根抵当権設定登記に登記原因として表示された契約の名称が手形取引契約又は手形割引契約に基づく根抵当権設定契約とされていても、右契約において取引に伴う手形外の金銭債権も根抵当権の被担保債権とすることが約定されている場合には、根抵当権者は、右債権が当該根抵当権の被担保債権の範囲に属することを第三者に対抗することができる。
根抵当権設定登記に登記原因として手形取引契約又は手形割戻契約に基づく根抵当権設定契約と表示された場合と第三者に対抗しうる被担保債権の範囲
民法369条,不動産登記法(昭和46年法律第99号による改正前のもの)117条
判旨
根抵当権の登記に「手形取引契約」等の記載がある場合、当該契約で担保すると合意された債権は、手形上の権利が欠缺した場合の特約による金銭債権であっても、原則としてすべて被担保債権の範囲に含まれる。根抵当権者が配当要求時に債権を届け出た際は、特段の事情がない限り、当該特約による債権を届け出たものと解される。
問題の所在(論点)
根抵当権の登記上の原因が「手形取引契約」等とされている場合、手形上の権利が欠缺した場合に備えた「特約による債権」は、第三者との関係で被担保債権の範囲に含まれるか。また、配当要求時の届出を当該特約債権の届出と解することができるか。
規範
根抵当権の登記原因として特定の継続的取引契約等の日付及び名称が記載されている場合、その記載から特定される契約において被担保債権とすべく合意された債権は、原則としてすべて被担保債権の範囲に属することを第三者に主張できる。登記上の名称が「手形取引契約」等であっても、被担保債権を手形上の債権のみに限定すべきではない。また、競売手続における債権届出は、特段の事情がない限り、根抵当権で担保される有効な債権を届け出た趣旨と解するのが相当である。
重要事実
上告人は、債務者との間で「手形取引契約」等を締結し、根抵当権の設定を受けた。同契約には、手形要件の欠缺や権利保全手続の不備により手形上の権利が消滅した場合でも、手形金額と同額の債務を負担し弁済する旨の特約があった。その後、不動産競売手続において上告人が配当要求をしたが、対象の手形には振出日の記載がない等の不備があり、手形上の遡求権を行使できない状態であった。被上告人は、登記上の名称から被担保債権は手形債権に限定されるべきであり、特約による債権には優先弁済権がないとして配当異議を申し立てた。
あてはめ
本件根抵当権の登記には、原因として特定の継続的取引契約が記載されている。当事者間の契約には、手形が無効となった場合等でも同額の債務を負担する特約が含まれており、これは当該取引から生じる有効な金銭債権である。登記の名称が「手形取引契約」であるからといって、形式的に手形法上の権利のみに限定して解釈する必要はなく、特約による債権も公示の範囲内といえる。また、上告人が不備のある手形を提示して配当要求を行ったことは、特段の事情がない限り、担保されるべき有効な債権(特約による債権)を届け出たものと評価するのが合理的である。
結論
特約による債権も根抵当権の被担保債権の範囲に属し、上告人はこれに基づき優先弁済を主張できる。したがって、配当異議を認めた原判決には法令解釈の誤りがある。
実務上の射程
根抵当権の被担保債権の範囲を画定する際、登記簿上の原因(取引の種類)を形式的・限定的に解釈せず、基礎となる契約の合意内容を尊重する姿勢を示した。答案上では、被担保債権の「特定性」や「公示の原則」が問題となる場面において、登記の名称が示す実質的な取引関係に基づき判断すべきとする論拠として活用できる。
事件番号: 昭和55(オ)351 / 裁判年月日: 昭和59年5月29日 / 結論: 棄却
一 保証人と債務者との間に求償権について法定利息と異なる約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約がある場合には、代位弁済をした右保証人は、物上保証人及び当該物件の後順位担保権者等の利害関係人に対する関係において、債権者の有していた債権及び担保権につき、右特約に基づく遅延損害金を含む求償権の総額を上限として、これを行使す…