1 法律行為が公序に反することを目的とするものであるとして無効になるかどうかは,法律行為がされた時点の公序に照らして判断すべきである。 2 証券取引法42条の2第1項3号が,平成3年法律第96号による同法の改正前に締結された損失保証や特別の利益の提供を内容とする契約に基づいてその履行を請求する場合を含め,顧客等に対する損失補てんや利益追加のための財産上の利益の提供を禁止していることは,憲法29条に違反しない。
1 法律行為が公序に反することを目的とするものであるかどうかを判断する基準時 2 証券取引法42条の2第1項3号が平成3年法律第96号による同法の改正前に締結された損失保証や特別の利益の提供を内容とする契約に基づく履行の請求をも禁止していることと憲法29条
民法90条,憲法29条,証券取引法42条の2第1項3号
判旨
法律行為の公序良俗違反の有無は、後発的事情による変化にかかわらず行為当時の公序に照らして判断すべきである。また、私法上有効な損失保証契約であっても、証券取引法等の禁止規定に抵触する利益提供の履行請求は許されない。
問題の所在(論点)
1. 契約締結後に損失保証への社会的非難が高まった場合、行為時に遡って公序良俗違反として無効になるか。 2. 契約が私法上有効である場合、その後の法改正による利益提供禁止規定に抵触する履行請求は認められるか。
規範
1. 法律行為が公序に反し無効(民法90条)か否かは、特段の事情がない限り、行為当時の法令及び公序に照らして判定すべきである。行為後の経緯により公序の内容が変化しても、行為時に有効な行為が遡及的に無効となることはない。 2. 証券取引法(当時)等の利益提供禁止規定は、私法上の効力とは別に、その履行を求めること自体を禁止する趣旨を含む。したがって、有効に成立した契約に基づく請求であっても、法が禁止する利益提供に該当する履行請求は許容されない。
重要事実
事件番号: 平成9(オ)219 / 裁判年月日: 平成11年1月29日 / 結論: 破棄自判
一 将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約の締結時において目的債権の発生の可能性が低かったことは、右契約の効力を当然には左右しない。 二 医師が社会保険診療報酬支払基金から将来八年三箇月の間に支払を受けるべき各月の診療報酬債権の一部を目的として債権譲渡契約を締結した場合において、右医師が債務の弁済のために右契約を締…
上場会社である被上告人と、証券会社である上告人は、昭和60年に特定金銭信託の運用益が年8%に満たない場合に差額を補填する約束(本件保証契約)を締結した。平成2年には保証利回りを8.5%に引き上げる追加契約もなされた。その後、証券市場の不祥事を受け平成3年の法改正により損失補填・利益提供行為が厳格に禁止され罰則も設けられた。被上告人は、平成5年の信託期間終了時に本件各保証契約に基づき不足額の支払を求めて提訴した。
あてはめ
1. 昭和60年当時、損失保証は行政処分対象ではあったが私法上有効と解されており、反社会性の強い行為との認識が確立していたとはいえない。よって本件保証契約は締結当時の公序に照らし有効である(平成2年の追加契約は通達後のため無効)。 2. 証券取引法42条の2第1項3号(当時)は、自己責任原則の維持と市場の信頼確保のため、過去の契約に基づくものか否かを問わず、利益提供行為を一律に禁止している。被上告人の請求は、まさに同条が禁止する財産上の利益提供を求めるものであり、法42条の2第3項の例外(事故による損失補填)にも当たらない。したがって、有効な契約に基づく請求であっても、法規制により請求権の行使が否定される。
結論
本件保証契約は私法上有効であるが、証券取引法上の利益提供禁止規定に抵触するため、その履行請求は失当である。主位的請求を認めた原判決は破棄される。
実務上の射程
公序良俗違反の判定時期(行為時基準)の確定、および「契約は有効だが規制法により履行請求が阻害される」という私法上の効力と公法的な規律の調整場面で活用できる。また、本判決は当該規制が憲法29条(財産権)に反しないことも明示しており、法令による権利制限の合理性判断の素材にもなる。
事件番号: 平成11(受)1067 / 裁判年月日: 平成12年3月9日 / 結論: 破棄自判
一 破産宣告当時双務契約の当事者双方に未履行の債務が存在していても、契約を解除することによって相手方に著しく不公平な状況が生じるような場合には、破産管財人は破産法五九条一項に基づく解除権を行使することができない。 二 年会費の定めのある預託金会員制ゴルフクラブの会員が破産した場合において、破産管財人が会員契約を解除する…
事件番号: 平成8(オ)390 / 裁判年月日: 平成9年4月24日 / 結論: 棄却
証券会社の営業部員が、株式等の取引の勧誘をするに際し、取引の開始を渋る顧客に対し、法令により禁止されている利回り保証が会社として可能であるかのように装って利回り保証の約束をして勧誘し、その旨信じた顧客に取引を開始させ、その後、同社の営業部長や営業課長も右約束を確認するなどして取引を継続させ、これら一連の取引により顧客が…
事件番号: 昭和56(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和57年11月16日 / 結論: 棄却
商品取引員が商品取引所法(昭和四九年法律第二三号による改正前のもの)九一条の二第一項の規定に違反して登録外務員以外の者をして先物売買取引委託契約を締結させても、右違反は、右契約の効力に影響を及ぼさない。