労働者災害補償保険法二〇条一項の規定によつて国が取得する損害賠償債権は、会計法三一条一項の規定する時効の利益を放棄することができない旨の制限に服しない。
労働者災害補償保険法二〇条一項の規定によつて国が取得する損害賠償債権と会計法三一条一項
会計法31条,民法146条,労働者災害補償保険法20条
判旨
国が労働者災害補償保険法に基づき取得した損害賠償請求権は私法上の金銭債権であり、その消滅時効には会計法ではなく民法の規定が適用されるため、時効利益の放棄が可能である。
問題の所在(論点)
国が労災保険給付によって代位取得した不法行為に基づく損害賠償請求権は、会計法30条・31条の適用を受ける「公法上の金銭債権」にあたるか。また、同債権について時効利益の放棄が認められるか。
規範
国が有する金銭債権であっても、それが私法上の金銭債権である場合には、会計法31条1項にいう「別段の規定」として民法の規定が適用される。この場合、同項に基づく時効利益の放棄制限は適用されず、民法の原則通り時効利益の放棄が認められる。
重要事実
被上告人(国)は、訴外Dに対し労働者災害補償保険法に基づき保険給付を行った。これに伴い、国は同法20条1項の規定に基づき、Dが上告人に対して有していた不法行為に基づく損害賠償請求権を取得した。この請求権の消滅時効に関し、上告人が時効利益を放棄したことの有効性が争われた。
あてはめ
本件債権は、もともと被害者が加害者に対して有していた不法行為に基づく損害賠償請求権であり、国が代位取得したものである。これは性質上、私法上の金銭債権であって公法上の金銭債権ではない。したがって、消滅時効については会計法31条1項の例外である「別段の規定」として民法が適用される。その結果、会計法31条1項後段による時効利益の放棄制限には服さず、民法に従い放棄は有効となる。
結論
本件請求債権は私法上の債権であり、民法の規定が適用されるため、時効利益の放棄は有効である。
実務上の射程
国の債権であっても、原因が私法上の契約や不法行為に基づくものであれば、消滅時効の期間や利益の放棄について民法が優先されることを示す。公法上の原因(税金等)に基づく債権との区別を論じる際の基準となる。
事件番号: 昭和41(オ)611 / 裁判年月日: 昭和44年3月4日 / 結論: 棄却
甲の乙に対する手形金債権を担保する目的で、乙が丙に対する請負代金債権の代理受領を甲に委任し、丙が甲に対し右代理受領を承認しながら、請負代金を乙に支払つたため、甲が手形金債権の満足を受けられなくなつた場合において、丙が右承認の際担保の事実を知つていたなど原判示の事情(原判決理由参照)があるときは、丙は、甲に対し過失による…