従業員の勤務年数が満五年に達するごとに退職金を支給する旨及び右退職金の算定にあたつては既に支給した退職金の算定の基礎とされた勤務年数は算入しない旨を定めた給与規程に基づき、勤務年数が満五年に達した者に退職金名義の金員を支給した場合において、右金員の支給を受けた者が再雇用のためのなんらの手続を経ることなく従来のままの就労を継続しており、賃金その他の労働条件にも全く変化がなく、また、就業規則中には、勤務年数が満五年に達したときは従業員たる身分を失う旨を定めた規定がなく、従業員の定年を満五五歳とする旨の規定があるなど、判示のような事実関係があるときは、右金員に係る所得は、所得税法三〇条一項にいう退職所得にあたらない。
所得税法三〇条一項にいう退職所得にあたらないとされた事例
所得税法30条1項
判旨
所得税法30条1項の退職所得にあたるかは、勤務関係の終了という事実により給付されるか、継続的勤務への報償等の性質を有するか、一時金かという観点から判断すべきであり、雇用関係が継続したまま支払われる5年ごとの退職金名義の金員はこれに該当しない。
問題の所在(論点)
勤務関係が継続しているにもかかわらず、給与規程に基づき5年ごとに支給される「退職金」名義の金員が、所得税法30条1項の「退職所得」に該当するか。
規範
ある金員が所得税法30条1項の「退職により一時に受ける給与」にあたるためには、①退職すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されること、②従来の継続的な勤務に対する報償ないし労務の対価の一部の後払の性質を有すること、③一時金として支払われること、の要件を備える必要がある。また「これらの性質を有する給与」にあたるには、形式的に全要件を備えずとも、実質的にみてこれらの要件の要求するところに適合し、課税上同一に取り扱うことが相当であることを要する。
重要事実
事件番号: 昭和54(行ツ)35 / 裁判年月日: 昭和58年12月6日 / 結論: 破棄差戻
従業員が満五五歳又は勤続満一〇年に達したときに定年となる旨の就業規則の定め及び退職金規程に基づき、勤続満一〇年に達したことを理由として退職金名義の金員の支給を受けた従業員の大部分が、その役職、給与、有給休暇の日数の算定等の労働条件に変化がないまま引き続き勤務しているなど判示のような事実関係があるときは、右就業規則の客観…
上告人の従業員給与規程は、勤務年数が5年(以後5年加算時)に達した場合に「退職金」を支給すると規定していた。これは中小企業の営業停止による解雇時の不払いに備え、退職金の実質的な前払により支払を保障する趣旨であった。従業員は5年経過時に当該金員を受領しても、再入社手続を経ることなく従前の雇用契約のまま就労を継続し、賃金・有給休暇・定年等の労働条件も従前通り維持されていた。
あてはめ
本件金員は、5年間の勤務に対する報償等の性質(要件②)や一時金性(要件③)は備える。しかし、受給後も従業員は一旦退職したうえで再雇用されるものではなく、従前の雇用契約がそのまま継続している。5年という期間は将来の退職金の計算上の便宜にすぎず、勤務関係を確定的に終了させる意図もない。したがって、「勤務関係の終了という事実によって初めて給付される」という要件①を欠く。実質的にみても、課税上の優遇措置を適用すべき「退職所得」と同一視することは困難である。
結論
本件退職金名義の金員に係る所得は、所得税法30条1項所定の退職所得にはあたらない。
実務上の射程
「勤務関係の終了」という形式的・実質的メルクマールを重視する。在職中に支払われるいわゆる「中途引当」や「前払退職金」の所得区分を判断する際のリーディングケースとなる。退職所得控除等の優遇措置の趣旨(老後保障・長年勤労の報償)から、単なる名称にかかわらず厳格に判断する姿勢を示している。
事件番号: 平成26(行ヒ)167 / 裁判年月日: 平成27年10月8日 / 結論: 破棄差戻
権利能力のない社団の理事長及び専務理事の地位にあった者が当該社団から借入金債務の免除を受けることにより得た利益は,① 同人が当該社団から長年にわたり多額の金員を繰り返し借り入れていたところ,当該社団がこのような貸付けを行ったのは同人が上記の地位にある者としてその職務を行っていたことによるものとみるのが相当であること,②…
事件番号: 昭和56(行ツ)167 / 裁判年月日: 昭和57年12月21日 / 結論: 棄却
所得税法二五条二項二号の規定は、憲法二九条、八四条に違反しない。
事件番号: 昭和51(行ツ)37 / 裁判年月日: 昭和51年10月8日 / 結論: 棄却
国税徴収法三九条にいう「受けた利益の限度」の算定にあたつては、当該受益財産の取得により課される道府県民税及び市町村民税の額は、これを右受益財産の価額から控除すべきものではない。