破産債権者は,破産者に対する債務がその破産宣告の時において期限付又は停止条件付である場合には,特段の事情のない限り,期限の利益又は停止条件不成就の利益を放棄したときだけでなく,破産宣告後に期限が到来し又は停止条件が成就したときにも,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)99条後段の規定により,その債務に対応する債権を受働債権とし,破産債権を自働債権として相殺をすることができる。
破産債権者が破産宣告の時において期限付又は停止条件付であり破産宣告後に期限が到来し又は停止条件が成就した債務に対応する債権を受働債権とし破産債権を自働債権として相殺をすることの可否
破産法67条2項,破産法71条1項1号,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)99条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)104条1号
判旨
破産債権者は、受働債権が破産宣告時に期限付または停止条件付である場合、期限の到来や条件の成就が破産宣告後であっても、特段の事情のない限りこれを受働債権として相殺できる。もっとも、自働債権に含めた弁護士費用については、当該不法行為に基づく訴訟で勝訴した場合等に限り相当因果関係が認められる。
問題の所在(論点)
破産債権者が、破産宣告時において期限未到来または条件未成就であった自己の債務を、破産宣告後の期限到来・条件成就を待って受働債権とし、破産債権と相殺することができるか。また、不法行為訴訟が却下された場合、その弁護士費用を損害として相殺の自働債権に含められるか。
規範
旧破産法99条後段(現行破産法67条2項)が破産宣告時に期限付・停止条件付債務を負う債権者の相殺を認めた趣旨は、相殺の担保的機能に対する期待を保護する点にある。したがって、破産債権者は、期限の利益や不成就の利益を放棄した場合に限らず、破産宣告後に期限が到来し、または停止条件が成就した場合であっても、特段の事情がない限り、当該債務を自働債権とする相殺が可能である。不法行為に基づく弁護士費用については、相手方に対し勝訴した場合等に限り、相当因果関係のある損害として認められる。
重要事実
保険会社である被上告人は、破産者(代表取締役が放火)に対して保険金詐取の不法行為に基づく損害賠償債権を有していた。一方で被上告人は、破産者との間で積立保険契約等を締結しており、破産宣告時において、将来の満期到来時に支払うべき「満期返戻金債務(期限付債務)」および、解約時に支払うべき「解約返戻金債務(停止条件付債務)」を負っていた。破産宣告後、実際に満期が到来し、または破産管財人(上告人)による解約によって返戻金支払債務が具体化したため、被上告人はこれらを受働債権として、損害賠償債権(自働債権)と相殺する旨の意思表示をした。
あてはめ
(1)被上告人が負っていた返戻金支払債務は、破産宣告時には期限付または停止条件付の状態にあった。破産手続において相殺権の行使時期に制限はなく、宣告後に期限が到来(番号22〜24の契約)し、または解約により条件が成就(番号25〜52の契約)した以上、これを受働債権として相殺できる。(2)自働債権について、被上告人が別件で提起した損害賠償請求訴訟は却下されており、勝訴していない。したがって、当該訴訟にかかる弁護士費用は放火という不法行為と相当因果関係がある損害とはいえず、自働債権に含めることはできない。
結論
被上告人による相殺は、期限到来・条件成就した返戻金債務の全額について有効であるが、自働債権のうち弁護士費用相当分については認められない。したがって、相殺しきれなかった残額の範囲で上告人の請求が認められる。
実務上の射程
破産手続における相殺権の拡張(担保的機能の重視)を示す重要判例。答案では、受働債権の弁済期が宣告後に到来するケースでも「相殺の期待」を理由に肯定する根拠として用いる。また、不法行為の弁護士費用については「勝訴」等の限定を付す規範として注意を要する。
事件番号: 平成12(受)1584 / 裁判年月日: 平成14年9月24日 / 結論: 破棄自判
債権の全額を破産債権として届け出た債権者は,債務者に対する破産宣告後に物上保証人から届出債権の弁済を受けても,その全部の満足を得ない限り,届出債権の全額について破産債権者としての権利を行使することができる。
事件番号: 平成27(受)330 / 裁判年月日: 平成28年4月28日 / 結論: 棄却
破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして,上記死亡保険金受取人の破産財団に属する。