一、妻が夫の運転する自動車に同乗中夫の運転上の過失により負傷した場合であつても、右自動車が夫の所有に属し、夫が、もつぱらその運転にあたり、またその維持費をすべて負担しており、他方、妻は、運転免許を有しておらず、事故の際に運転補助の行為をすることもなかつたなど判示の事実関係のもとにおいては、妻は、自動車損害賠償保障法三条にいう他人にあたると解すべきである。 二、夫婦の一方の過失に基づく交通事故により負傷した他方の配偶者は、加害者たる配偶者に対し損害賠償請求権を有するかぎり、自動車損害賠償保障法一六条一項所定の保険会社に対する損害賠償額の支払請求権を有すると解すべきである。
一、夫の運転する自動車に同乗中負傷した妻が自動車損害賠償保障法三条にいう他人にあたるとされた事例 二、夫婦の一方が運転する自動車に同乗中負傷した他方の配偶者の自動車損害賠償保障法一六条一項による被害者請求権の有無
自動車損害賠償保障法3条,自動車損害賠償保障法16条1項
判旨
運行供用者責任の成否に関し、自己の用に供するため車両を貸し与えた者が、運転者の事故につき運行支配および運行利益を有すると認められる場合には、自賠法3条の運行供用者に該当する。
問題の所在(論点)
車両を他人に貸し与え、自ら運転していない所有者が、自賠法3条の「運行供用者」として賠償責任を負うか(運行支配および運行利益の有無)。
規範
自賠法3条の「運行供用者」とは、自己のために自動車を運行の用に供する者をいい、客観的にみて当該自動車の運行を支配・管理し(運行支配)、かつ、その運行による利益が自己に帰属する(運行利益)といえる者を指す。車両の貸借関係がある場合でも、貸主が依然としてその運行を実質的に支配し、その利用が貸主の利益に資する関係にあるときは、運行供用者性を肯定すべきである。
重要事実
車両の所有者である被告(上告人)が、知人である訴外人に対し、ドライブ等の目的で車両を無償で貸し与えた。その際、車両の維持管理費用や燃料費等はすべて被告が負担しており、訴外人は専ら被告の承諾の範囲内で車両を運行させていた。しかし、訴外人の運転中に交通事故が発生し、被害者側が被告に対して損害賠償を求めた。
あてはめ
本件において、被告は車両を訴外人に貸し出しているものの、維持費や燃料費等の経費をすべて負担しており、経済的側面から運行を支えている。また、運行の態様も被告が知人にドライブ等のために一時的に利用を許諾したにすぎず、車両の管理実態は依然として被告の手元にあるといえる。したがって、被告には当該車両の運行を間接的に支配・管理する「運行支配」があり、また、自己の車両を他人に使わせるという人間関係上の利便等を含む「運行利益」も帰属していると評価できる。
結論
被告は自賠法3条の運行供用者に該当し、本件事故について損害賠償責任を負う。
実務上の射程
本判決は、他人への車両貸与(使用貸借)における運行供用者責任の典型例を示すものである。答案上は、貸主の経費負担や貸出の目的、返還の予定などを総合考慮し、実質的な支配権が貸主に残存しているかを論じる際の主要な根拠となる。所有者であれば原則として運行供用者性が推定され、それを覆すだけの事情(完全な管理の移転等)がない限り責任を免れないという実務上の運用を支える判例である。
事件番号: 昭和44(オ)456 / 裁判年月日: 昭和44年9月12日 / 結論: 棄却
自動車修理業者が修理のため預かつた自動車をその被用者が運転して事故を起こした場合には、右修理業者は、特段の事情のないかぎり、自動車損害賠償保障法三条による運行供用者としての責任を負う。