1 不正競争防止法2条1項1号,2号にいう「営業」は,宗教法人の本来的な宗教活動及びこれと密接不可分の関係にある事業を含まない。 2 宗教法人は,その名称を他の宗教法人等に冒用されない権利を有し,これを違法に侵害されたときは,加害者に対し,侵害行為の差止めを求めることができる。 3 「天理教」との名称の宗教法人Xと被包括関係を設定していた宗教法人Yが,被包括関係の廃止に伴い,その名称を「天理教豊文分教会」から「天理教豊文教会」に変更した場合において,Yは長年にわたって「天理教」の語を冠した名称を使用してきたこと,Yの信奉する教義は社会一般の認識においては「天理教」にほかならないこと,YにおいてXの名称の周知性を殊更に利用しようとするような不正な目的をうかがわせる事情もないことなど判示の事情の下では,Yによる「天理教豊文教会」との名称の使用は,Xの名称を冒用されない権利を違法に侵害するものとはいえない。
1 不正競争防止法2条1項1号,2号にいう「営業」と宗教法人の宗教活動 2 宗教法人の名称を冒用されない権利に基づく侵害行為の差止請求の可否 3 宗教法人Yによる「天理教豊文教会」との名称の使用が宗教法人Xの「天理教」との名称を冒用されない権利を違法に侵害するものとはいえないとされた事例
(1につき)不正競争防止法1条,不正競争防止法2条1項1号,2号,宗教法人法6条 (2,3につき)民法2条,民法198条,民法199条,憲法13条,宗教法人法12条1項2号
判旨
宗教法人の本来的な宗教活動は不正競争防止法上の「営業」に当たらない。また、名称を冒用されない権利に基づく差止請求の可否は、名称使用の自由を考慮し、周知性や使用の経緯、目的等の諸事情を総合考慮して判断すべきである。
問題の所在(論点)
1. 宗教法人の本来的な宗教活動が不競法上の「営業」に該当するか。2. 宗教法人の名称権(人格権)に基づく差止請求を認めるための判断枠組み。
規範
1. 不正競争防止法2条1項1号・2号の「営業」とは、取引社会における競争関係を前提とする。宗教法人の本来的な宗教活動及びこれと密接不可分の事業はこれに含まれない。2. 宗教法人の名称権(人格権)に基づく差止請求の成否は、当該名称の周知性、双方の名称の識別可能性、名称使用の経緯・態様、及び名称使用の自由(教義を簡潔に示す語を冠する合理性・必要性)等の諸事情を総合考慮し、権利侵害の違法性を判断する。
重要事実
宗教法人である上告人(天理教)から離脱した被上告人が、被包括関係廃止後も「天理教豊文教会」との名称を使用し、朝夕の勤行等の宗教活動を継続した。上告人は、当該名称の使用が不正競争(不競法2条1項1号・2号)に該当し、または名称権(人格権)を侵害するとして、名称の使用差止め等を求めた。被上告人は収益事業を行っておらず、名称中の「豊文」は地名に由来し、約80年前から使用してきた経緯があった。
あてはめ
1. 被上告人の活動は年中行事等の本来的な宗教活動に留まり、収益事業を行っていないため、不競法上の「商品等表示」や「営業」に係る活動とはいえず、同法の適用外である。2. 名称権につき、上告人の名称は周知で被上告人の名称と類似するが、(1)被上告人は80年にわたり当該地名を含む名称を使用してきた経緯があり、(2)教祖の教えを信奉する教義上「天理教」の語を冠することには相当性がある。(3)不正な目的も認められず、名称使用を禁じれば宗教活動に重大な支障が生じる一方、「天理教」の語が教義を示す以上、独占できないことは宗教法人の性格上やむを得ない。したがって、違法な権利侵害とはいえない。
結論
被上告人の名称使用は不正競争に該当せず、また名称権を違法に侵害するものともいえないため、差止請求は棄却される。
実務上の射程
不競法の「営業」概念を、取引社会における競争秩序の維持という目的から限定した。また、氏名権に基づく差止請求(人格権的差止)の判断において、侵害側の「名称使用の自由」を対抗利益として明示し、具体的な相関関係(周知性・経緯・必要性等)で違法性を判断する手法を示した。宗教法人の名称紛争だけでなく、一般の人格権的差止の事案でも参照し得る枠組みである。
事件番号: 昭和46(オ)1191 / 裁判年月日: 昭和50年7月10日 / 結論: 破棄差戻
商法二〇条二項にいう同一の営業とは、社会的見地に立つて営業目的自体を対比し、一方の営業目的が他方のそれを包含し、その主要部分が同一であることをいう。
事件番号: 昭和39(オ)1013 / 裁判年月日: 昭和40年3月18日 / 結論: 棄却
一 「A」と「AB」の両商号は、その文字呼称において「A」が共通であり、後者はこれに「B」の文字を加えたものにすぎないから、右の両商号は類似商号に該当する。 二 「A」と「AB」とは、原審認定の事実関係のもとで、類似商号ということができる。