東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和四四年東京都条例第五五号)の議員定数配分規定は、平成元年七月二日施行の東京都議会議員選挙当時、公職選挙法一五条七項に違反していたものである。
東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和四四年東京都条例第五五号)の議員定数配分規定の適法性
東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)3条,公職選挙法15条7項
判旨
地方公共団体の議員定数配分規定が、地域間の均衡を考慮しても一般的合理性を有しない程度の投票価値の不平等を生じさせている場合、合理的期間内に是正がなされない限り公職選挙法15条7項に違反する。
問題の所在(論点)
地方議会議員の定数配分規定が、投票価値の不平等により公職選挙法15条7項に違反し違法となる判断枠組み、および本件定数配分規定の適法性。
規範
憲法は、地方議会議員の選挙においても投票価値の平等を要求している。公選法15条7項はこれを受け、人口比例を最も重要かつ基本的な基準として、各選挙人の投票価値の平等を強く要求する。定数配分の不平等が、地域間の均衡を図るため通常考慮し得る諸要素を斟酌してもなお、一般的に合理性を有するものと考えられない程度に達しているときは、合理的裁量の限界を超えているものと推定される。これについて正当化すべき特別の理由がなく、かつ人口変動の状態を考慮してもなお合理的期間内に定数の是正が行われなかった場合には、当該規定は公選法15条7項に違反し違法となる。
重要事実
1989年施行の東京都議会議員選挙において、定数配分を定めた本件条例の合憲性が争われた。東京都議会は1988年に「三減四増案」による改正を行ったが、依然として選挙区間の議員1人あたりの人口較差は最大1対3.09に達していた。また、人口比定数と現定数の乖離が著しく、人口の多い選挙区の定数が少ない選挙区より少ないという「逆転現象」が52通り存在し、うち6通りは2人の差がある顕著なものであった。都議会は長期間にわたり部分的な改正に終始し、根本的な是正を放置していた。
あてはめ
最大1対3.09の較差、多数の逆転現象、人口比定数との大幅な乖離は、地域間の均衡を考慮しても一般的合理性を有する程度を超えている。昼間人口の増加や行政需要等の事情を考慮しても正当化する特別の理由はない。また、1970年の国勢調査以降、較差が平等の要求に反する程度に達していたことが判明していたにもかかわらず、都議会は部分的な改正に留まり抜本的な是正を長期間放置した。したがって、人口変動を考慮してもなお、定数の是正が合理的期間内に行われなかったものと認められる。
結論
本件定数配分規定は、本件選挙当時、公選法15条7項に違反し違法である。
実務上の射程
地方議会の議員定数に関する「合理的期間」の法理を確立した重要判例である。国政選挙の定数訴訟と同様の枠組み(較差の程度、正当化理由、合理的期間)を用いるが、地方議会については公選法15条7項の「人口比例原則」がより直接的な法的拘束力を持つ点に留意する。答案では、具体的な較差の数値や逆転現象の有無、是正に向けた議会の取り組みの有無を「合理的期間」のあてはめで強調する。
事件番号: 昭和59(行ツ)324 / 裁判年月日: 昭和60年10月31日 / 結論: 棄却
千葉県議会議員の選挙区等に関する条例(昭和四九年千葉県条例第五五号)の議員定数配分規定は、昭和五八年四月一〇日の千葉県議会議員選挙当時、公職選挙法一五条七項に違反していたものである。