建築基準法六五条所定の建築物の建築には、民法二三四条一項は適用されない。
建築基準法六五条所定の建築物の建築と民法二三四条一項の適用の有無
建築基準法65条,民法234条1項
判旨
防火地域または準防火地域内にある外壁が耐火構造の建築物については、建築基準法65条が民法234条1項の特則として優先的に適用される。したがって、隣地境界線に接して当該建物を建築することが認められる。
問題の所在(論点)
防火地域または準防火地域内において、外壁が耐火構造の建物を建てる場合に、建築基準法65条が民法234条1項に優先して適用され、境界線から50センチメートル未満の距離での建築が可能となるか。
規範
建築基準法65条は、防火地域または準防火地域内にある外壁が耐火構造の建築物について、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる旨を規定している。この規定は、防火上の要請や土地の合理的・効率的な利用を図るという相隣関係を規律する趣旨に基づくものであり、民法234条1項の特則として、同項の適用を排除するものであると解するのが相当である。
重要事実
上告人は、準防火地域内に所在する自己所有地に、鉄骨造3階建建物を建築し始めた。当該建物の外壁は耐火構造であったが、隣地境界線から50センチメートル未満の距離(本件土地部分にまたがる形)で建築されていた。隣地所有者である被上告人は、民法234条に基づき、境界から50センチメートル以内の建物部分の収去を求めて提訴した。なお、当該地域には接境建築を許容する慣習は認められなかった。
事件番号: 昭和28(オ)919 / 裁判年月日: 昭和31年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約における禁止事項である「容易に収去し難き本建築」の意義は、契約締結に至る経緯や建物の目的、既に存した建物の構造等を総合して解釈すべきである。当初の契約後に作成された書面の条項であっても、既存の建物と同程度の構造を有する建物の建築は、当該禁止事項に抵触しないと解するのが相当である。 第1 …
あてはめ
本件において、上告人所有地は準防火地域に指定されており、建築中の建物は外壁が耐火構造である。建築基準法65条は、同法6条1項の確認申請の審査基準を緩和する単なる公法上の規定ではなく、民法234条1項に対する特則としての性格を有する。そうである以上、民法上の離隔距離規制にかかわらず、上告人建物の建築は本件境界線に接する部分においても許容されるというべきである。したがって、民法234条2項に基づく収去請求は認められない。
結論
建築基準法65条の要件を満たす場合、民法234条1項は適用されない。よって、被上告人の収去請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
防火地域・準防火地域かつ耐火外壁という建築基準法65条の要件を満たす場面において、民法234条を根拠とした建築禁止や収去請求を拒絶する強力な抗弁として機能する。ただし、日照や通風、その他の相隣関係上の受忍限度論(権利濫用等)までを直ちに排除するものではない点には注意を要する。
事件番号: 昭和33(オ)664 / 裁判年月日: 昭和34年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物収去土地明渡請求において、収去すべき建物部分が上告人の所有地に跨る部分を除外して判示されているなど、執行が可能な程度に収去範囲が特定されていれば、判決に違法はない。 第1 事案の概要:被上告人が上告人に対し、不法占有を理由として建物の収去及び土地の明渡を求めた事案。第一審判決と原判決(二審)と…
事件番号: 昭和32(オ)63 / 裁判年月日: 昭和33年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】市街地において、間口一間半、奥行一〇間という極めて狭小な空地であっても、独立した家屋の建築所有を目的とする賃貸借の対象となり得るとし、そのような土地の提供が信義則に反するとはいえない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の間で、判示15坪の空地(間口一間半、奥行一〇間)の提供が争点となった。上告人…
事件番号: 昭和44(オ)317 / 裁判年月日: 昭和44年12月23日 / 結論: 破棄差戻
建物保護に関する法律一条は、登記した建物をもつて土地賃借権の登記に代用する趣旨であり、当該建物の登記に所在の地番として記載されている土地についてのみ、同条による賃借権の対抗力を生ずる。