地方公営企業労働関係法一一条一項は、憲法二八条に違反しない。
地方公営企業労働関係法一一条一項と憲法二八条
地方公営企業労働関係法11条1項,憲法28条
判旨
地方公営企業職員の争議行為を一律に禁止する地公労法11条1項は、勤務条件決定の仕組み、事業の公共性、住民生活への影響、及び相応の代償措置の存在に照らし、憲法28条に違反しない。また、本来の目的達成のために36協定の締結・更新を拒否し、一斉に時間外勤務を拒む行為は、同条項が禁止する争議行為に該当する。
問題の所在(論点)
1. 地方公営企業職員に対し争議行為を一律に禁止する地公労法11条1項は、憲法28条に違反するか。 2. 36協定の更新拒否を手段とする超過勤務の組織的拒否は、地公労法11条1項にいう「業務の正常な運営を阻害する一切の行為(争議行為)」に該当するか。
規範
1. 地方公営企業職員の争議行為禁止の合憲性判断においては、(1)勤務条件が法律・予算・条例により決定されるべき公務員特有の法理、(2)利潤追求ではなく公共の福祉を目的とし市場の抑制力が欠如していること、(3)業務の停廃が住民全体の共同利益に重大な影響を及ぼすこと、(4)身分保障や強制仲裁等の代償措置が講じられていることを総合考慮する。 2. 労働基準法36条所定の協定締結・更新の拒否であっても、それが特定の要求貫徹のための手段として組織的に行われ、業務の正常な運営を阻害するものは、争議行為(地公労法11条1項)に該当する。
重要事実
被上告人(地方公共団体)の交通局において、財政再建計画の実施を阻止するため、職員組合である上告参加人が「超勤拒否闘争」を決定。従来、バスの運行ダイヤは36協定に基づく超過勤務を前提に編成され、恒常化していたが、組合は計画案の市議会上程に際し、当局の36協定締結・更新の要望を拒否。組合員に一斉に時間外勤務を拒否させた結果、正常なダイヤ運行が困難な状況となった。
事件番号: 昭和57(行ツ)131 / 裁判年月日: 昭和63年12月9日 / 結論: 棄却
地方公営企業労働関係法附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される同法一一条一項は、憲法二八条に違反しない。
あてはめ
1. 地方公営企業職員も一般職地方公務員であり、勤務条件は住民の意思を代表する議会等の民主的コントロール下にある。その事業は公共の福祉増進を目的(地公企法3条)とし、停廃は住民生活に軽視し難い影響を与える。また、不服申立てや強制仲裁制度等の代償措置は不十分とはいえず、名古屋中郵事件判決の合憲の根拠は本件にも妥当する。 2. 本件では、超過勤務自体への不満ではなく、財政再建計画阻止という別個の目的のための手段として36協定の更新が拒否されている。平常のダイヤ運行に超過勤務が組み込まれている状況下で、組織的にこれを拒否することは、業務の正常な運営を阻害する態様といえる。
結論
地公労法11条1項は憲法28条に違反せず、本件超勤拒否闘争は同条項が禁止する争議行為に該当するため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
公務員(現業・非現業問わず)の争議行為禁止の合憲性を論じる際のリーディングケースである。答案上は、全農林警職法事件や名古屋中郵事件の判断枠組みが地方公務員にも維持されていることを示すために用いる。また、36協定の更新拒否が争議行為に該当し得ることの根拠としても有用である。
事件番号: 昭和52(行ツ)81 / 裁判年月日: 昭和53年9月7日 / 結論: 棄却
(省略)
事件番号: 平成5(行ツ)141 / 裁判年月日: 平成7年4月14日 / 結論: その他
従来、時間外割増賃金及び深夜割増賃金を含むとの認識の下に水揚高に一定率を乗じた歩合による賃金を支払っていた使用者が、労働基準監督署から割増賃金部分を明確にするよう指導を受けたため、水揚高に従前の率を若干下回る率を乗じた金額を基礎給としこれに時間外割増賃金及び深夜割増賃金を加算して支払うことを内容とする賃金計算方法を採用…
事件番号: 昭和59(行ツ)36 / 裁判年月日: 平成元年4月25日 / 結論: 棄却
一 地方公営企業労働関係法一一条一項は、同法附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される場合を含めて、憲法二八条に違反しない。 二 市の市長部局各部門、教育委員会で多数の職員が参加して約一時間の職場放棄を行い、市立の二病院で多数の職員が参加して二四時間の同盟罷業を行つたなどの…