一 共同抵当の目的とされた不動産の全部又は一部の売買契約が詐害行為に該当する場合において、詐害行為の後に弁済によって右抵当権が消滅したときは、詐害行為の目的不動産の価額から右不動産が負担すべき右抵当権の被担保債権の額を控除した残額の限度で右売買契約を取り消し、その価格による賠償を命ずるべきである。 二 共同抵当の目的とされた不動産の全部又は一部の売買契約が詐害行為に該当する場合に右抵当権が消滅したときにおける価格賠償の額は、詐害行為の目的不動産の価額から、共同抵当の目的とされた各不動産の価額に応じて抵当権の被担保債権額を案分して詐害行為の目的不動産について得られた額を控除した額である。
一 共同抵当の目的とされた不動産の売買契約が詐害行為に該当する場合に抵当権が消滅したときの取消しの範囲及び原状回復の方法 二 共同抵当の目的とされた不動産の売買契約が詐害行為に該当する場合に抵当権が消滅したときの価格賠償の額
民法392条,民法424条
判旨
共同抵当権が設定された不動産が譲渡され、その後に抵当権が消滅した場合、詐害行為取消権の行使は不動産の価額から抵当権の被担保債権額を控除した残額の限度で価格賠償を認めるべきである。その際、控除すべき額は、共同抵当の目的とされた各不動産の価額に応じて案分した額(割り付け額)によるべきである。
問題の所在(論点)
共同抵当権が設定されていた不動産の一部が譲渡され、その後に抵当権が消滅した場合における、詐害行為取消権の行使の範囲(限度額)および方法(現物返還か価格賠償か)と、その際の被担保債権額の算出基準が問題となる。
規範
1. 抵当権が設定された不動産の売買が詐害行為に該当する場合において、その後に抵当権が消滅したときは、不動産自体の返還を命ずるのではなく、不動産の価額から抵当権の被担保債権額を控除した残額の限度で、取消しおよび価格賠償を命ずべきである。 2. 数個の不動産に共同抵当権が設定されている場合、上記控除額の算出においては、民法392条の趣旨に照らし、各不動産の価額に応じて被担保債権額を案分した額(割り付け額)を基準とする。
事件番号: 昭和40(オ)1498 / 裁判年月日: 昭和41年5月27日 / 結論: 棄却
債務者が、被担保債権額以下の実価を有する抵当不動産を相当な価格で売却し、その代金を当該債務の弁済に充てて抵当権の消滅をはかる場合には、右不動産売却行為は、民法第四二四条所定の債権者を害する行為にはあたらない。
重要事実
債務者Dは、債権者(被上告人)を害することを知りながら、上告人らに対し本件(一)ないし(九)の不動産を売却した。これらのうち一部の物件((一)(二)(五)(六)(八))には第三者Eを根抵当権者とする共同根抵当権(極度額3000万円)が設定されていた。売買契約後、当該根抵当権は弁済により消滅し、登記も抹消された。債権者は、本件(一)(二)物件の売買契約の取消しと、現物返還としての登記抹消を求めて提訴した。
あてはめ
1. 本件では売買後に根抵当権が消滅しているため、現物返還を認めると債権者は抵当権の負担のない不動産を取得することになり、債務者の一般財産への回復という目的を超え、不当に利得することになる。したがって、価格賠償によるべきである。 2. 本件(一)(二)物件は他の物件と共同抵当の関係にあったため、控除すべき被担保債権額の算出にあたっては、民法392条の配当原則を準用し、本件(一)(二)物件と他の共同抵当物件((五)(六)(八))それぞれの価額に応じた案分額を算出する必要がある。原審が物件全体の価額を確定せず、かつ案分計算を行わずに現物返還を認めたのは不当である。
結論
本件(一)(二)物件の価額から、共同抵当の被担保債権額を各物件の価額で案分した「割り付け額」を差し引いた残額の限度で、価格賠償を認めるべきである。
実務上の射程
抵当権付き不動産の譲渡後の抵当権消滅事案における「価格賠償」の原則を確認し、さらに共同抵当の場合の控除額算定手法として「価額案分」を明示したもの。論文では、現物返還が認められない理由(受益者の出捐による抵当権消滅等の場合、現物返還は債権者に不当な利益を与える点)を論証した上で、本判例を根拠に案分計算の必要性に言及すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)539 / 裁判年月日: 昭和41年2月24日 / 結論: 棄却
売買を詐害行為として取り消すべき場合において、その目的物件が一棟の建物で不可分のときには、一部取消の限度において、その価格の賠償を請求するの外なく、右目的物件の所有権の移転登記の抹消登記請求をすることはできない。(大法廷判決昭和三六年七月一九日、民集一五巻七号一八七五頁参照)
事件番号: 昭和60(オ)568 / 裁判年月日: 昭和62年2月12日 / 結論: 破棄差戻
債務者所有の不動産に設定された譲渡担保が帰属清算型である場合、債権者の支払うべき清算金の有無及びその額は、債権者が債務者に対し清算金の支払若しくはその提供をした時若しくは目的不動産の適正評価額が債務額(評価に要した相当費用等の額を含む。)を上回らない旨の通知をした時、又は債権者において目的不動産を第三者に売却等をした時…
事件番号: 昭和38(オ)261 / 裁判年月日: 昭和39年3月24日 / 結論: 棄却
合資会社の社員が、第三者の債務につき、会社を代表して連帯保証契約を締結し、会社財産を担保にする行為は、たとえ右社員が右第三者の債務負担につき代理人として関与した場合であつても、商法第七五条にいう「取引」にあたらない。
事件番号: 昭和61(オ)495 / 裁判年月日: 昭和63年7月19日 / 結論: 破棄差戻
抵当権の設定されている不動産について当該抵当権者以外の者との間にされた代物弁済予約及び譲渡担保契約が詐害行為に該当する場合において、右不動産が不可分のものであり、詐害行為の後に弁済等によつて右抵当権設定登記が抹消されたときは、その取消による原状回復は、右不動産の価額から右抵当権の被担保債権額を控除した残額の限度で価格賠…