一、開業準備行為が商行為となるためには、それが客観的にみて開業準備行為と認められうるものであるごとを要し、単に金銭を借り入れるごとき行為は、特段の事情のないかぎり、これを商行為とすることはできない。 二、営業を開始する目的をもってする単なる金銭の借入れも、取引の相手方がその事情を知悉している場合には、これを附属的商行為と認めるのが相当である。
一、開業準備行為の商行為性 二、営業の開始を目的とする金銭の借入れに商行為性が認められる場合
商法4条1項,商法503条1項
判旨
開業準備行為は、客観的に開業準備と認められるものであることを要するが、金銭借入れのように外形から目的を判別できない行為であっても、相手方が開業準備であることを知悉している場合には商行為性が認められる。
問題の所在(論点)
営業を開始する前に行われる「開業準備行為」が、商法上の商行為(附属的商行為)として認められるための要件、特に金銭借入れのように外形から目的が判別しにくい行為の商行為性が問題となる。
規範
特定の営業を開始する目的でする準備行為は、商人が営業のためにする行為(商法503条1項)として附属的商行為となる。もっとも、取引の安全を図る観点から、当該行為が客観的に開業準備行為と認められるものであることを要する。金銭の借入れのような外形上目的が不明な行為については、行為者の主観的目的のみでは足りないが、相手方がその事情(開業準備であること)を知悉している場合には、開業準備行為として商行為性が認められる。
重要事実
被上告人は、映画館を開業する目的で、その準備資金として上告人から金員を借り入れた(本件消費貸借契約)。貸主である上告人は、貸与にあたって、被上告人が映画館開業の準備資金として本件金員を借り受けるものであることを知悉していた。その後、当該貸金債権の消滅時効期間が問題となり、商事時効(旧商法522条)が適用されるかが争点となった。
あてはめ
本件における被上告人の金銭借入れは、単なる外形からは映画館開業という目的を客観的に認識しがたい行為である。しかし、相手方である上告人は、被上告人が映画館開業の準備資金として借り入れることを知悉していた。このように相手方が事情を知っている場合には、客観的な開業準備行為としての定型性を欠く場合であっても、当該取引の商行為性を認めて差し支えない。
結論
本件消費貸借契約は開業準備行為として商行為にあたり、商事時効(5年)が適用される。
実務上の射程
商人の資格取得時期(開業準備行為時説)を前提としつつ、開業準備行為の範囲を「客観的認識可能性」で画する。ただし、相手方の悪意(知悉)があればその保護の必要性がないため、主観的目的を基準に商行為性を肯定できるとする、相対的な判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和46(オ)781 / 裁判年月日: 昭和48年10月5日 / 結論: 棄却
一、中小企業等協同組合法に基づいて設立された信用協同組合は、商法上の商人にあたらない。 二、中小企業等協同組合法に基づいて設立された信用協同組合の商人たる組合員に対する貸金債権には、商法五〇三条、三条一項により、同法五二二条が適用される。