買戻特約付売買の買主から目的不動産につき抵当権の設定を受けた者は、抵当権に基づく物上代位権の行使として、買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができる。
買戻特約付売買の目的不動産に設定された抵当権に基づく買戻代金債権に対する物上代位権行使の可否
民法304条,民法372条,民法579条
判旨
買戻特約付売買の買主から不動産に抵当権の設定を受けた者は、買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権について、民法372条、304条に基づく物上代位権を行使できる。
問題の所在(論点)
買戻特約付売買の目的物に設定された抵当権に基づき、買戻権行使によって生じた買戻代金債権に対して物上代位(民法372条、304条1項)を行うことができるか。
規範
買戻特約の登記に後れる抵当権は、買戻権行使による所有権復帰に伴い消滅する。しかし、買主やその一般債権者との関係では、行使時まで抵当権が有効に存在した効果は覆滅されない。また、買戻代金は、実質的に目的不動産の所有権復帰の対価であり、不動産の価値変形物として、民法304条の「目的物の売却……によって債務者が受けるべき金銭」に該当すると解すべきである。
重要事実
買主Aは、買戻特約付で土地を買い受け、その登記を経由した。その後、被上告人がAから同土地に根抵当権の設定を受け登記したが、買戻権が行使された。被上告人は、Aが取得した買戻代金債権に対し物上代位による差押えを行った。一方、Aの債権者である上告人も、被上告人の登記後に同債権を差し押さえた。上告人は、買戻しにより根抵当権が消滅したため、物上代位は不可であるとして配当表の変更を求めた。
あてはめ
本件では、被上告人の根抵当権は買戻特約の登記後に設定されており、買戻権の行使により土地の所有権が売主側に復帰したことで、当該根抵当権自体は消滅する。しかし、債務者Aが受けるべき買戻代金は、抵当権の対象であった土地が所有権復帰という形で処分されたことの交換価値を具現化した「価値変形物」といえる。したがって、抵当権が有効に存在した期間の法的効果として、買主Aやその債権者である上告人との関係においては、物上代位による優先弁済権が認められるべきである。
結論
抵当権者は買戻代金債権に対し物上代位権を行使できる。したがって、被上告人による差押えを優先させた配当表は正当であり、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
買戻特約に限らず、解除等の遡及的無効や権利消滅の場面において、抵当権者の保護を「価値変形物」の概念で図る際の有力な根拠となる。答案上は、物上代位の客体である「売却」等の解釈において、実質的な価値の代替性を強調する文脈で活用する。
事件番号: 昭和42(オ)342 / 裁判年月日: 昭和45年7月16日 / 結論: 破棄差戻
抵当権者が被担保債権を被保全債権として抵当不動産の仮差押をした場合において、仮差押債務者が仮差押解放金を供託して仮差押執行の取消を得たときには、抵当権の効力は、物上代位の規定の趣旨により、右仮差押解放金の取戻請求権に及ぶ。