一、運送品の損傷があつた場合に発せられる国際海上物品運送法一二条一項所定の通知書には、荷受人または船荷証券所持人が運送品の点検をした結果知りえたその損傷の種類および程度の概略が、損傷の概況として、記載されなければならない。 二、船荷証券上の「運送品を外観上良好な状態で船積した」旨の記載は、運送品が包装ないし荷造されていて運送品自体を外部から見ることができない場合においては、右包装ないし荷造りが外観上異常がなく、かつ、運送品を目的地に運送するに十分な状態であること、および運送品そのものが相当な注意をもつてしても外部からはなんらの異常も感知できない状態であることを運送人が認めたものではあるが、運送人において相当な注意をしても外部から感知できない運送品そのものの状態に異常がないことまでも認めたものではないと解すべきである。 三、「運送品を外観上良好な状態で船積した」旨の記載のある船荷証券の所持人において荷揚当時外部から運送品そのものにつき損傷等の異常を認めうる状態にあつたときは、特段の事情がないかぎり、運送品そのものの損傷等の異常は、運送人の運送品取扱中に生じたものと事実上推定される。
一、国際海上物品運送法12条一項所定の通知書と損傷の概況の記載 二、船荷証券上の「運送品を外観上良好な状態で船積した」旨の記載の意義 三、船荷証券上に「運送品を外観上良好な状態で船積した」旨の記載がある場合と運送品の損傷時期の推定
国際海上物品運送法7条1項3号,国際海上物品運送法12条1項,商法769条,民訴法185条
判旨
国際海上物品運送法に基づく損傷の通知には、荷受人等が点検により知り得た損傷の種類・程度の概略を記載すべきであり、これが欠ける場合は同法12条2項の推定が働く。また、運送品が損傷なく引き渡されたとの推定を覆すための「運送中の損傷」の立証責任は、債務不履行の一般原則に従い荷受人側が負う。
問題の所在(論点)
1. 国際海上物品運送法12条1項にいう「損傷の概況」の記載として何が必要か。2. 通知が不備である場合、同条2項の推定(損傷のない引渡し)を覆すために「運送中の損傷」を誰が立証すべきか。3. 船荷証券の「外観上良好」との記載が、内部の損傷についても運送人の責任を推定させる根拠となるか。
規範
1. 国際海上物品運送法12条1項の通知書には、運送人に証拠保全等の機会を与える趣旨から、荷受人等が点検の結果知り得た損傷の種類及び程度の概略(損傷の概況)を記載しなければならない。また、受取の際に外部から損傷が判別できる場合は、直ちに通知を発する必要がある。2. 船荷証券に「外観上良好」と記載されていても、運送人が認めたのは相当な注意をしても外部から感知できない異常がないことまでであり、内部の損傷についてまで認めたものではない。3. 国際海上物品運送契約における運送人の債務不履行責任において、運送品の損傷が船積後荷揚前に生じたことの立証責任は、原則として債権者(荷受人等)が負う。
重要事実
荷受人Dは、タイル(本件運送品)を受領した翌日、運送人に対し損傷の通知を行ったが、通知書には具体的な損傷の種類や程度の記載はなく、損害検査への立ち会いを求める旨の記載があるのみであった。また、荷揚当時に荷造箱の外部から損傷を認めうる状態であったとされるが、証拠(損害検査報告書)上は「外観上良好」と記載されていた。原審は、これらの事実から運送人の取扱中に損傷が生じたと認定し、賠償請求を認容した。
あてはめ
1. 本件通知書には損傷の具体的記載がなく、タイルの損傷であるか否かすら不明であるため、「損傷の概況」の記載を欠き、同法12条1項の適法な通知とはいえない。また、外部から損傷が判別可能であったならば受取の際直ちに通知すべきであったのに、翌日に通知した点でも不適法である。2. したがって、同法12条2項により運送品は損傷なく引き渡されたものと推定される。3. 損害検査報告書でも外観は良好とされており、荷揚時に外部から損傷を感知できたとは認められない。この場合、債権者側で「船積時に健全であったこと」を立証すべきであるが、その立証はなされていない。4. 債務不履行の一般原則に基づき、損傷が運送人の取扱中に生じたことの立証責任は債権者にあるところ、本件では立証が尽くされていない。
結論
荷受人による通知は不適法であり、損傷のない引渡しが推定される。また、運送中の損傷についての立証責任を尽くしていない以上、運送人の損害賠償責任を認めることはできない。
実務上の射程
商法(海商)における国際海上物品運送法の通知義務と推定規定の解釈、および運送人の責任における立証責任の所在を示す重要判例である。答案上は、通知の不備から生じる「損傷なき引渡しの推定」を覆すために、荷受人側が船積時の健全性と荷揚時の損傷を具体的に立証する必要があることを論じる際に用いる。
事件番号: 昭和43(オ)1044 / 裁判年月日: 昭和48年6月7日 / 結論: 棄却
不法行為による損害賠償についても、民法四一六条の規定が類推適用され、特別の事情によつて生じた損害については、加害者において右事情を予見しまたは予見することを得べかりしときにかぎり、これを賠償する責を負うものと解すべきである。