都有行政財産である土地について建物所有を目的とし期間の定めなくされた使用許可が当該行政財産本来の用途又は目的上の必要に基づき将来に向つて取り消されたときは、使用権者は、特別の事情のないかぎり、右取消による土地使用権喪失についての補償を求めることはできない。
都有行政財産である土地についての使用許可の取消と損失補償
憲法29条3項,国有財産法19条,国有財産法24条,地方自治法238条の4,地方自治法238条の5,地方自治法(昭和38年法律第99号による改正前のもの)213条1項,東京都都有財産規則(昭和19年東京都規則第4号)3条,東京都都有財産条例(昭和23年東京都条例第3号)3条,東京都都有財産条例(昭和29年東京都条例第17号)12条
判旨
行政財産の使用許可が本来の目的のために取り消された場合、使用権自体に内在する制約により、原則として損失補償は不要である。ただし、対価の未償却や特別の定めがある等の特段の事情がある場合に限り、例外的に損失補償が認められる。
問題の所在(論点)
行政財産の使用許可の取消しに伴い、使用権者が被った損失について、損失補償(憲法29条3項、国有財産法24条2項の類推適用)を認めることができるか。
規範
行政財産の使用許可に基づく使用権は、期間の定めがない場合、当該財産本来の用途・目的上の必要が生じたときは、その時点において原則として消滅すべき制約を内在するものとして付与されている。したがって、当該取消しに伴う損失は原則として受忍すべきであり、損失補償を必要とする損失には当たらない。もっとも、①使用許可の対価を支払っているが、使用収益により当該対価を償却するに足りない期間内に取消しがなされた場合や、②使用許可に際し別段の定めがある場合など、なお使用権を保有する実質的理由がある「特別の事情」が存する場合には、例外的に損失補償を要する(国有財産法24条2項等の類推適用)。
重要事実
事件番号: 昭和54(オ)211 / 裁判年月日: 昭和58年11月10日 / 結論: 棄却
都市公園法附則四項及び七項に基づく損失補償は、従前の使用許可による権利の喪失と同時履行の関係に立つものではなく、右補償がされなくとも右権利喪失の効果は生じると解すべきである。
都営中央卸売市場内の土地(行政財産)について、期間の定めなく、建物所有を目的とする使用許可を受けた被上告人が、喫茶店等の営業を開始した。その後、市場の入荷増に伴う混雑緩和等のため、東京都(上告人)は条例に基づき使用許可を取り消し、行政代執行により建物を移転させた。被上告人は、使用権の喪失が「特別の犠牲」に当たるとして、憲法29条3項等に基づく損失補償を求めて提訴した。
あてはめ
本件土地は都有行政財産であり、本来の用途である市場業務の必要性が生じたために取消しがなされたものである。被上告人は、使用権自体に内在する制約として、行政上の必要による消滅を受忍すべき立場にある。原審が指摘する「宅地化費用の支出」という事情のみでは、借地権と同様の権利金的性質を持つとはいえず、使用権を保有し続ける実質的理由(特別の事情)があるとは直ちに断定できない。したがって、原則通り補償不要の範囲に留まる可能性があるため、更なる審理を要する。
結論
行政財産本来の目的のために取消しがなされた場合、原則として損失補償は不要である。特別の事情の有無を審理させるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
行政財産の使用許可が「受益的行政処分」であり、常に撤回権が留保されていることを前提とする。答案上は、まず補償規定の類推適用の可否を論じ、次に「特別の事情」の有無をあてはめる二段構えで記述する。公物管理の合目的性と私人の信頼保護の調整を図る枠組みとして重要である。
事件番号: 昭和27(オ)604 / 裁判年月日: 昭和28年10月9日 / 結論: 棄却
商人の借地権の放棄に関する契約は、たとえ右借地権がその営業所の敷地に関する場合であつても、商法第五〇九条にいわゆる「其営業ノ部類ニ属スル契約」とはいえない。
事件番号: 昭和39(オ)24 / 裁判年月日: 昭和40年2月12日 / 結論: 棄却
土地賃貸人において、転借人に対し後日直接賃貸借契約をしてよい意向を示し、それまでの間は転借について暗黙の承諾をしたと見られるような態度をとり、転借人としては、賃貸人の指図に従い、同人の転貸人に対する賃貸借消滅による建物収去土地明渡請求訴訟に協力する態度をとり、賃貸人が勝訴すれば自ら賃借できると考え、同人から明渡を請求さ…
事件番号: 昭和26(オ)658 / 裁判年月日: 昭和29年2月5日 / 結論: 破棄差戻
賃借権が債権であるというだけの理由で、賃借権に基く妨害排除の請求を排斥するのは違法である。
事件番号: 昭和29(オ)708 / 裁判年月日: 昭和32年1月22日 / 結論: 棄却
一 土地賃借人がその地上に建物を建て同所で新たに営業を営むことを計画していたにかかわらず、賃貸人が土地を引き渡さないため右計画を実行することができなかつたときは、賃借人には、その営むことによりうべかりし利益の喪失による損害が生じたものと推定すべきであつて、賃借人が未だ現実に営業を開始せず、またたとえ営業を開始しても必ず…