請負契約が合意解除され、その際請負人が注文主に対し請負契約上前払すべきものと定められた金額の範囲内で前払金返還債務を負担することを約した場合において、右合意解除が請負人の債務不履行に基づくものであり、かつ、右約定の債務が実質的にみて解除権の行使による解除によって負担すべき請負人の前払金返還債務より重いものではないと認められるときは、請負人の保証人は、特段の事情のないかぎり、右約定の債務についてもその責に任ずるものと解するのが相当である。
請負契約の合意解除にあたり請負人が注文主に対し前払金返還債務を負担することを約した場合と請負人の保証人の責任
民法446条,民法447条,民法545条,民法632条
判旨
請負契約が合意解除された場合、特段の事情がない限り、保証人は当然には前払金返還債務を負わない。ただし、合意解除が債務不履行に基づくものであり、返還債務の内容が解除権行使の場合と同等以下であれば、保証人は責任を負う。
問題の所在(論点)
請負契約が合意解除された場合において、請負人が注文者に対して負う前払金返還債務について、保証人が当然に責任を負うか。合意解除の性質が保証債務の範囲に及ぼす影響が問題となる。
規範
請負契約の保証人は、合意解除によって請負人が負担する前払金返還債務について、当然には責任を負わない。もっとも、①当該合意解除が請負人の債務不履行に基づくものであり、かつ、②約定の債務が実質的にみて解除権の行使(法定解除)によって負担すべき前払金返還債務より重いものではないと認められるときは、特段の事情のない限り、保証人はその責を負う。
重要事実
上告人(注文者)は被上告人(請負人)と建物工事請負契約を締結し、前払金約937万円を支払った。被上告人らは請負人の債務を連帯保証した。その後、請負人が資金難で工事続行困難となったため、両者は契約を合意解除した。その際、既済部分を400万円と評価し、前払金との差額約537万円を返還する旨を合意した。上告人は保証人らに対し、右返還債務の支払を求めた。
あてはめ
本件合意解除は、請負人の資金難による工事続行不能という債務不履行に基づくものである(要件①充足)。また、契約上工事代金の3割(870万円)が前払金と定められていた。既済部分の評価(400万円)が適正であれば、合意された返還額(約537万円)は、法定解除権の行使により当然に負担すべき原状回復義務の範囲内といえ、保証人に過大な負担を課すものではない(要件②充足)。
結論
本件合意解除が請負人の債務不履行に基づき、かつ返還額が適正な範囲内であれば、保証人は前払金返還債務について連帯保証責任を負う。
実務上の射程
合意解除であっても、実質的に「債務不履行による法定解除」と同様の事態であれば、保証人の期待に反しないため責任が及ぶとする。実務上は、解除に至る経緯と、合意された返還額が法定解除時の原状回復の範囲内(=保証債務の附従性の範囲内)に収まっているかを具体的に論証する際に用いる。
事件番号: 昭和28(オ)1027 / 裁判年月日: 昭和31年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約解除後の損害賠償額の算定において、解除当時における目的物の時価相当額を標準として、商人である買主に通常生ずべき損害を算定することは正当である。 第1 事案の概要:木材販売業者である被上告人と、上告人との間で木材の売買契約が締結された。上告人(売主)の木材引渡義務について債務不履行が発生した…