生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者は、これを取り立てるため、債務者の有する解約権を行使することができる。 (反対意見がある。)
生命保険契約の解約返戻金請求権の差押債権者がこれを取り立てるために解約権を行使することの可否
民事執行法155条1項,商法653条,商法673条,商法683条
判旨
生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者は、取立権に基づき、債務者の有する解約権を自ら行使することができる。
問題の所在(論点)
生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者は、取立権の内容として、債務者が有する生命保険契約の「解約権」を代わって行使し、未発生の返戻金請求権を現実化させることができるか。解約権が「一身専属的権利」に該当するか、および取立てに必要な範囲内といえるかが問題となる。
規範
1. 金銭債権の差押債権者は、民事執行法155条1項の取立権に基づき、債務者の一身専属的権利を除き、被差押債権の取立てに必要な範囲で一切の権利を行使できる。 2. 生命保険契約の解約権は、身分法上の権利と異なり債務者の意思に専属させるべき事情がないため、一身専属的権利ではない。 3. 解約権の行使は、解約返戻金請求権を現実化させるために不可欠な行為であり、取立てを目的とする行為の範囲に含まれる。
重要事実
債権者(被上告人)は、債務者が保険会社(上告人)との間で締結していた生命保険契約(いつでも解約でき解約返戻金が支払われる特約付)につき、解約返戻金請求権を差し押さえた。その後、債権者は保険会社に対し、自ら本件保険契約を解約する旨の意思表示を行い、解約返戻金の支払を求めた。
あてはめ
まず、解約権は財産的側面が強く、身分上の権利ではないため一身専属的権利には当たらない。次に、解約返戻金請求権は解約権行使を条件として効力を生ずる権利であり、解約権行使は債権の現実化に不可欠である。これを認めなければ差押えの実質的意味が失われる。また、生命保険の生活保障機能から生じる不利益(高度障害保険金等の喪失)については、差押禁止財産に指定されていない以上、取立てを制限する理由にはならず、必要に応じて権利濫用(民法1条3項)等で個別判断すべきである。したがって、本件解約は取立権の範囲内として有効である。
結論
差押債権者による解約権の行使は有効であり、保険会社は解約返戻金の支払義務を負う。
実務上の射程
本判例は、取立権に基づく形成権(解約権)の行使を肯定した重要な射程を持つ。答案上は、まず民執法155条1項の取立権の範囲を論じ、当該形成権が行使に不可欠であること、及び一身専属権(民法423条1項ただし書参照)に当たらないことを認定する。なお、権利濫用の抗弁の余地を残している点には留意が必要である。
事件番号: 平成10(オ)331 / 裁判年月日: 平成13年11月27日 / 結論: 棄却
指名債権譲渡の予約についてされた確定日付のある証書による債務者に対する通知又は債務者の承諾をもって,当該予約の完結による債権譲渡の効力を第三者に対抗することはできない。