被害者が自動車を運転中、道路上にフオーク部分を突き出した状態で停止中のフオークリフトに衝突して受傷した事故は、本件車両が、フオークリフトによる荷降ろし作業のための枕木を荷台に装着した木材運搬用の貨物自動車であつて、荷降ろし作業終了後直ちに出発する予定で道路上に駐車中であり、本件事故発生当時、右フオークリフトが荷降ろしのため本件車両に向かう途中であつたなどの事情があつても、本件車両の「運行によつて」生じたものとはいえない。
荷降ろし作業の際の人身事故が自動車損害賠償保障法三条にいう自動車の「運行によつて」生じたものとはいえないとされた事例
自動車損害賠償保障法2条2項,自動車損害賠償保障法3条
判旨
道路上に駐車した貨物自動車からの荷下ろし作業中、共同作業者のフォークリフトが他車と衝突した場合、貨物自動車自体の装置の用い方に起因しない事故は、同車の「運行によつて」生じたものとはいえない。
問題の所在(論点)
道路上に駐車中の貨物自動車からフォークリフトを用いて荷下ろしを行っている際、フォークリフトが引き起こした衝突事故について、駐車中の貨物自動車の「運行によつて」生じたものとして、同車保有者の自賠法3条に基づく責任が認められるか。
規範
自動車損害賠償保障法3条にいう「運行によつて」とは、自動車を「当該装置の用い方に従い用いること」(同法2条2項)によつて損害が生じることをいう。車両を駐車して荷下ろし作業を行う場合であっても、事故が当該車両自体の装置の構造や操作、あるいはその固有の危険が具現化したものと評価できない限り、運行起因性は認められない。
重要事実
運送業者である上告人は、木材積載の貨物自動車を幅員4.5メートルの道路端に駐車し、Dの従業員Eが運転するフォークリフトを用いて荷下ろし作業を開始した。その際、上告人は荷台上で監視・指示を行っていた。フォークリフトが3回目の荷下ろしのため道路上に突き出た状態で一時停止し、上告人の指示に従いフォークの高さを調整していたところ、前方注視を怠った被上告人B運転の車両が当該フォーク部分に衝突し、Bが失明する事故が発生した。
あてはめ
本件事故は、被上告人Bが、道路上に進入していたフォークリフトのフォーク部分に衝突したことで発生したものである。本件貨物自動車は、荷台に枕木を装着するなど荷下ろし作業が予定された車両であり、上告人とEが共同して作業中であったという事情はある。しかし、事故の直接の原因はフォークリフトの突出と運転上の過失にあり、貨物自動車自体の装置をその用い方に従って用いたことにより発生したものとはいえない。したがって、貨物自動車の運行と事故との間に相当因果関係を認めることはできない。
結論
本件事故は本件車両の「運行によつて」生じたものとはいえず、上告人は自賠法3条に基づく損害賠償責任を負わない(ただし、民法709条の不法行為責任は別途成立する)。
実務上の射程
駐車車両の運行起因性が問題となる事案において、単に作業が「密接不可分」であるというだけでは足りず、当該車両の装置の危険が直接実現したかを厳格に判断する基準として機能する。答案では「運行」の定義(2条2項)を示した上で、事故の直接的要因が車両の装置と結びついているかを論理的に記述する際に参照すべきである。
事件番号: 平成3(オ)260 / 裁判年月日: 平成5年3月16日 / 結論: 棄却
自動車損害賠償保障法一〇条にいう「道路…以外の場所のみにおいて運行の用に供する自動車」であっても、その本来の用途から外れて道路上を走行中に事故が発生して、自動車損害賠償責任保険の被保険者以外の者の同法三条の規定による損害賠償責任が生ずる場合には、右事故につき政府の自動車損害賠償保障事業の適用がある。