警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が惹起した事故により第三者が損害を被つた場合において、右追跡行為が国家賠償法一条一項の適用上違法であるというためには、追跡が現行犯逮捕、職務質問等の職務の目的を遂行するうえで不必要であるか、又は逃走車両の走行の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無・内容に照らして追跡の開始、継続若しくは方法が不相当であることを要する。
警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が惹起した事故により第三者が損害を被つた場合において右追跡行為が国家賠償法一条一項の適用上違法であるというための要件
国家賠償法1条1項,警察法2条,警察法65条,警察官職務執行法2条1項,刑訴法212条
判旨
警察官による逃走車両のパトカー追跡中に第三者が損害を被った場合、追跡が職務目的遂行上不必要であるか、予測される被害の具体的危険性に照らして開始・継続・方法が不相当でない限り、当該追跡行為は違法ではない。
問題の所在(論点)
警察官によるパトカーを用いた逃走車両の追跡行為が、国賠法1条1項にいう「職務を行うについて……違法に」損害を加えたものといえるか。
規範
警察官の追跡行為が国賠法1条1項にいう違法となるかは、①当該職務目的を遂行する上での必要性と、②逃走車両の態様・道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無・内容に照らし、追跡の開始・継続・方法が不相当といえるか否かによって判断される。
重要事実
速度違反を現認された車両が、一旦停車した後に突如として時速約100kmで逃走を開始した。パトカーは赤色灯点灯・サイレン吹鳴の上で追跡し、無線で県内各署に手配を実施。逃走車両は赤信号無視等の危険走行を繰り返したが、パトカーは車間距離を保持し、追跡継続が困難と判断した地点ではサイレンを中止し減速した。その後、逃走車両が交差点に赤信号無視で進入し、第三者の車両と衝突して死傷事故が発生した。
あてはめ
①必要性について、運転者は単なる速度違反にとどまらず、停車後の突発的逃走という挙動不審を示しており、現行犯逮捕や職務質問の必要性が高い。車両番号は判明していたが、運転者特定には至っておらず、最終的には追跡が必要であったといえる。②相当性について、事故現場付近は商店や民家が立ち並ぶものの、事故当時は午後11時頃で交通量は限られていた。パトカー側は車間距離を保ち、状況に応じて減速・サイレン中止を行うなど、特段危険な追跡方法はとっていない。以上から、具体的危険性を予測し得たとはいえず、追跡は不相当ではない。
結論
本件追跡行為は、職務目的遂行上の必要性があり、その方法も相当な範囲内であったため、国家賠償法上の違法性は認められない。
実務上の射程
パトカー追跡の違法性が問われる事案のリーディングケースである。規範は「必要性」と「具体的危険性(相当性)」の二要素からなり、特に後者の判断では事故当時の時間帯、道路状況、追跡の方法(サイレン・赤色灯の使用や減速の有無)が重視される。答案では本件をメルクマールとしつつ、事実関係の差異(夜間か昼間か、住宅街か等)に基づき評価を分けることが求められる。
事件番号: 昭和37(オ)68 / 裁判年月日: 昭和39年10月23日 / 結論: 棄却
司法警察職員がその管轄区域内で関税法第一一二条の賍物罪の捜査を進めた結果、その本犯についても捜査をする必要が生じたときは、当該司法警察職員は、警察法第六一条第一項の適用上、管轄区域外でも、その本犯の捜査をすることができる。