賃貸人が、ショッピングセンターとするために一棟の建物を区分してこれを青物商果物商等の店舗として各賃貸するにあたり、ショッピングセンターの正常な運営維持のため賃貸契約に特約を付し、賃借人が、粗暴な言動を用いたり、濫りに他人と抗争したり、あるいは他人を煽動してショッピングセンターの秩序を棄したりすること等を禁止している場合において、賃借人が右禁止に違反して他の賃借人に迷惑をかける商売方法をとつて他の賃借人と争い、そのため賃貸人が、他の賃借人から苦情をいわれて困却し、そのことにつき賃借人に注意しても、賃借人がかえつて暴言を吐き賃貸人に暴行を加える等判示のような事情があるときは、賃貸借契約の基礎である信頼関係は破壊され、賃貸人は右契約を無催告で解除することができる。
建物賃貸借契約において特約により賃借人に課された付随的義務の不履行が賃貸人に対する信頼関係を破壊するとして無催告の解除が許容された事例
民法541条,借家法6条
判旨
ショッピングセンターの店舗賃貸借において、粗暴な言動等を禁止する無催告解除特約は公序に反せず有効であり、当該違反行為によって賃貸借の基礎となる信頼関係が破壊された場合には、無催告での解除が認められる。
問題の所在(論点)
賃貸借契約における付随的義務の違反(不穏な言動・暴力等)を理由とする無催告解除特約の有効性、および当該特約に基づく解除が認められるための要件。
規範
1. ショッピングセンター等の共同店舗賃貸借において、秩序維持や運営阻害防止のために賃借人の不穏な言動を禁止する特約は、合理的な理由があり、賃借人に不当に重い負担を課すものではないから有効である。 2. もっとも、当該特約違反が解除理由となるのは、特約違反によって賃貸借の基礎となる信頼関係が破壊されたときに限られる。この場合、既に信頼関係が破壊されている以上、催告を要することなく解除できる。
重要事実
賃貸人(被上告人)はショッピングセンターの店舗を賃借人(上告人)に貸し出した。契約には「粗暴な言動」や「運営阻害」等があれば無催告解除できる旨の特約が付されていた。賃借人は、他の店への嫌がらせ、品目制限の無視、定休日ルールの違反を繰り返した。さらに、これらの行為を注意した賃貸人の代表者に対し、従業員らと共謀して暴行を加え、全治約3週間の傷害を負わせるという事件を起こし、罰金刑に処せられた。
あてはめ
本件において、賃借人の行為は他の賃借人との争いを招き、ショッピングセンターの正常な運営を著しく阻害するものである。さらに賃貸人の代表者に対して暴言・暴行を加えるに至ったことは、共同店舗賃借人に要請される最小限度のルールや商業道徳を無視するものであるといえる。これらの事実に照らせば、単なる特約違反にとどまらず、賃貸人と賃借人との間の信頼関係は完全に破壊されたと評価できる。したがって、信頼関係の破壊が認められる以上、改めての催告は不要である。
結論
本件無催告解除特約は有効であり、信頼関係の破壊が認められる以上、賃貸人による無催告解除は正当である。
実務上の射程
賃貸借契約一般における「信頼関係破壊の法理」の適用場面を、賃料不払い等の主たる債務不履行だけでなく、不穏な言動や暴力といった付随的義務・信義則上の義務違反にまで広げる際のリーディングケースである。特に「共同店舗」という特殊な環境における秩序維持の必要性を重視する文脈で有用である。
事件番号: 昭和44(オ)781 / 裁判年月日: 昭和48年3月22日 / 結論: 棄却
一、建物賃貸借における敷金は、賃貸借終了後、建物明渡完了の時において、それまでに生じた延滞賃料や賃料相当損害金などを控除した残額につき発生する。 二、建物の賃借人が一〇年以上にわたり全く賃料を支払わない場合に、賃貸人が賃貸借契約上の催告不要の特約に基づき無催告で右契約を解除することは、あながち不合理ではなく、その解除は…