載されていることを要する(対抗要件)。
重要事実
1. 建物所有者Dは、工場である本件建物につき、被上告人(1番根抵当権者)および上告人(2番抵当権者)のために各設定登記を経由した。2. 被上告人の登記には工場抵当法3条の目録が提出されていなかったが、上告人の登記には同目録が提出され、本件物件(ミキサー、ベルトコンベアー等8点)が記載されていた。3. 本件物件は、建物の外壁や床にボルト等で固定されており、生コンクリート製造の用に供される機械器具であった。4. 競売による配当手続において、目録記載のある後順位の上告人が、目録記載のない先順位の被上告人に優先して配当を受けるべきかが争われた。
あてはめ
1. 本件物件(ミキサー、計量器等)は、本件建物等と共に生コンクリート製造の用に供されており、工場抵当法2条所定の「供用物件」に該当する。2. 被上告人は本件建物につき順位1番の登記を備えているが、本件物件については三条目録を提出していない。3. 三条目録の記載は、従物該当性を問わず対抗要件として機能するため、目録に記載のない被上告人は、たとえ先順位の建物抵当権者であっても、本件物件については対抗力を有しない。4. 他方、後順位の上告人は三条目録に本件物件を記載しているため、本件物件の売却代金について被上告人に優先して配当を受けることができる。
結論
工場抵当法3条1項の目録に記載がない限り、供用物件への抵当権の効力を第三者に対抗できない。したがって、目録を提出した上告人が、目録のない先順位の被上告人に優先する。
実務上の射程
工場抵当法が適用される事案において、民法370条の付加一体物(従物)の法理による対抗力を否定し、特別法による公示(三条目録)を優先させた点に射程がある。答案上は、通常の抵当権と異なり、工場抵当では目録の有無が対抗力の成否を決する決定的な要素となることに注意して論じる必要がある。
事件番号: 昭和60(オ)232 / 裁判年月日: 昭和62年4月2日 / 結論: 棄却
動産売買の先取特権に基づく物上代位権を有する債権者は、自ら目的債権を強制執行によつて差し押さえても、他に競合する差押債権者等がある場合は、配当要求の終期までに、担保権を証する文書を提出して、先取特権に基づく配当要求又はこれに準ずる先取特権行使の申出をしなければ、優先弁済を受けることができない。