1 難民であると主張する外国人に対する外国官憲作成名義の逮捕状等の写しの原本の存在及び成立の真正に関し,法務省が外務省を通じて同国公機関に対して照会を行った際に同省に交付した依頼文書の控えにつき,監督官庁が,民訴法223条4項1号の「他国との信頼関係が損なわれるおそれ」があり,同法220条4号ロ所定の文書に該当する旨の意見を述べ,同文書の所持者である法務大臣が,同文書には,同国の内政上の諸問題,調査の際に特に留意すべき事項,調査に係る背景事情等に関する重要な情報等が記載され,その中に同国政府に知らせていない事項も含まれていると主張しているなど判示の事情の下においては,上記記載の存否及び内容について審理して,同文書が提出された場合に我が国と他国との信頼関係に与える影響等を検討することなく,上記意見に相当の理由があると認めるに足りないとした原審の判断には,違法がある。 2 難民であると主張する外国人に対する外国官憲作成名義の逮捕状等の写しの原本の存在及び成立の真正に関し照会するために外務省が作成して同国公機関に交付した照会文書の控え及び同機関が同省に交付した照会に対する回答文書につき,監督官庁が,民訴法223条4項1号の「他国との信頼関係が損なわれるおそれ」があり,同法220条4号ロ所定の文書に該当する旨の意見を述べ,上記各文書の所持者である外務大臣が,上記各文書は,公開しないことが外交上の慣例とされる口上書と称される外交文書の形式によるものであり,発出者ないし受領者により秘密の取扱いとすべきことを表記した上で相手国に対する伝達事項等が記載されていると主張しているなど判示の事情の下においては,上記記載の存否及び内容,口上書の形式によるものであるとすれば上記慣例の有無等について審理して,上記各文書が提出された場合に我が国と他国との信頼関係に与える影響等を検討することなく,上記意見に相当の理由があると認めるに足りないとした原審の判断には,違法がある。 (1につき補足意見,2につき補足意見及び意見がある。)
1 法務省が外務省を通じて外国公機関に照会を行った際に同省に交付した依頼文書の控えにつき民訴法223条4項1号の「他国との信頼関係が損なわれるおそれ」があり同法220条4号ロ所定の文書に該当する旨の監督官庁の意見に相当の理由があると認めるに足りないとした原審の判断に違法があるとされた事例 2 外務省が外国公機関に交付した照会文書の控え及び同機関が同省に交付した回答文書につき民訴法223条4項1号の「他国との信頼関係が損なわれるおそれ」があり同法220条4号ロ所定の文書に該当する旨の監督官庁の意見に相当の理由があると認めるに足りないとした原審の判断に違法があるとされた事例
民訴法220条4号ロ,民訴法223条3項,民訴法223条4項1号
判旨
公務員の職務上の秘密に関する文書(民訴法220条4号ロ)の提出命令の可否について、監督官庁の意見の相当性を判断するには、公にされていない情報の有無や外交上の慣例等を具体的に審理すべきである。特に口上書等の外交文書は、公開を前提としない慣例や他国との信頼関係への影響を慎重に検討しなければならない。
問題の所在(論点)
外交上の調査・照会に関する公文書が、民訴法220条4号ロにいう「公務員の職務上の秘密に関する文書」として提出義務を除外されるか、またその際の裁判所の審査の在り方が問われた。
事件番号: 平成17(許)4 / 裁判年月日: 平成17年7月22日 / 結論: その他
1 警察官が文書提出命令の申立人の住居等において行った捜索差押えに係る捜索差押許可状及び捜索差押令状請求書は,いずれも,当該警察官が所属し,上記各文書を所持する地方公共団体と文書提出命令申立人との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当する。 2 民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当…
規範
民訴法223条4項1号のおそれを理由とする監督官庁の意見が、同法220条4号ロ所定の除外事由に当たり「相当の理由があると認めるに足りない場合」に該当するか否かの判断基準: 1. 文書に調査方法、条件、対象国の内政問題、背景事情等の非公知事項が含まれているか。 2. 提出により他国との信頼関係が損なわれ、今後の調査活動や情報収集に著しい支障を生ずるおそれがあるか。 3. 文書が「口上書」等の形式をとり、外交実務上の非公開の慣例が存在するか。 これらの点について、記載内容や慣例の有無を具体的に審理・検討した上で判断すべきである。
重要事実
難民認定処分の取消訴訟において、パキスタン人である原告(相手方)が、パキスタン当局作成の「逮捕状等の写し」を証拠提出した。これに対し、被告(法務大臣等)は、外務省を通じて同当局に照会し、同写しが偽造である旨の回答を得たとする「調査文書」を提出。原告は、その照会過程で作成された「依頼文書」「照会文書(口上書等)」「回答文書(口上書等)」の提出を申し立てた。監督官庁は、外交上の信頼毀損等を理由に提出義務を否定。原審は、中核的内容が既公開であるとして提出を命じたため、国側が抗告した。
あてはめ
1. 依頼文書について:単なる照会事実だけでなく、調査方法や対象国の内政問題、パキスタン政府に伏せている留意事項等が記載されている余地があり、これらが公開されると他国との信頼関係を損ない、今後の難民調査に著しい支障を及ぼすおそれがある。 2. 照会・回答文書(口上書)について:口上書は国家間の公式連絡様式であり、外交実務上、原本の非公開を前提とする慣例が存在し得る。秘密保持の表記がある場合、公開により我が国の情報収集活動に著しい支障を生ずるおそれがある。 3. 原審の評価:原審はこれら具体的事情を十分に審理せず、一部の情報が既知であることのみをもって「相当の理由がない」と断じた点に法令違反がある。
結論
原決定を破棄し、差し戻す。本件各文書の具体的な記載内容、口上書の非公開慣例の有無、及び提出が他国との信頼関係に与える影響を審理した上で、監督官庁の意見の相当性を判断すべきである。
実務上の射程
公務秘密文書の提出命令に関するリーディングケース。監督官庁の意見に対し、裁判所が安易に「相当の理由がない」と判断することを戒め、具体的支障の有無をイン・カメラ手続(223条6項)等も活用しながら慎重に審理することを求める射程を持つ。特に外交文書については、実質的秘匿性のみならず「口上書」等の形式面や国際慣例も重視される。
事件番号: 平成30(許)7 / 裁判年月日: 平成31年1月22日 / 結論: 破棄差戻
1 刑訴法47条所定の「訴訟に関する書類」に該当する文書について文書提出命令の申立てがされた場合であっても,当該文書が民訴法220条1号所定のいわゆる引用文書に該当し,かつ,当該文書の保管者によるその提出の拒否が,民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無,程度,当該文書が開示されることによる被告人,被疑者等の名…
事件番号: 平成17(許)39 / 裁判年月日: 平成18年2月17日 / 結論: 棄却
銀行の営業関連部,個人金融部等の本部の担当部署から各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書につき,その内容は,変額一時払終身保険に対する融資案件を推進するとの一般的な業務遂行上の指針を示し,あるいは,客観的な業務結果報告を記載したものであり,取引先の顧客の信用情報や銀行の高度なノウハウに関する記載は含まれてお…
事件番号: 平成15(許)48 / 裁判年月日: 平成16年2月20日 / 結論: 破棄自判
1 県が,漁業協同組合との間でその所属組合員全員が被る漁業損失の総額を対象とする漁業補償交渉をする際の手持ち資料として作成した補償額算定調書中,その総額を積算する過程で算出した文書提出命令申立人に係る補償見積額が記載された部分は,県が各組合員に対する補償額の決定,配分を同組合の自主的な判断にゆだねることを前提とし,その…
事件番号: 平成19(許)22 / 裁判年月日: 平成19年12月12日 / 結論: その他
1 検察官が被疑者の勾留請求に当たって刑訴規則148条1項3号所定の資料として裁判官に提供した告訴状及び被害者の供述調書は,いずれも,上記各文書を所持する国と上記請求により勾留された者との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当する。 2 強姦の被疑事実に基づき勾留された被疑者が,勾留請求の違法を…